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複業は地域を救うことができるのか?奥会津かねやま福業協同組合の視察に行ってきました!

こんにちは!一般社団法人オフィスkiyoharuです。
 
突然ですが、私たちが山梨の地方都市・北杜市で日々暮らし、
仕事をしている中でひしひしと感じている地域の課題のひとつに
「労働力不足」があります。
 
北杜市は幸いなことに移住者が増えており、他の地域に比べて少子高齢化のスピードは遅いはず。
それなのに人手が足りない原因は、農業や観光業が盛んで、冬季の寒さが厳しいことから、夏季に仕事が集中すること。
一方で、冬季には林業や除雪作業等の季節性の仕事も発生し、その双方で人手が足りないという声が聞かれます。  
そうした問題の解決策として、近年「複業(マルチワーク)」が注目を集めています。

オフィスkiyoharuでも、複業人材を地域の企業に派遣するための仕組みを考え始めました。
そして、情報収集をする中で、総務省の「特定地域づくり事業」についての情報を目にしました。
 
北杜市は人口急減地域にはあたらないため、総務省の枠組みを利用することはできませんが、地域の企業で事業協同組合を組織し、複業に従事する人材を派遣する仕組みは今までにないものです。
何か参考にできることがあるのではと、実際に制度を導入している地域に視察に行ってみることにしました。
今回のnoteでは、その視察報告をお届けしたいと思います!

特定地域づくり事業とは?

まず、特定地域づくり事業について。
総務省HPには、こんな説明が載っています。

地域人口の急減に直面している地域において、農林水産業、商工業等の地域産業の担い手を確保するための特定地域づくり事業※を行う事業協同組合に対して財政的、制度的な支援を行っています。
※特定地域づくり事業とは、マルチワーカー(季節毎の労働需要等に応じて複数の事業者の事業に従事)に係る労働者派遣事業等を言います。
 
本制度を活用することで、安定的な雇用環境と一定の給与水準を確保した職場を作り出し、地域内外の若者等を呼び込むことができるようになるとともに、地域事業者の事業の維持・拡大を推進することができます。

総務省HP 特定地域づくり事業協同組合制度


特定地域づくり事業の先進地域はいくつかありますが、
その中で私たちが目に留めたのは、福島県の奥会津かねやま福業協同組合(通称「金福」)。

特に移住者の就業に力を入れている地域が多い中で、地域住民と移住者の両方をマルチワーカーとして採用している点、冬季の除雪作業員等もマルチワーカーの就業先となっている点から、北杜市との共通点も感じました。

金山町はどんなところ?

金福があるのは、福島県大沼郡金山町。
新潟県との県境に位置する、人口約1,900人の小さな町です。
人口減少が進み、高齢化率は約59%と東北地方でも有数の高さに上ります。
 
金福の方のお話によると、かつては建設業が栄えていましたが、現在は観光が主な産業となっているそうです。
 
山梨方面からアクセスする場合は一度東京に出て、新幹線で郡山へ。
郡山からは車で1時間半ほどの場所にあります。

いざ、奥会津へ!

視察に向かった1月末は寒波が襲来し、雪の予報が出ていました。
郡山で新幹線を降り、レンタカーを借りて奥会津方面へ向かいます。
郡山ではちらちら舞う程度だった雪が、奥会津に近づくにつれてどんどん深くなっていきました。

視察を翌日に控えたこの日は、金山町内にある玉梨温泉恵比寿屋旅館さんに宿泊。

こちらの旅館でも金福から派遣された従業員が働いているそうです。
 
ちょうど、夕食をいただいた隣の部屋でJR只見線全線運転再開記念ムービーの上映会が行われており、私たちも鑑賞させていただきました。
(Youtubeでも全編公開されています!↓)
あいせき列車 只見線
 
今回は訪れることができませんでしたが、只見線が地域の方や来訪者の交通手段としてだけではなく、奥会津の風景の一部としてたくさんの人に愛されていることがわかる素敵なドラマでした。
 
その後は、金福理事のお二人と、旅館の方と親睦会。
福島の美味しいお酒をいただきながら、もう視察が始まっているかのような濃密なお話を聞かせていただきました。

金福でお話を伺いました!

