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真正な登記名義の回復の登記

こんばんは。

先日、稀に出会う登記がありましたのでまとめました(^o^)

1.真正な登記名義の回復とは


 実体上真実の所有者でない者が登記名義人とされている場合において、その登記名義を真正な所有者の名義に改めるためには、無権利者のためにした無効な登記を抹消した後に、真正な所有者名義の登記を行うのが通常の手続きとなります。
 しかし、抹消等の方法によらないで、登記名義を真正な所有者に移すとする趣旨の登記をすることができます。これが「真正な登記名義の回復」の登記です。  
 登記形式は、無権利者名義(現在の登記名義人)から真正な所有者名義にする旨の所有権移転の登記となります。

2.今回のケース 

              
1.平成25年9月25日、甲の失踪宣告の審判が確定した。

2.本件不動産は、甲区3番において、平成23年5月1日相続を原因として乙に移転した。(令和1年12月12日第25000号登記受付)

3.令和2年2月16日、乙が死亡した。

4.甲区4番のとおり、乙から丙へ相続登記がなされた。(令和2年7月7日第12000号登記受付)

5.丙は、令和2年12月17日、A銀行を抵当権者とする抵当権設定契約を締結し、その登記を経由した。(令和2年12月17日第45000号登記受付)

6.令和3年1月14日、甲の失踪宣告取消しの審判が確定した。

 要は、失踪宣告確定したから相続登記して担保も付けちゃったけど、その失踪宣告が取り消されちゃいました。助けて下さい(言ってない)。という事案です。実際はもう少し入り組んでてややこしかったですが、簡易にしました。

 所有者名義は「甲→乙→丙」と移転しました。本来であれば、乙から丙への相続登記、甲から乙への相続登記を抹消しなければなりません。ただ、A銀行の抵当権が設定されており、A銀行に迷惑をかけるわけにはいきません。

3.ポイント

                 
 この方法を取るときは、原則として管轄法務局への照会(事前打合せ)が必要となります。と、思ってます。何でもかんでもこの方法を取ることはまずい気がしますので、法務局からゴーサインが出てから取り組みます。

4.照会書の作成 


【事案概要】【照会事項】【私見】を述べます。
 必ず根拠資料を提出します。

【照会事項】において、
①真の権利関係の説明
 なぜ甲が真正な所有者であるのか法律上の根拠を示します。

②抹消登記手続きではなく、真名回復の方法を取るべき理由や事情を説明します。

 例えば、以下の事情や理由が考えられます。

 ・登記上利害関係を有する第三者の承諾が得られないこと(ケースではA銀行)
 ・真正権利者が抵当権付きの所有権の取得を認めていること。よって真正権利者は不利益を受けないこと。
 ・真正権利者から担保権者へ抹消登記請求をすることはなく、担保権利者の利益を害するものではないこと。
 ・現在の登記名義人は登記上の権利関係の不一致を認めており、真名回復の登記手続きを行うことを了承していること。

5.登記申請書の作成

    登 記 申 請 書
 登記の目的  所有権移転
 登記の原因  真正な登記名義の回復
 権 利 者  甲 住所
 義 務 者  丙 住所
  添付情報  登記識別情報
        登記原因証明情報
        代理権限証明情報
        住所証明情報
        印鑑証明書

①登記原因証明情報
 ・登記名義人の登記が実体に合致しない理由、事実を記載した書面を提供します。
 ・具体的には、失踪宣告の取消しの審判が確定したこと、担保権者の承諾が得られないこと、真正権利者が抵当権付き権を取得することを了承していることなど、を記載した書面に登記申請人が記名押印する。
 ・なお、今回は報告式の登記原因証明情報の補足資料として、失踪宣告取消しの審判が確定したことが分かる戸籍謄本および登記権利者である甲が前所有者の登記名義人であることが分かる戸籍の附票を添付しました。

この登記原因証明情報の作成がなかなか大変でした。もちろんテンプレは無いので、自作する必要がありますが、要件事実や法律上の根拠を調べながら作成するのが楽しくいつもと違う刺激を受けました。


現場からは以上です。

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