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教育・研修・訓練

BCPに関するWebページやガイドラインなどに出てくる ”教育・研修・訓練” という活動、なんだか重たて難解そうな言葉ですよね
実際、新人教育、業務研修、防災訓練や避難訓練のように使われ、それぞれに内容が濃い活動になっているでしょう

事業の運営・経営には、色々な場面で教育等の活動が必要であり、実際に行われています
その中でも、介護・障害福祉事業所での防災やBCPに関しては、教育等の実施が義務付けされています

しかし、どのように教育等を計画して実行したら良いのか、どうすれば効果的・効率的な教育等が行えるのか
実際に行った方は、”これで良いのだろうか” と迷われていませんでしょうか

今回は、事業・業務継続計画にかかわる教育・研修・訓練のやり方について解説します


■ 目的に応じて手段を選択

教育・研修・訓練という活動は、それぞれに目的としていることが異なります
また、参加者の立場であったり、到達する目標であったり、活動の形態なども異なります

  • 教育
    目的:一定の知識などを説明して理解させる
    立場:教える側と教えられる側の立場がある
    形態:座学
    例:学校の授業

  • 研修
    目的:特定の知識や考え方を更に深めさせる
    立場:教育のような立場のほか、同列同等の立場がある
    形態:座学、ディスカッションやグループワーク
    例:講習会、セミナー、勉強会

  • 訓練
    目的:技術や要領を体得させる
    立場:教育のような立場のほか、統制者の下に同列同等の立場がある
    形態:反復演習(何回も同じ動作を繰り返す)、実動(実際に体を動かす)
    例:パソコン操作訓練(反復演習)、避難訓練や消防訓練(実動)

上記は、それぞれの特性を簡単にまとめたものです
他の文献やWebページ上では、言い方や解釈が異なっているかもしれませんが、基本的な捉え方は同じです

  • 知識などを知らない人に知ってもらう

  • 今ある知識や認識を、さらに深いレベルまで突き詰めてもらう

  • 頭の中の知識としてとどめず、技術・経験として身体に覚えさせる

野球のルールやバットの振り方を知識として知っているだけではプレーできませんよね
バットを振ってボールをただ遠くへ飛ばすだけでなく、わざとゴロにしたり、犠牲フライを打つ戦術も知らなくては試合に勝てませんよね
そして、それが実際にできるように訓練しなければ、実現することは不可能ですよね

最初は ”知らない・できない人” を ”知ってる・できる人” にする活動が教育等です
それらの活動は、到達目標に適した手段を選択して段階的に進めることが重要になります
何も知らないのに、いきなり訓練を行っても目標に到達できないからです


■ 目標の設定

教育等の活動を行うにあたっては必ず、”活動の目的” と ”到達すべき目標” を具体的・明確に設定します
目的や目標が定まっていなければ、どっちの方向に・どの程度のレベルまでが分からなくなります

  • この記事の目的は
    教育・研修・訓練という言葉に戸惑い、困っている方に概要を理解してもらうこと

  • この記事の到達目標は
    教育・研修・訓練の違いと基礎知識を理解してもらうこと

こんな感じで目的と目標を設定します
ここでは、ごく一般的な理解を促すことを目的・目標としています

  • この記事の実施形態は
    一種の教育形態です

  • この記事の目標達成の確認は
    特に設定していません(本来なら、テストとかアンケートで確認するところです)

いかがでしょうか、目的と目標を明確にしているので、一般的なご理解が得られているでしょうか


■ 計画立案と根回し

目的と目標の設定とともに押さえていただきたいのは、対象者・参加者の知識や理解の度合い、技術の練度を知っておくことです
その上で、どのレベルを目標とし、そのための手段の選択、実施する際の要領・手順などを決めてゆきます

同時に日時・場所・人数・回数・必要物品など細かな事項を決めます
それらを次を例に組み立てて、間違いや抜けがないかを確認します

  • 目的
    教育等の活動をもって、最終的にどうあるべきなのかを示す

  • 到達目標
    把握している現在のレベルと目標とするレベルのギャップを考慮して設定する

  • 実施の形態
    教育(座学)、研修(勉強会など)、訓練(避難訓練、技術取得演習など)の別

  • 日時
    必要に応じて、期間や回数・頻度を設定する

  • 場所

  • 参加者・対象者

  • 実施の要領
    どんな活動をするのかの細部を箇条書きにして整理する

  • どのように目標到達の確認をするのか
    ペーパーテスト、口頭質問、参加者からの感想の聴取など

  • 目標に到達していない場合はどうするのか
    再度行うのか、実施形態や実施要領を変えて行うのかを考えておく

  • 次の活動・他の活動に反映できる事項をどうやって整理するのか

計画の立案段階で実施が不可能であったり、無理がありそうならば、❸実施の形態あたりから考え直します
よほどの理由がない限り、目的と目標を変えることはありません
(目的と目標が変わると、それ以降の全ての事項を一から考え直すことになるため)

