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ハードコアパンクが好きな人。

インタビュー11:ハードコアパンクが好きな人。

~ええもん見れた~

Eさん:
40代サラリーマンの男性。おでんの友人の友人。

インタビュー:2018年春ぐらい

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●ハードコアパンクとの再会。
おでん:お好きなことは何ですか。
Eさん:ハードコアパンクのライブに行くこと…。
おでん:ほほう。きっかけは何ですか?
Eさん:そうですね、あのう…。二十歳ぐらいの頃、一回ちょっと、自分の中でハードコアのブームがあったんですよ。
おでん:えーと、今40代で、二十歳の頃ということは、1990年頃の話ですね。
Eさん:90年代ですね。せまーいライブハウス行って、ワーワーやってるのを見て、当時は「あ、こんな世界があるんや」と。
おでん:ほうほう。
Eさん:あのう…、難波のベアーズっていう、大阪を代表するアングラの箱があるんですけど。そこに通っている自分が………。
おでん:「自分がカッコいい」っていう…。
Eさん:そうですね…(笑)。「こんなやばいシーン、誰も知らんやろ!」みたいな。
おでん:二十歳ですもんね。若者らしくて良いと思います。
Eさん:…で、そういうブームが二十歳のときにあったんですけど。そこから数年したら、違う音楽が好きになって。もう少しアーティスティックなものというか…、ただただやかましいだけじゃない、みたいな音楽の方が好きになって。反動かもしれないですけど。
おでん:なんか、分かります。
Eさん:で、長年ハードコアとは距離を置いてたんですけど。
おでん:はい。
Eさん:最近になって…。4、5年前ですかね。実はその、同じ職場に、大阪界隈で古くからやってるハードコアパンクのベーシストさんがおって。
おでん:ほう。
Eさん:その人が話しかけてきてくれたんですよ。…当時、僕のメールアドレスが、有名なハードコアパンクのアルバムの名前やったんで、それで声かけようって思ったんでしょうね。で、自分のライブに来ないかって誘ってくれて。
おでん:ほうほう。
Eさん:で、まあ、付き合いで行ってみたんですけど。久々のハードコアライブ。
おでん:はい。
Eさん:そこで、二十歳のときとは違った衝撃を受けたんですね。
おでん:ほう。
Eさん:出演してる人の中には、40代や50代の人も多いんですけど。それ見て、「なんやこいつら」「アホやな」って。
おでん:アホ…。
Eさん:僕が二十歳のときにカッコいいと思ってたことを、こんな地下で、まだやってる人がおんねんや、って。誰かに取り上げられることもなく、CDが売れるわけでもなく、ただやりたいからやってるだけ。生活とか安定とか関係なしで。…そういう人たちを、この年齢になって改めて見て、「あ、この人ら好き」って思ったんですよ。
おでん:なるほど。良い意味でのアホですね。
Eさん:僕はサラリーマンなんですけど。なんか、僕が「やりたいのにやれない」と思ってることを、この人たちは普通にやってるんや、と思って。
おでん:うんうん。
Eさん:それで、「ハードコア、やっぱええよな」って思って…。そこから、ちょくちょくライブに行くようになりましたね。
おでん:それは、素敵な再会でしたねぇ。

●ハードコアパンクのいいところ。
おでん:
やっぱりあの、CDとか買って家で聴いたりされるんですか。
Eさん:うーん…。CDたまに買うんすけど、結局あまり聴かないですね…。
おでん:あれ。
Eさん:ライブの方が良いってのが分かってるんで。
おでん:でも、CD聴いて歌とか覚えていった方が、ライブ楽しくないですか。一緒に歌えるし。
Eさん:そういう楽しみ方をする人もいっぱいおるんですけど…。僕はもう、別に。初見でも。
おでん:ふうん…。
Eさん:あのう、ふらっとライブハウスに行って、「わ、こいつらスゲー」ってなる方が好きなんですね。いつでもパッていけるところに、こんな近い距離で、こんな人がおるんや!っていうのがおもしろくて。
おでん:んー、つまり、しっかり予習して、予習した通りの音を再確認するような楽しみ方とは、ちょっと違うってことですか。
Eさん:はいはいはい。
おでん:ははー。
Eさん:こないだね、70年代のハードコアブームを築いたイギリスのバンドが来日して、ライブしたんですよ。…で、日本のバンドが何組か対バンで共演したんですけどね。そこで、あるバンドのボーカルが、すごい酔っ払ってしまってて。「ただ立ってるだけ」っていうパフォーマンスをしたんですよ。…パフォーマンスというか、状態ですかね。
おでん:ええ…(笑)。
Eさん:バックで演奏はしてるんですよ。でも、ボーカルの人だけ、何もせず外国人の客とただただにらみ合っているっていう…(笑)。たまに「オラァ…」言うて。
おでん:なんじゃそれ(笑)。
Eさん:そんなん、ライブじゃないと見られないし。
おでん:そらそうですね(笑)。
Eさん:そうなんですよ…。で、ハードコアって、下手したらそういうのが「カッコいい」ってなるところがあるんですね。
おでん:そういうのっていうのは、「酔っ払って演奏しない」っていう態度ですか?
Eさん:うん…。そういう、ダメなところ、やらかしてしまうところが、カッコよくなってしまう。
おでん:はー…。たとえば、クラシックのコンサートでバイオリン奏者が演奏せずにずっと指揮者にらんでたら、「金返せ」ってなりますよね。
Eさん:ははは。そうですよね。観客は「こんなの見に来たんじゃない」って思うでしょうけど。
おでん:でも、ハードコアの観客は、酔っ払って演奏しない人が出てきたら、「来た!」となる。
Eさん:地下ではね。「ええもん見れた」って(笑)。
おでん:なるほどー。
Eさん:まあ、そういうのは極端な例で、めったにないことなんですけど。でも、圧を感じるようなパフォーマンスがあって、ぐぉーって来たらそれでええやん、って思うんですよ。
おでん:そっかぁ、楽譜通りのキレイな演奏を楽しむというよりも、音楽を通して人間の何かがむき出しになるのを見る、って感じかなぁ。それは確かに、CD買う楽しみ方とは、全然ちがう楽しみ方ですね。もちろん、その2つが相反する楽しみ方ってわけではないんでしょうけど。
Eさん:はい。もちろん、ハードコアでもいろんな楽しみ方してる人がいると思います。
おでん:もちろんもちろん。はい。
Eさん:ほんであと、ライブ行ったときのもうひとつの楽しみが、Tシャツ。
おでん:Tシャツ?
Eさん:ライブ行ったら、Tシャツは絶対チェックしますよね。あの人ら、Tシャツが無駄にカッコいいんですよ。Tシャツがカッコよかったら僕、だいたい許せますね。
おでん:バンドTシャツですか。
Eさん:はいはい。バンドの人らが、自分で作ってはるから。ライブが良くて、それでTシャツもカッコよかったら、もう僕はファンになってしまいますねぇ。
おでん:へぇー。

