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公募委員の任期を終えて

 2021年6月から委託を受けた県のかながわボランタリー活動推進基金審査会の公募委員の仕事が3月の開催の審査会で実質終了いたしました。会長をはじめ審査委員の方々、県の事務局のスタッフの方々には大変お世話になりました。この場でお礼申し上げたいと存じます。私自身もあるNPO法人の仕事のお手伝いをしているので、審査の業務を通じて2年間で様々なボランタリー活動をやられている団体の活動内容を知りえたことは大変貴重な体験だったと思いますし、ぜひ今お手伝いをしているNPO法人の活動に活かせればと考えています。

 審査委員の仕事は、ボランタリー活動推進基金が募集する協働事業負担金、ボランタリー活動補助金、ボランタリー活動奨励賞、ボランタリー団体成長支援事業へ応募された団体の書類審査及びプレゼン審査を通じて、県知事に候補先を答申するという仕事です。ボランタリーの世界というのは、会社という狭い世界で生きてきた人間には、ほとんど縁がなかった世界で、行政書士の仕事を始めてからの関わりで、大変戸惑うもありました。半面、国際的なSDGSの大きな潮流の中で、経団連の1%クラブの取り組みなどみると、自分自身が長く身を置いていた会社組織においても、変化が着実に出ており、審査の仕事を通じて、世の中の移り変わりを感じることができました。

 話を委員の仕事にもどすと、審査をしていて感じたことは、基金の案件採択はその目的から言って、案件審査(プロジェクトファイナンス)で行うべきなのか、団体審査(コーポレートファインナンス)でおこなうべきなのかが大変難しいということでした。自分自身は過去の経験ではプロジェクトファイナンスもありましたが、圧倒的にコーポレートファインナンスに係る仕事をしてきました。プロジェクトファイナンスは案件の中で生み出されるキャッシュフォローで融資金が返済されるかが採択できるか否かの判断基準になっていましたが、基金におけるプロジェクトファイナンスは、基金の性格上返済することが前提となっていないので、判断基準を何とするかという点が難しいのです。一応審査基準も公表されており、協業効果、ニーズ、担い手、手法、実現性、費用対効果、自立性、インパクト、先駆性、波及性、実績といった言葉が並んでいます。担い手や自立性、実績といった言葉にはコーポレート審査的な要素が含まれていて、行政からの事業委託などを受けている団体が安定感があってよく見えてしまいます。そういった団体は補助金獲得のノウハウにも長けていて、それに単純に乗ってしまっていいのかとも考えてしまう。最後はコーポレートとプロジェクトの両方を使い分けることになるのだが、なんとなく判断基準がぶれた感じになり、しっくりこない時もあった。もちろん一人で判断するわけではなく審査会としての判断になるので、その点は気が楽なのですが、委員間でも考え方に差があるので、最後は何かしらの妥協の産物として答申内容が決まることになります。組織としての安定性を評価して採択されることがある一方、団体としての実績は少なくても今日的な課題としてやるべしとなる時もある。本当に難しい。

 結局、基金の目的は何なのかに立ち返らざるを得ない。基金の募集のご案内の冒頭には「非営利で公益を目的とする活動(ボランタリー活動)の開始や拡充に対して、期限を区切って支援する」と書かれてる。その意味は、社会が抱える課題は国際環境、社会環境や経済環境などが変わる中で、変化しており、行政の対応は法整備や予算上の制約などで遅れがちになるので、課題認識を持った民間に機動的に期間限定で支援をすることで、課題の解決への糸口にするというように私自身は理解をしました。社会の変化に対応する新しい課題や見過ごされてきた課題を取り上げるというのが、キーワードかなと感じた。

 県の基金であることの、基礎自治体と広域自治体である県との役割分担の考え方、また政令指定都市を3つ抱える県の特異性も感じた。例えば、町内会の活性化といった課題があったとすると、これを県の役割とするなら、その事業を県域に広めるためのモデル性といったものが求められます。単なる町内会への事業支援は基礎自治体の仕事になります。街をきれいにしましょうといったクリーン活動も、県全体としてのかじ取りは県の仕事ですが、地域それぞれでの活動は基礎自治体の仕事なのだと思います。また、先日テレビで拝見したのですが、連携鶴見川流域ネットワーキングさんがやられていることなどは、行政単位の枠組みからも外れた素晴らしい活動で、県として云々すべきでないような活動もあります。県として、どんな事業に資金支援すべきなのかというのも、ほんとに頭を悩ませる部分でした。

 協業事業負担金とボランタリー活動補助金は事業に係る人件費も含めて対象となるので、申請する側からも採択されれば事業化されるまでの一定期間の活動費は確保できるので有難みがあります。ただ、ボランタリー活動の世界は受益者負担とはしえない事業もたくさんあるので、そのような事業に関しては出口戦略のハードルが高い。本来は行政の枠組みで予算化されて、業務委託という流れができればよいのだが、行政も財政難の中で、業務委託での事業化はそう簡単にはできない。たとへば、一昨年国会で成立した医療的ケア児支援法では、行政に学校等での医療的ケア児の受入に係る体制整備の義務が盛り込まれている。2023年度から徐々に行政での事業化が進むが、横浜市の保育園の例で言うと医療的ケアのサポート園をとりあえず5つ作りますというレベルでの事業化しか対応できない。(サポート園以外にも人件費加算の制度はできるが)喫緊に社会的課題を解決したいとの志のある事業者は自らの別な事業で資金調達するか、民間の補助金も含めた制度の渡り歩きを行わなければ活動資金は賄えないのである。出口の道が開けているかどうかも審査のポイントになっている。

 こんな悩ましい仕事ではありましたが、冒頭にも書きましたが、大変良い経験となりました。

 今回の記事を書くにあたって、基金が発足した約20年前の平成13年に基金が支援した14の団体をざっくりフォローしてみました。残念ながら解散した団体が1団体、あとネットでの検索からは足元の活動の継続が確認できない団体が1団体ありました。残りはすべての団体が活発にとは言えませんが、相応に活動を継続されており、特に協業事業負担金に関してはすべての団体が、活発に活動されていることには頭が下がる思いでした。

 最後に、私が審査に関わったこの2年間で採択された団体が、さらなる20年後に今の活動が継続されていることを祈念したいと思います。



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