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恋のエンドロール



つまんないラブレターマジやめてね
世界はもっと面白いはずでしょ?



沸き立つ感情に任せて殴り書きをした下書きを数日後に読み返したとき、自分がやっと泥沼から目を覚ましたことに気付いて嬉しさと怒りで凪だった心が久しぶりにグツグツと煮え立っていた。

恋というものは人を盲目にする一種の病気で、まさにわたしはそんな病気を患っていた重症患者だった。
まあ後半は恋というより執着に近かったのだけど(笑)

本当はその辺りからわたしの気持ちに終止符は打たれていて、ただそれに気付かないフリをしていただけなのだと思う。

まあそんな重症患者も''時間''と''俯瞰''という処方箋を服用しているといとも簡単にそんな幻覚からは目を覚まし、一体あの人のどこに魅力を感じていたんだろう?と鼻で笑ってしまうほどには効果的な薬である。

''恋煩い''とは昔の人も上手く言ったものだな〜と時代を越えてもなお共感を得て残り続ける言葉たちを見て、紙の中の人間も本当に生きていたんだとそこに立体感を感じてなんだかワクワクした。


でもね、本当に大好きだったんです。大好きだった。

この人のために変わりたいと思ったし、綺麗になりたいと思ったし、何かあったら1番の味方でいたいなと思ったし、わたしといることで生活が豊かになればいいなと、そんな人間でありたいなと本当に心からそう思っていました。

だけどいつからだったんだろう、この人を好きじゃなくなっていたのは。


''夢なら覚めて頂戴 泥だらけよもう
翼の折れたエンジェル なんて可愛いもんじゃないの''


わたしね、傷ついたと思っていたんです。

気付けば彼とお別れをしてから丸1年が経った。
当時のわたしは当たり前に悲しかったし、たくさん泣いたし、ご飯が喉を通らない失恋症状を患っていました。
ちゃんと数ヶ月引きずったし、復縁方法(笑)なんてものも調べたりしました。可愛いね。

なぜそんなにも心の中のしこりになっていたかというと、付き合っている最中の自分の姿にめちゃくちゃ''後悔''があったからだと気付きました。

なんであんなこと言っちゃったんだろう、なんであんな行動とっちゃったんだろう。
まあ生きていればどんな選択をしても後悔はつきもので、ましてやそんなものは結果論に過ぎないのだけど。

当時のわたしは、この''後悔''を払拭するにはもう一度彼とお付き合いをするという選択しかないんだと思っていました。
そうです、この時からわたしは彼のことが好きなのではなく、自分の後悔の回収をしたかっただけだったのです。


お別れした春が過ぎ、季節は夏に移り変わっていて彼と再開する機会があった。
ここからがベタベタしたジャムのような第二章の始まりで、今思えばあの時間が綺麗事になるはずもなかった。

上記のようにわたしは彼に対して抱いていた気持ちがありましたから、最初に再開したとき、彼女いるの?と聞いたら彼は『いないよ』と言って解散したあとのLINEで『良い人でも出来ない限りまた誘うね』とメッセージが届いていた。

当時のわたしも画面に映るその文字を見て、こいつは何を言っているんだと思ったことは鮮明に覚えています(笑)


結果から言うとこの時から彼は5年付き合っていた元恋人とヨリを戻していてわたしがそれに気付いたのは12月の年末頃でした。

それまで毎日おはようとか仕事終わったよとか他愛もない会話をして、月に1回遊んだりしてたんだよ。
『◯◯ちゃんが夢に出てきて起きちゃった!』とか『◯◯ちゃんといるとすぐ時間過ぎちゃう』とか言われたらさ、恋する乙女は勘違いしちゃうわけです。
ねえ、笑えるでしょ?みんな笑って!!!わたしってば勘違いしてほんとバカ!

