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糠平のバブル予想図
昨日は写真集『タウシュベツ川橋梁』の出版から1年の投稿をした。
「もうすぐ崩落」という見立ては撮り始めた2005年頃と変わらないものの、橋を取り巻く様子も変わり、当時は訪れる人もまばらだった場所に今は連日人の姿が絶えない。
無名だったものが有名に。その境がどんなところにあるのか見通すのは難しい。
雪が少ない冬となった今シーズン、タウシュベツ川橋梁の架かる糠平湖ではアイスバブルが耳目を集めた。地元紙の十勝毎日新聞はもとより、朝日新聞や毎日新聞など全国紙で紹介されたこともあってか、雪が積もってからもスコップやブラシを手にした人たちが湖上でアイスバブルを掘り起こしている。
アイスバブル・バブルと、地元では呼んでいる。
こんなバブルの、きっかけはなかなか分からないけれど、その価値が過少評価されていたものは、いずれは多くの人の目に触れることになるだろうと思う。
タウシュベツ川橋梁しかり、アイスバブルしかり。
北海道の大雪山国立の山中、東大雪と呼ばれるエリアには今もかつての鉄道跡が残っている。線路跡だけでなく、1930年代に建設されたコンクリートアーチ橋も役目を終えたまま放置され、森の中に埋もれるようにある。
北海道遺産にも選定されている旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群。
ある程度の予備知識がなければ、それが廃線跡だとは気づかない人もいるだろう。
一昨年にはタウシュベツ川橋梁をメインにNHK-BSプレミアムで番組が製作され、何度か再放送もされた。
<上の写真は音更川沿いに架かる第二音更川陸橋>
そんな橋梁群のうちの一つに第三音更川橋梁がある。
作られたのはタウシュベツ川橋梁と同年代。毎年水没と出現とを繰り返すタウシュベツ川橋梁とは異なり、水に沈むことのないこの橋はまだしっかりと強度を保ち、30年ほど前まで現役の鉄道橋として使われていた。
タウシュベツ川橋梁は1つのアーチの直径が10m。それよりも大きな径間32メートルを持つ。当時の先端的な建設技術をもって作られた橋は産業遺構としても評価されており、今年、保全工事が予定されている。
その際、保線作業時などの待避所として設けられた鉄製の足場は撤去されるとのこと。また、防水工事なども施されるらしい。
1987年の士幌線廃線当時の趣を残した第三音更川橋梁を、現在の形で見られるのもあとわずか。
たぶん、アイスバブルの次に”来る”のはこれらコンクリートアーチ橋梁群ではないかと思っている。もう何年も前からだけれど。
多少の知識が、目の前の景色の見え方を大きく変えることがある。とくに旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋梁群ではそれが顕著だと思う。タウシュベツ川橋梁が竣工から80年目となるのに合わせてZINE『80年目のアーチ橋』を製作する過程で、僕もまたあらためてそれを実感した。
2016年に1,000冊限定で自費出版した本書も手元に残り少なくなった。製作後にやってきた台風の影響で、掲載した写真とはすでに風景が変わった場所もある。
廃れゆくからこそ感じられる趣は、バブルの前にこそ味わいたい。
写真集『タウシュベツ川橋梁』出版1周年に合わせて、今月末まで送料無料になっている。
いただいたサポートは、引き続きタウシュベツ川橋梁を記録していくために活用させていただきます。