近況報告240212

転職することにした。

そもそも両親、特に父からは「早く正社員になれ」と尻を叩かれていたのだが、ふと近所にスーパーが開店するチラシが届いた。読むと、パートの外に正社員も募集中だという。今までの経歴からして、たぶん事務職は駄目だ。だが、小売業は通算で3年はやっていて、それもそれらをやめたのは転職の為だった。多分、何事もなければ(十分な給与と社会保険と社会的地位があったなら)そこで続けることはいくらでも続けられたと思う。適性を感じたのだ。そういうことで、手前味噌ながらやるなら小売りへの転職がいいのではないか、と思ったのだった。

いや、実はこのチラシを見せてきたのは父で、私はそれを2週間くらい放置したのである。だって正社員になるの怖いもん。前も、前の前も、きっとうまくいくと思いながら、この世の地獄を見てやめた。それも毎回病を得て。こうした状況から、どうやって希望をもって正社員になれるだろうか。潰えるとわかり切った儚い希望を持って。

父は、1月中旬になると、顔を合わせればそれしか言わなくなった。私はなるべく父との接触を避けるようになった。父は仕事で朝が早く、私の仕事は夜中だ。それ自体は容易だった。

無論、父の焦慮はよくわかる。いつまでも養ってもらえるわけではない。己は老いていき、そう遠くない未来に定年を迎える。そしてどう多く見積もっても40年もすれば寿命を迎える。それまでに、この独り立ちせぬ子どもがまっとうな職を得て、それが数年十数年数十年と続くのを見て安心したいというのは、あまりに当然すぎる、そしてあまりにあたり前すぎる希望である。これはひねくれでも逆張りでもなく、悪い…というか非があるのはいつまでも非正規雇用を続けている私の方である。

とはいえ、とはいえである。そういう当然の理屈で職探しをして正社員になれるほどちゃんとした心の強さを持っていれば、私もここまで苦労してはいない。夜中に5,6時間だけ働くという気楽さと、そういった恐怖があって、父からの矢のような催促をのらりくらりとかわしてきたのである(愚かなり)。

しかし、ある日改めてしっかりと自分と向き合った。チラシを読み、己の人生設計について思いを致した。そして、応募してみようと思ったのである。いや、実はそれは理由付けとしては全体の3,4割くらいに過ぎない。実際は、父からの催促が愈々もって逃れ難く、これが為に気を病む有様だったからだ。

というわけで、1月25日に応募の電話をした。とりあえず電話をしろとチラシに書いてあったからである。向こうはパート募集だと思っていたらしいのだが、「正社員も募集されているということで」と話すと、「それでは書類審査からやるから、なるはやで履歴書と職務履歴書を送れ」と指示を受けた。そして必死に書き始めた。

履歴書は、今まで書いたのをちょっと変えればOKだ。問題は職務経歴書で、これを書いたのは前回の転職時、即ち2022年の2月ごろなのだから、そもそもデータをどこに置いたかわからないし、人生で二回目の職務経歴書であるからして、何を書けばいいか、どう書けばいいかなど万事暗中模索の感があった。もちろん、ネットで調べれば書き方からひな形まで、いくらでも見つかる。しかし、量が多いゆえに全然違うことを言っていたりして、苦戦した。しかしどうにか読めるものを書いて、1月27日に速達で応募書類を送り付けた。(ちなみに簡易書留で送ろうとしたのだが、一般企業への応募書類送付では基本的にNGらしい。本当かどうかは知らない。)

そして面接の日程の連絡を待っていたら、案外早く、1月30日に電話連絡が来た。その新しく開く店舗で面接をするという事で、2月1日と定まった。

面接を受ける前日は、ずいぶん緊張した。なにせまともな面接はほぼ2年ぶりだ。前にここでも書いたが、バイトの面接など面接ではない。あれはほとんど雑談だ。正社員の面接とは格が違う。いろいろ想定問答集を作ったりしたが、いまいち身に入らなかった。ともかく履歴書と職務経歴書に書いた内容だけでも覚えておかなければならないと何度も何度も読み直したが、頭に入らない。ええいままよ、とあきらめて寝た。

そして面接。店長に案内され、人事部の人に会う。人事部次長という偉い人だ。そして面接が始まった。

10月に警察学校を受けて、間違いなく日本中でも正統さでいえば五指に入るような面接を受けたせいか、今回の面接は随分優しく感じた。威圧的な面接官ではなく、心が空寒くなるような距離感もなく、一対一で、面接というよりは対話のような感じだった。そして私が質問されるかもしれないと思ったことは、あまり聞かれなかった。志望動機は聞かれたが、自己PR等といったいわゆる面接定番の質問はほとんど聞かれず、むしろ私の経歴を丁寧に掘り下げるものであった。向こうが非常に柔らかい態度で丁寧に話を聞いてくれ、また相槌もしてくれたので、私は面接というよりはカウンセリングを受けているかのような気持ちになった。面接時間は三十分にも及んだが、時間の長さは感じなかった。

そしてその人からその場で伝えられたのが、「君は今までに適応障害になったり胃腸の病気になったりして、それで以前の2つの職場で長く続けられなかったのはよくわかった。無論それらは病気なので仕方のないことだし、すでにそれらの病気についてはほとんど問題ないという事は分かった。しかし、採用を担当するものとして言えば、それらが再発する可能性を無視するわけにはいかない。従って、まずは職場に慣れる、仕事に慣れるという観点から、パートとしてやってみる気はないだろうか」という事だった。資料を見せてきて、「こういう風にわが社はちゃんと正社員登用があるから、安心してよい」とも言われた。私は面接官に悟られないようにごく短時間逡巡した。この面接官が優しいのは分かるし、率直にそういうことを言ってくれるのもむしろ嬉しい。しかし、ひとまず人手が足りないから採用したいという可能性はなかろうか、正社員にする気など毛頭ないが、甘言で釣ろうという気ではないか、と。

実はこのことについては未だに私の中で確たる結論が出ていないのだが、しかし今の職場では正社員になる可能性はゼロで、それならわずかでも可能性がありそうなこちらに行った方が良いと思った。それで、「はい、ぜひ働かせてください」と言ったのだった。

そして2月6日、採用の連絡を受けて今に至る。

現職をやめる関係の事については、また別に書く。


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