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”熟知”の前と先にあるもの



今週の気になる記事

「コミュニティが潤滑油」
NAO2&4(福岡県福津市)「ライズオイル」が好調だ。
古い車やバイク向けのエンジンオイルだが、ネット販売を中心に前年比10%ペースで売り上げを伸ばし続けている。
2003年に外国製のオイルを販売するネットショップを開業した。
車やバイクを趣味として乗る人の相談に乗り、自分自身もオイルの知識を深めていった。
競合するネットショップが増えたこともあり、オリジナルブランドのオイルを開発することを決意。
専門書を読みあさって製造してくれる会社と交渉し、10年の歳月を掛けて理想のオイルが完成した。
購入者の多くは、ショップを開業した当初から、オイルの相談に乗っていた常連客だった。
「この人のオイルだったら間違いない」

日経MJ 2024年5月6日(月)12面「竹内謙礼の顧客をキャッチ」から引用

差別化の本質にあるものとは

”差別化””優位性”、ビジネスをしていると必ず聞くし言われる言葉。
そりゃあ誰でもそうできればいいと思っていると思う。
そしてそれがなかなか見いだせないから苦しい。
思いついたと思っても、既に別の人が考えている、やり始めている。
また考え直し。
どうしたらアレとは違いが出せるのか、どうやったらコレより良いものができるのか。
そんな魔のループ「差別化できるんか問題」に対して、記事を読んで感じたのが
「差別化とは、それに対する自身の”深さ”への問い」
のかなと。

熟知の大切さ

最近読んだ松浦弥太郎氏の著書、「いちからはじめる」(小学館文庫)。
なりたい自分になる方法。それは「いちからはじめる」こと。
がテーマの本であるが、その中に「熟知」という章がある。

仕事にしても暮らしにしても、すべての起点は熟知だと思っています。
プロジェクトをはじめるにしても、料理をするにしても、最初にそのことについて人一倍詳しくならないと、アイデアも出てこないのです。
そのことについて熟知してはじめて、スタートラインに立てる。
「いちからはじめる」には、熟知が不可欠だということです。

「いちからはじめる」松浦弥太郎(小学館文庫)

著書曰く、
①熟知をすると(徹底的に知る、調べる)
②必要な素材(協力者など)がわかり。必要な素材が集まれば
③困っている人を助けることができ、
④仕事になる

松浦氏は言葉やカルチャーの専門家として有名で、
元々世界中のオールドマガジンを専門に扱い販売されていて
「自分に探し出せない本はない」と思うまで熟知していたそう。

このプロセスを考えると、事業を考える時によくありがちな
「差別化のために差別化を探すのはどうなのか?」ということ。

ライズオイルさんにしても、松浦氏にしても、
もちろん仕事上では他との差を意識はしていると思うけれど
それは「違いを出してやろう」というスタートではなく、
「これが好きだから、もっともっと詳しくなりたい!」という
自分の内から出てくる想いがあるから、結果的にそれが他との差を生み出す
根源になっているのではないか。

ヴィジョンと情熱が熟知を育てる

そして、やはり松浦氏はこの著書でそれを問いかけていた。

いちからはじめるために大事なのは
「起点と未来を踏まえて、ヴィジョンにこだわる」
「成功の前提は情熱」

やっぱりそうですよねーーーー(-_-)という感じ。

私は仕事柄、経営者や創業者の方にお会いするけれど、
ビジネスのアイデアや状況がどうであれ、
それを熱く語る人というか、”気持ち抑えられずどうしても熱く語っちゃう人”は妙な説得力があったり、そもそもその魅力に惹かれて応援したくなるんですよねー。

結局、その人の内側からふつふつと出ているものが
様々なものやことや人を動かして、「この人じゃなきゃだめだ!」「このサービスが良い!」の状態を作り出していく。

差別化の迷子になったら

だから、差別化に行き詰まっていたら、外側ではなく、自分の内側を
見つめてみることが大事な
のかも。
そして、残念ながら自分の内側に何かを見つけることができなかったら、
それは”熟知が足らない”
ということ。

熟知が足らない、とは
「実はこの事業そんなに情熱を注げるものでなった」
または
「情熱は注げるけど、熟知に至るまでの努力をしていなかった」

だから、情熱を注げなければ、また新たな情熱のタネを探す旅にでなければならないし、
熟知に至ってないだけなら、忙しい中で時間を作ってでも
「あなたの熟知の蓄積がほしい」と言われるまでに熟知を重ねなくてはいけない。
言うは易く行うは難し。
でもだからこそ粘れる情熱が必要なのだと思う。

次に差別化迷子の人に出会ったら、聞いてみようと思う。
「あなた、どれくらい熟知していますか?」と。

今回ご紹介した本

仕事や暮らしにもやっと感がある方、是非読んでみてください。
新しい発見!というよりも、あるべき姿勢を改めて自分に問い直すきっかけになると思います。


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