なお、立案した計画を実行に移せるように、関係者への周知や根回し調整、必要とする物品や場所の確保などを行うことを忘れないでください
やろうとしている教育等の存在が知らされていなかったとか、道具がなかったということがないように


■ 実施と評価

立案した計画に基づいて実行します
この際、次のことに注意してください

  • 予想外の展開や変更しなければならない状況が発生した場合
    臨機に対応することになりますが、容易に変更できて目的・目標から外れない場合は、実施要領の一部を変更して対処します
    ただし、実動訓練や実技の場合で ”危険・その恐れがある” と判断した際は、躊躇することなく ”中止” してください
    安全が何よりも優先します

  • 長時間にわたる活動の場合は、途中で休憩を取ります
    座学の場合、人が集中できる時間が40分程度と言われますので、40~50分ごとに数分から10分程度の休憩を入れると教育等の効果が期待できます
    また、実動訓練などでは、体を動かしますので、天候や周辺の気温・湿度、参加者等の疲労度を確認しながら休憩を入れます

  • 教育等の実施間と終了後に必ず目標達成の評価を行います
    座学であれば、ペーパーテストや口頭質問による手段で確認できます
    実動訓練等であれば、参加者個々の動きの円滑さや成果物の完成度などで確認できます

  • 教育等の終了時
    参加者等に対し、教育等の参加と実施の ”ねぎらいの言葉” とともに、”実施間に感じた概ねの成果” を伝えてください
    この行為は、参加者等に次の活動や日ごろの業務に反映させるために必要な ”モチベーション” を保たせるための大事な行為です
    決して ”やりっぱなしの教育等” にしてはなりません 『必ず、功績と評価を示してください』

教育等をすべて終えた後は、教育等の総合評価を ”必ず” 行ってください
総合評価は、次のようなことを行います

  • 設定した目標に対する達成度の評価整理
    参加者等の理解度や練度を取りまとめます
    達成度が低ければ、再度行うか要領を変えて行うなど、次の活動を考えることになります

  • 実施要領等の適正性の評価
    教育等のやり方に問題や不具合などがあったなら、その内容を整理します
    目標に対する達成度が低かった場合は特に、実施要領に問題がなかったかを考えます

  • 整理した評価等に基づいた次のアクション
    整理した評価等を踏まえて、次回の教育等を計画するなど、次のアクションを考えます
    また、防災計画やBCPに反映・修正すべき事項が見出せるのであれば、その作業に着手します

  • その他
    参加者等の教育等に挑む態度・やる気の度合いを見て、人事評価などに反映することできるでしょう
    また、複数名で行う訓練やディスカッションなどを通じて、参加者同士の融和度や個々の特徴などを知る良い機会にもなりますので、実施間の観察を怠らないようにします


■ さいごに

日ごろの業務などで忙しくて教育等を行う暇がない・その労力がないなど、教育・研修・訓練を頻繁に行うことは難しいと思われるかもしれませんが、教育等も日常の業務と捉えて行うことが大切です

  • 事業は ”人で成り立っている” ということを考えれば、事業に教育等が必要です
    職場の全員が成長し、前向きに仕事に向かえる職場づくりは事業主の使命です
    教育等を通じて、従業員の状況や職場の雰囲気なども確認することができます

  • 教育等の実施については、”ただの実績” とすることがないようにしてください
    行った結果を踏まえて、更にレベルを上げたり、問題や不具合の是正に大きく寄与します
    役立つ教育等の計画と実施に心がけてください

  • 教育等は気まぐれや直感では実施できません
    また、やっつけ仕事では、その結果を有効に活用できません
    必ず、次のステップを踏んでください

    計画 → 実施 → 評価 → 反映

    なお、いつかは解説しようと考えています ”PDCAサイクル” と同じ構成です

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