なんちゃって金継ぎ
4年前の11月、山中温泉。九谷焼の湯呑を妻が気に入り、お土産に買った。ところが帰宅して湯呑をしまおうとしたときに私の手が滑り、端が欠けてしまった。。。妻の嘆き。。。
なんとか修復できないかと調べて、金継ぎという伝統的な手法があることを知った。「金継ぎで修復できるよ」と言ったはいいけど、やり方を調べれば調べるほどハードルが高い。それに道具や材料を揃えるだけで、湯呑の何倍もの費用がかかる。
合成漆という、手軽な方法もあるようだが、これは「食器には使わないでください」という問題点が。。。
ということで、そのまま4年。
現代的”金継ぎ”食器修理
すっかり忘れていた頃、食器整理をしていた妻が湯呑を取り出して「これ4年間も修復を待っているのだけど」と突然の督促。困った。
うーん。本物の金継ぎは無理、やはり合成漆で何とかするしかないかと、材料を探していたところ、こんなデフラグライフさんの記事が目に止まった。
安く、簡単で、美しく、そして口に触れて安全だと言う。これだ!
材料は、接着剤とアクリル絵の具だけ。目からウロコである。
欠けを埋める
使う接着剤はタイトボンドⅢ。アメリカ製、熱、水に耐え、FDAの食品安全性承認がある。このボンドは普段、木工用に使っているもの。
割れた食器はこのボンドでくっつけるのだが、欠けた部分を埋めるのには、セラミックパウダーを混ぜて使う。セラミックパウダーの手持ちはないので、木工用の砥の粉を代用することにした。まあ本物の金継ぎでも砥の粉を使うようだし、成分もセラミック(二酸化ケイ素とアルミナ)なので、多分大丈夫だろう。。。
今回は欠けの補修なので、砥の粉とタイトボンドを練り合わせてパテを作り、欠けを埋める。そして24時間放置して完全に硬化したら、サンドペーパーで削り、形を整える。
金色を付ける
色付けには、フランス・ペベオ社の「陶器用水性アクリル絵具 ポーセレン150 アウトライナー NO.07ゴールド」を使った。
この絵の具はオーブンでの焼付(150℃35分)が可能で、耐熱性、耐水性があり、人体に無害で安全らしい。電子レンジも食洗機も問題なく使える。
九谷焼の修復
練習用の食器で、なんとかなりそうな目処がついたので、本番。まずは欠けを埋める。
欠けを埋めているときに、欠けだけでなくヒビが入っていることがわかった。そこで欠けの部分に加えて、ヒビの上にも絵の具をのせて行く。
この作業は妻にやってもらった。
絵の具つけが終わったら、十分に乾燥させる。水分があるとオーブンでの焼付で、絵の具が膨張するらしい。
本来はジップロックに乾燥剤と一緒に入れて24時間乾燥させるのが良いらしいのだが、あいにく乾燥剤の手持ちがないので、5日ほど室内放置で乾燥させた。天気が良く湿度の低い日が続いたので、これで良しとする。
オーブンで焼付
十分に乾燥させたら、オーブンで焼付を行う。
「予熱なし、150℃、35分」
「終了後2時間は扉開け厳禁」
これは急激な温度変化を避けるため。陶器や磁器は本来熱に強いものだが、急激な温度変化で割れるリスクがあるようだ。
焼付完了
焼付を終わって取り出した九谷焼。少し膨らんだような気がする。手で押し込むと縮む。乾燥が不十分だったのか、それともボンドの硬化が甘かったのかもしれない。
でもまあ、一件落着。
練習台につかった食器の修復後の写真も掲載
今回、完全に満足という結果ではなかったが、簡単に「なんちゃって金継ぎ」を楽しむことができた。
今後、お皿が割れても、「金継ぎのチャンス」と喜ぶことができそうだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?