遺言でのご支援(2)~自分の体験談からの教訓

 私自身が当事者になった遺言の話を二つ。一つ目は叔母の相続で相続人である父から頼まれて実務的な対応をしたのですが、叔母は公正証書遺言を書いていて、遺言執行人も二人の弁護士の方を選任していました。相続発生時点でそのお二人の弁護士は弁護士会での登録がなく、亡くなられたと推定できました。そのため「さあどうするか」という話になりました。法律では遺言執行人が亡くなっていれば、家庭裁判所に新たに遺言執行人の選任を依頼することができるとなっています。いまとなれば専門家に頼めば出来たのだなと思いますが、遺言執行人が亡くなっていることを疎明する方法は、インターネットがなかった当時は見当もつきませんでした。遺言執行人を選ぶのも慎重にしなければならないとその時思いました。自分の商売を離れて考えると、遺言執行人を弁護士や司法書士、行政書士などの士業の方に頼むのは、余計な手間暇がかかる可能性があるということです。

 最終的には、叔母の遺言の内容は法定相続分どおりではなかったものの、法定相続人のみで配分する内容でしたので、改めて法定相続人間で遺言書の内容通りの遺産分割協議書を作って、父が相続人を代表して銀行手続き等の執行手続きをしました。今行政書士になってみると、ベストチョイスだったと思っています。亡くなった叔母が、無私無欲な父を頼りにしていて、かつ叔母の兄弟としては、父の兄にあたる叔父が一人存命でしたが、あとは甥姪の代襲相続人ということもあり、父が遺産分割協議の先頭に立って相続人の意見を取りまとめたのも円満に終わった原因だと思います。

 もう一つは父からの相続になります。前にも書きましたが、父も遺言書があったのですが、自筆証書遺言だったので、裁判所の検認手続きが必要でした。遺言に記載された相続分は法定相続分どおりでしたが、あとは少し子供に向けた文章の記載がありまた。短い簡潔な文書でしたが、それでもその意を酌んだ対応を兄弟二人でしているかなと思っています。

 もちろん遺言がなくとも、相続がすんなり出来ることはほとんどだと思います。ただその結果が判るのは、被相続人が亡くなられた後になります。遺産分割で近い親族である相続人同士が仲違いをするのはご自分の人生が全うした結果としてはどうかなということです。逆に遺言があれば、遺言に不備があって無効になったり、遺言を相続人が守る保証もないので、絶対にもめないということでもありません。単なる自己満足かもしれませんが、やるべきことをやった、少なくとも無効とならない遺言を書いて少しでも死後に禍根を残さないということが大事なのではないでしょうか。そんなご支援をしたいと思っています。

 

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