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生徒指導で使える技術②「コミック会話」

 今日は、生徒指導で使える技術「コミック会話」について書いていきます。
 以前何かの研修で習ったものを、自分なりにアレンジして使っています。

1、どんな場面で「コミック会話」を使うとよいか

 初めに、どんな場面で使うと効果的なのかということですが、主にトラブルの対応のときに使います。特に「言葉が足りずにトラブルになったケース」や、「思っていることがうまく伝わらずに互いに誤解を招いたケース」などで使いますが、割と全般的に使える汎用性はあると思います。
 言葉にできなかった思いを伝えておけばトラブルにならなかった、ということが可視化できるので、次につながる指導になります。

2、コミック会話の使い方

①指導する日時、場所、人を書き、当事者を簡単に絵で描く

ここでは仮にAくん、Bくんとします

②起こった「出来事」「事実」を、起こった順番に書いていく

①ナンバリングしながら事実確認

 ここでは、

①AくんがBくんの肩を、うしろから叩いた
②たたかれたBくんは、振り返ってAくんの頭を叩いた
③頭を叩かれたAくんは、Bくんに「バカ」と言った
④「バカ」と言われたBくんは、Aくんに対して「おまえがバカだ」と言った

という出来事があったとします。
 ここで、「お互いに叩いたり、バカって言ったりしたらダメだよね。次からはしないように。」と指導してはいけません。二人とも自分の行動を十分に振り返ることがまだできていません。ここで止めたら十中八九、また同じようなトラブルは起きます。

③言葉にしたことは「吹き出し」にして書く

 「実際に言葉にしたこと」は、吹き出しに書きます。
 大切なことは、「できる限り実際に言った言葉を書く」ということです。ニュアンスで「悪口を言った」とかではいけません。なぜかというと、後で「どの言葉で相手がどう思ったか」の擦り合わせができなくなるからです。
 また「言い方」も大事です。ボソッと言ったのか、強めに言ったのか、同じ言葉でも言い方で受け取る印象が変わるからです。ここでは、お互いが結構強めに言ったということにします。

④行動の裏にある思いを聞き、「吹き出し」にして書く

 次に、それぞれの行動の裏に、どんな思いがあったのかを書いていきます。ここが非常に大切です。なぜなら、ここで聞く「相手の行動の裏にある思い」は、互いに初めて知るからです。
 ここではAくんは

「休み時間にいっしょに遊びたいな。あっちを向いているから、話しかける前に気づいてほしいな。」

という思いで、後ろから肩を叩きました。

 BくんはAくんのそんな思いなどつゆ知らず、

「なんで叩くんだよ!痛いじゃないか!」

感じ、振り返ってAくんの頭を叩きました。やり返しってやつですね。

 この段階で大切なのは、「実際に口にした言葉の吹き出しとの違いがわかるように書くこと」です。
 私は「もくもくの吹き出し」にしたり、色を変えたりしています。

 おそらくここでAくんは、「自分は遊びに誘いたくて肩を叩いたのに、意地悪で叩かれたと思ったんだ。まずかったな。」と思い始めます。
 そしてBくんは、「Aくんは自分をいじめようと思ってやったわけじゃないのか。」と思います。「ちょっと悪いことをしちゃったかな。」とも思うでしょう。
 
 相手の行動の裏にある気持ちを知ることで、「相手に悪気はなかった」ということが判明し、少し安心します。でも、「痛かった」「嫌だった」ということには変わりありません。

⑤それぞれが「どうすればトラブルにならなかったか」を行動ベースで振り返る

 次に、

「それぞれ、自分がどのようにしていれば、トラブルは起きなかったと思う?」

と聞きます。
 大抵の場合、Aくん、Bくんとも、初めに書いた「事実」のところを指差して「ここをこうすればよかった」と答えます。

 Aくんは

「相手が叩かれたと思ったんだから、そう思われないように口で『Aくん』って呼びかけてから『休み時間に遊ぼうよ』と言えばトラブルにならなかったと思う」

「叩かれたからといって、すぐにカッとなって『バカ』って言ったのが悪かった。『なんで叩くの?』と聞けばよかった」

などと言うでしょう。

 Bくんは、

「叩かれて痛かったから、すぐにカッとなって頭を叩いてしまったのがいけなかった。『なんで叩くの?』と聞けばよかった。」

「『バカ』って言われたからって、言い返さなければケンカが続くことはなかった」

などと言うと思います。

 またやり方によっては、

「ここのところは○?×?じゃあここは?」

と聞くこともあります。図で言うと水色で書いてあるところです。

 私は「思うのは何を思ってもいいけど、言葉や行動に表してはいけないことがある」ということを折に触れて子どもに話します。これはまた別の記事で書こうと思うのですが、ここでは「お互いがそう思っちゃったのは仕方ないよね。」と、思いの部分は◯にします。すると、行動のみに焦点が当たるので、次から直すべきは「行動」ということに自然となります。

⑥お互いに「今回のようなトラブルにならないために、次からはどうするか」を考え、言葉にする

 最後に、☆のマークを書いたところです。

「じゃあ、次からはお互いにどうすればよさそう?」

と聞くと、上に書いてあるように言うと思います。

「じゃ、次からはそれに気をつけて関わろうね。」

と言えばそれでOKです。また、

「お互いに何か言っといた方がいいことはある?」

と聞けば、互いが納得していれば自分から「謝る」と言うでしょう。

 ここで大事なのは、「自分がとった行動について謝る」ということです。「なんかゴメンね」では、何のことを謝っているのかが曖昧です。
 謝るのであれば、「叩いたこと」「バカと言ったこと」といった「自分がとった行動」について「ゴメンね」と謝るようにさせています。

答えは子どもがもっている

 と、このように指導をしていくと、私はほとんど何も「教えていない」ですよね。
 ひたすら「子どもに質問して、書いていってを繰り返しているだけ」です。
 落ち着いて自分の行動を振り返ることができれば、子どもでさえ正しい答えに辿り着けます。(もちろん例外もあります。無理なケースも多々・・・)
 ただ、教師が押し付けるのではなく、「子どもがもっている答えを引き出す」という気持ちで指導するほうがよいのかなと自分では思っています。(自分を守るためでもあるのですが・・・十分に話を聞かずに指導してしまうと、後でクレームが来るということもあるので・・・)
 私も若い頃は、子どもの思いを聞かずに、「叩いた」という事実だけを聞いて叱っていた時期もありました。でも、それを繰り返すと「先生は自分達の思いを聞いてくれない」と、心が離れていきます。特に高学年はそうなりやすいですかね。

 読んでみて「使えるかも」と思ったら、ぜひ使ってみてください。では、今日はこの辺で。

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