今更だが付き合っているとき男性の友達とふたりで遊びに行っていると思っていた日もそこには女性も一緒にいたことを知り、わたしっていつから嘘をつかれていたんだろう?と綺麗事として箱の中にしまっていたものは真っ黒に焼け焦げてしまった。


ここからはもっとわたしがバカな話なのだけど、そこから話をして彼女と別れるという彼の言葉を信じて一緒に初詣にも行ったし遊びにも行ったしたくさんのLINEと電話をしました。

本当に彼女とは別れていただろうし、わたしとのお付き合いも視野には入れていたと思います。
そこから数ヶ月曖昧なグレーな関係を続けていたけれど、ふたりがまた同じ時間を共有することはありませんでした。

もちろん彼の中で一歩踏み出せない原因はわたしにもあったと思うし、彼の気持ちも理解出来るので今思えば仕方のないことだったな〜と顔をうちわで仰ぐ。
自分のことを棚に上げて話を進めるのはわたしの美学に反するので。



あれから2ヶ月ほどが経ち、突然訪れた春も終わりに差し掛かろうとしている。

ここ1年、悲しいと後悔が感情のピラミッドの頂点に君臨していることがわたしの日常の当たり前で、だけどそれって自らの意思で選んだ選択による末路だった。

被害者面をして決断を曖昧にして、グレーを許して、また嘘をつかれて傷つけられる可能性のある選択をしたのは紛れもない弱さを孕んだわたし自身だった。

悔しい。めちゃくちゃ悔しい。
どうして嘘をつかれた人、傷つけられた人から離れることが出来なかったんだろう。
彼に対して恨みや怒り、復讐してやろうみたいな悔しさの感情はありません。
わたしが感じているのはわたし自身に対しての悔しさなのです。


この悔しさはわたし自身にしか塗り替えることは出来ない。
弱さを孕んだ、自分を大切に出来なかった自分を変えられるのはわたししかいない。

過去も包み込んで?過去を糧に?過去を吸収して?過去のわたしは何を言っているんだ。
そんな過去、ハッピーエンドまでの踏み台にして酒の肴にでもしてやろう。


新しいわたしの物語は、まだ始まったばかりなのだ。

ピース又吉の言葉を借りよう。
『バッドエンドはない、僕たちは途中だ』


今後、殴り書きの下書きが公開されることはないだろう。
わたしのあの感情がくたくたのジャムになる前に火から離してあげていないと、わたしはコンロの前で一生煮込み続けることになっていた。
心の内を書き出すという行為は、わたしにとって心の整理整頓なのです。

危ない、わたしの最大の武器を間違った方法で振りかざすところだった。


彼はきっとそのうちまたあの元恋人と連絡を取り合うだろうし、なんだかんだあの女性と結婚するんじゃないかと思っている。もしくは画面には映らないいつメン(笑)の中の誰かとお付き合いをするんじゃないだろうか。わたしの勘は当たるのだ。

嘘をつく人はまた嘘をつくし、浮気をする人はまた浮気をする。もう繰り返さないと決めたことでもそれはもう癖のようなもので、人間の本質はそう簡単に変わるものではない。

元恋人がわたしのことを『どうせしょうもない女』と言ったこと。わたし、忘れてないからね。
思えばそんなことを口にする人間とヨリを戻した時点で、わたしと彼が始まらない合図は鳴っていたのかもしれない。

浮気に気付かず許してくれる年月に囚われたジャムのようなふたりはきっと美味しく出来上がるんじゃないだろうか。皮肉に聞こえるでしょ?皮肉です。


最後の電話で彼が『今までの時間、無駄だと思ってないよ』と言った。
わたしはあの時と同じ、こいつは何を言っているんだと思った。

''絶対絶望絶好調 ごめんね素直にしか言えなくて
さよなら あんなに好きだったけど なんちゃってね
絶対絶望絶好調 ごめんね素直にしか言えなくて
さよなら あんなに好きだったけど''


わたしね、人を嫌いになりたくないの。
「言わない言葉」にわたしの決意が込められている。
愛と呪いと祈りは似ているのです。

今のわたしに後悔がないのは自分の納得のいくまで好きでい続け、執着し終えたからだと思う。
お別れしてからのこの1年間わたしの言動には何も間違いはなかったと思える。
やっと自分の気持ちに区切りがついて、あの時文字に起こすだけで涙が出ていた出来事も手が震えず文章に出来た。

彼との『またね』は存在しないだろう。
元々わたしは復縁反対派の人間なのです。
百鬼夜行はすぐそこに。


''騙されたわたしが悪いんだよ
まあ騙したあなたも少しは悪いんだけどね、少しはね''


これはわたしの恋の備忘録でありエンドロールである。
今日も明日も明後日も、淡々と楽しく生きていこう。


わたしは今日もあなたの聴かない音楽を聴いて生きています。


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