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グリーフと向き合うお墓づくり


私は思う…
お墓づくりはグリーフサポートであり
お墓参りはグリーフワークだと…


グリーフとは、大切な人を亡くしたり、ものを失うことで生まれてくる反応や感情、プロセスのこと。
悲しみだけじゃなく、怒りや後悔、時には安堵することだって、その人なりのままの感情であって、おかしなことではない。

私がこの知識と出会い、グリーフサポート、グリーフワークを学んでから、お墓づくりで変わったことがあります。
それは、私自身が「お客様の感情をままに出しても大丈夫な場、空間」でありたいという思いです。

グリーフについて学ぶ前は「気のきいた声をかけしなきゃ」と常に考えてたり、「お客様に寄り添ってます」みたいなパフォーマンスをしていたかもしれない…。今、振り返るとあのころの私に恥ずかしくなりますが、その時はそのときで、精一杯、お客様のことを考えてのことだったので、それも私の大切な過程です。

しかし、一般社団法人リヴオンの代表の尾角光美さんと出会い、リヴオンのファシリテーター養成講座を学んでお客様と向き合い方が変わりました。正確に言うと、お客様に向き合う姿勢、接客はあまり変わってないかもしれません。変わったのは、相手に接する際のマインドです。リヴオンではこれを「あり方」という言葉で表現されます。正直、私はこの「あり方」ってものが、よくわかってませんでした。

しかし、てるみんをはじめ講師の人たち、一緒に学んだ人たちと共に一年近く同じ時間を共有する中で、今までそこにあるのに見てこなかった(見てこなかった)感情のグレーな部分、何色とは言いがたいグラデーションな部分があることを知り、それが自分の中にもあることに徐々に気づいていきました。

そして、リヴオンでつながった人たちから、指紋の数ほどあるそれぞれの感情の違いに、やわらかな眼差しと言葉がそそがれ、「いいんだよ」って包み込んでくれる。

その感覚を体感したことが、今の私のベースになっている気がします。

だから、今の私には目の前の相手は様々な感情と向き合ってきたんだというリスペクトのようなものがいつもあります。
言葉にするのは難しいのですが、あえてすると「あなたが大切にしてきたことを私も大切にしたい」という器のようなもの。あふれても、こぼれても大丈夫だよって、言える自分でありたいと思ってます。

話は長くなりましたが、今回、とても、素敵なお墓が建立されました。

お墓づくりがグリーフサポートになり、
お墓参りがグリーフワークになる。

このことを私自身が実感できるお墓になったのかなと思ってます。

前置きも長くなりましたが、素敵なお墓建立のストーリーです。読んでくれたら嬉しいです。

【サプライズなお墓づくり】 

奥様と娘さんたちを残して、旅立ったご主人。将来のことを考えたら、お墓を建てなくていいよね?と娘さんたちに相談すると「何で?お墓建ててよ。」という言葉をきっかけにお墓を建てようと決心がついたそうです。 

ご主人だけのお墓じゃないけど、家族、友人が来たときに寂しくない、お墓らしくないお墓にしたい。
そして、娘さんたち、家族にはお墓を建てることだけ伝えたけど、どんなお墓になるのか内緒にしておいて、驚かせたいというミッションも一緒に進めました。 

決まっていたのは、名字を入れないこと、そして、ガラスを入れて光の通る明るいお墓にしたいということ。 

そんな希望を中心に、ご主人や家族の話を聞きながら、お墓のデザインをラフスケッチしていきました。私の娘が施主様の娘さんと同い年という共通点もあり、子ども話で盛り上がり、毎回、笑顔のこぼれる打ち合わせになりました。初めは全くお墓のイメージがなかった施主様でしたが、毎回、一緒にアイデアを出しながら、楽しい打ち合わせ。重ねるごとにデザインがまとまっていきます。 

積み重ねられたコミュニケーションは自然と家族の人柄がお墓にも反映され、オリジナリティが浮かび上がってきます。 

墓石に名字は入れない代わりに、どんな言葉を彫ろうか大変悩まれていました。いろいろ思いを巡らせている時に思い出したのが、ご主人がよく口ずさみ、娘さんも鼻歌を歌っていた曲「糸」。
家族みんなが好きな歌だし、歌詞が家族の絆にも聞こえていいねと決まりました。そこからは、その歌詞を入れることを考えたお墓にしようと決まりました。 

そこで、ふと、思い出したのが富士市の書道家である 赤澤 佳子 さん。私の直感的で彼女に書をお願いしたら、きっと、素敵なお墓になると確信し、次の打ち合わせには来てもらいました。 

赤澤さんが机の上に半紙の筆を用意し、話を丁寧に聴きながら書いてくれます。施主様の口から出た言葉がさらりさらりと筆が踊り、半紙に投影されていく…。作品があっと言う間に出来上がっていきます。まるで魔法のよう。施主様と二人で感動して眺めていました。一般的な書だと面白味がないと思っていたし、施主様の想いを書に乗せたかったので、赤澤さんに声をかけられたことが今回のポイントになりました。 



また、施主様からも私も入るんだからと、ご自身の好みで嵐カラーである5色のガラスを選びました。そして、さりげなく、目立たないように旦那さんの口ぐせも入れようと。 



そんな感じで、共に楽しみながら進めていったお墓づくり。もちろん、完成予想の設計図は家族に見せずに進めました。
だから、私もお墓を見た時の家族の反応が気になるところでした。 

そして、納骨式当日。 

直前まで、雨が降っていたのですが、納骨式の頃には弱くなり、傘をささなくても大丈夫なぐらいになっていました。
初めて、見るご家族は「素敵だねー」「いいねー」「彫刻、面白いね」って、みんな笑っていて、笑顔があふれていました。
私は、その反応に嬉しくなりました。
サプライズは成功です!!! 



様々な感情の中でのお墓の建立。施主様、ご自身ですべてを決めることは大変だったかと思います。
「さみしさのないお墓」
お墓という家族の象徴が、ご主人と施主様の人柄になり、そこにあるだけで、想いが感じられるお墓になりました。
最後まで明るい施主様には、一緒にお墓づくりを通して、私も思いのあり方を学ばせていただきました。 

施主様、ご家族の皆様。そして、そっと、見守っていただいたご主人様、ありがとうございました。

リヴオンでは、「コロナ下で死別を経験したあなたへ」という冊子を配り、コロナ下でちゃんもお別れが出来なかった人たちへのサポートをしています。
ぜひ、こちらもご覧ください。

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