キリンのペニス

吹き荒ぶ寒風が男の肌を粟立たせた。
「すみません、マフラーありませんか。」
「それならキリンのペニスがございますよ。」
「ええと、それは表現というか、商品名ですか。」
「いえいえ、正真正銘、サバンナの風を切り、おそらく命を紡いだ、キリンのペニスでございます。」
「ええと、それはそういう使い方をするものなのですか。」
「それは私の決めることでなく、あなたの決めることでございます。」
「でも、そんなもの首に巻いていたら、周りの人が笑うのではないでしょうか。」
「笑うものはいるでしょうね、ですがそのもの達も牛の背を腰に巻いたり、鰐の背に金を収めたりしているのですよ。」
男は不思議と、キリンのペニスが欲しくなってたまらなくなった。
男は八万四千円でそれを買った。不思議な弾力のある、ちょうどマフラーほどの長さの干物だった。
男はそれを一度として首に巻くことなく、今となっては抱き枕として、ベットに横たえてある。土のような、埃っぽいような香りのするそれを抱いて眠ると決まって、自分が鋭い牙を持った獣となって、荒野を駆け巡る夢を見ることができた。

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