翌日はいよいよ金福の事務所へ向かいます。
金福の事務所は、金山町自然教育村会館(旧玉梨小学校の廃校舎)を利用しています。

この日は、代表理事、専務理事、事務局長、事務局員さんの4名に対応していただきました。
金福の事業の概要を説明していただいた後、私たちからの質問に答えていただきました。

総務省の制度としての事業協同組合では、地域で働き手を必要としている企業はまず出資払込をして「組合」に加入し、組合年会費(賦課金)の負担、総会への参加等により組合の一員としての役割を担う必要があります。
一般的な派遣の仕組みでもそうですが、ただのパートタイム従業員を雇うよりも費用負担が多くなる反面、必要なタイミングで労働力を得ることができたり、社会保険等の事務手続きの軽減、従業員とのマッチングを派遣会社(事業協同組合)が担ってくれたりといったメリットがあります。

派遣職員側は、様々な仕事を経験しながら移住や起業へのステップとなること、また社会保険や退職金共済への加入など、福利厚生面でのメリットが大きいことも特徴として挙げられます。
 
この仕組みを地域で根付かせていくためには、地域の企業からの理解を得ることが不可欠です。
設立にあたり、組合員となる地元の企業には丁寧な説明を繰り返し行い、
納得した上で加入していただいているそうです。
 
現在組合員として加入しているのは20社ほど。
そのうち現在派遣先として派遣職員の働き先となっているのは全体の4分の3ほどですが、人手が急に足りなくなった時の保険として組合員になっている企業もあるそうです。
 
また、金福では、1人の派遣職員が週に数日ずつ、または1日の中で数時間ずつ複数の派遣先に行くこともあるとのこと。
毎月ではありませんが「必要な時間だけ来てほしい」「人手が足りないので数時間でも来てほしい」といった派遣先の要望に応えるため、事務局が細かい調整を行った上でシフトを組んでいます。
 
お話を伺った中で一番感銘を受けたのは、「金福の事業は何よりも地域のために行っている」という言葉。
人口減少により働き手が減り、企業の廃業等につながり、ますます地域の活力がなくなっていく悪循環を解決するためにかね福がある。
そのため、組合としての利益よりも、派遣職員の待遇を良くすることや組合員である派遣先の利益となることを念頭に置いて活動されているそうです。
 
金福の設立からまだ2年ほどですが、廃業を考えていたお菓子屋さんが派遣職員に設備や技術を引き継がせることを考えるなど、事業・技術の継承につながる例も出てきています。
私たちの周りでも、長い間地域に愛されてきたお店が後継者の不在で廃業に…というような話を少なからず耳にするようになってきました。
働き手の確保は事業の継続に直結すること。当たり前のことですが、改めて実感することができました。

派遣先企業でもお話を伺いました!

午後からは、金福の組合員である地元の建設会社を訪問しました。
こちらでは金福の設立当初から派遣職員を受け入れています。
 
冬季の除雪作業について、社長さんにお話を伺いました。
除雪作業は天候に影響される仕事のため、常時一定の人手が必要になるわけではありません。
最大限必要な人数を正社員として雇用するとコストがかかりすぎてしまうため、こうした季節性の仕事に、派遣職員に従事してもらっています。
 
建設会社での仕事は資格が必要になることもあるため、派遣先が資格取得費用を負担することもあるそうです。
金山町では町民と定住希望者が利用できる資格取得支援制度があるため、そちらを利用することも。

派遣職員の派遣料金に加え組合費を負担する仕組みは、普通のアルバイト雇用よりは割高になります。
不満等はないですか?とお尋ねすると、人が必要な時にだけ派遣してもらうことができ、また雇用に係る業務も軽減されるので組合費は妥当だと思う、とのお答えが返ってきました。
将来的に派遣職員を正社員に登用することなども視野に入れているそうです。
 
また、こちらの会社で働く派遣職員の方にもお話を伺うことができました。
60代男性のこの方は、地域外から通勤しています。
金福は定年を設けていないこと、また様々な仕事に従事できることに魅力を感じ応募されたそうです。
 
現在金福では9人の派遣職員が働いており、複数の人が同じ派遣先に行くこともあるため、派遣職員さん同士でLINEグループを作り、仕事の引継ぎや情報交換を行っているそうです。
こちらの方は金福の事務局としての仕事も兼務しており、他の派遣職員から同じ立場として悩みを聞いたり、それが運営や従業員の待遇改善につながったりと、兼務することによる効果も生まれているようでした。

まとめ

今回の視察では、改めて「複業」の導入が地域に活力を与えること、
また人材派遣の仕組みを動かしていくためには、派遣先企業・派遣従業員との細やかな調整が必要であること、何よりも「地域のために」という想いが地域を動かしていくことを学びました。
 
今回の学びを、北杜市での仕事づくり、人づくり、
そして地域づくりにつなげていけるよう、私たちも頑張ります!

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