●なかなか光が当たらないハードコアパンク。
Eさん:…こんな話で大丈夫ですか。
おでん:全然大丈夫ですよ!
Eさん:ハードコアの話は、なかなかする機会がなくて。
おでん:え、そうなんですか。
Eさん:話す機会がないっていうか、興味をもってくれる人がいない。
おでん:あら…。
Eさん:僕はあのう…、フェスにも結構行くんですけど。フェスつながりの飲み会とかあったら、10人20人音楽好きが集まるんですけど、ハードコア好きな人に出会ったこと、いまだにないんですよ。
おでん:そんなに?なんでやろう…。
Eさん:なんででしょうねぇ…。今はロック自体の敷居が下がってて、年がら年中どこでもフェスやってるし、そこに行けば知名度の高い人が見られるし。わざわざそんな、すみっこの地下まで行って楽しもうとは思わないんでしょうけど…。
おでん:そっかぁ…。
Eさん:でも、「1回見ろよ!」って僕は思ってるんですよ。「来いよ!」と(笑)。
おでん:ふふふ。
Eさん:今はYouTubeで音楽を紹介することもできるんですけど、いやもう、何も言わんから黙ってライブに来てくれ、っていう。
おでん:とりあえず生で見てくれと。
Eさん:はい。なぜなら、自分がそうやったからねぇ。
おでん:うーん…。…じゃあ、いっそ、ハードコアの方からフェスに出向いてファンを獲得するのはどうですかね?ハードコアバンドを、ロックフェスに出すっていう。
Eさん:はぁー…。
おでん:でも、地下のバンドを表舞台に出しても、良さが出なかったりするのかなぁ…。…もし、ハードコアのバンドがフェスの舞台に上がったら、どうなると思いますか。
Eさん:それはもうねぇ、観客全員、上がると思います!
おでん:おう!はははは。
Eさん:カッコええもんはカッコええし。もう、極端に言うたら、国内で一番大きいフェスで、一番大きいステージにぽーんと出しても、ワーッてなると思う。
おでん:そっか~。「地下だからこそ良い」って考えてらっしゃるわけじゃないんですね。機会があるならメジャーな舞台に出ても良いんじゃないかと。
Eさん:うん。僕はもうそれは、全然ありやなと思ってて。
おでん:…ところで、初心者の人にハードコアを勧めるとしたら、どのバンドを勧めますか。
Eさん:うーん…。「FIVE NO RISK」っていうバンドがあって…。あの人らは…、もしかしたら、ひょっとしたら、来るかもしれないですね。世の中の売れ線というわけではないけど、誰が見てもカッコいいと思うんちゃうの、って思うし。ハードコアにしては大きい会場で…、怒髪天と共演するような話もあるぐらいやし。
おでん:へー。ファイブノーリスク。
Eさん:結構ツボをおさえてるというか。普通のロックファンが聴いてもいけるんちゃうかな…。まあ、僕はもうちょっと…。
おでん:荒削りの方がいい?
Eさん:うーん…。好みの話でいうと…。完成されすぎているのは僕にとってのハードコアじゃないというか…。…いやでも、FIVE NO RISKはクオリティ高くて良いと思ってますよ。…ただねぇ、Tシャツがちょっと好みじゃない。そこだけですね。
おでん:Tシャツそんなに大事なんや。

●これからの目標。
おでん:今後の目標を伺っていいですか。
Eさん:………………。ハードコアバンドしたい。
おでん:おーっ、そうなんだ!
Eさん:ハードコアのバンドはやったことないんで…。
おでん:いいじゃないですか!バンド活動そのものは、これまでにもご経験があるんですね。
Eさん:はい。…ハードコアじゃなかったけど、昔やってまして…。
おでん:すごいすごい。やるとしたら、楽器は何をされるんですか。
Eさん:ギター…。
おでん:ギターは昔から?
Eさん:ギターを初めて買ったんは高校生のときで…。習ったこともないし独学やし、十分に弾けるか弾けないかは分かんないですけど…。でもやっぱ、あの人ら見てたら、ただただぶちかましたいというか。なんか……。
おでん:めっちゃいいじゃないですかー!
Eさん:……あのう、僕、自転車で通勤してるんすよ。
おでん:はい。
Eさん:片道50分ぐらい。
おでん:長!
Eさん:そのときにフレーズとかを考えるんですよ。道すがらにある物体のフォルムでリズム考えたりとか。
おでん:…どうやって?
Eさん:丸い看板があったら、シャ!とか。四角い建物があったら、シャシャ!みたいな。
おでん:おおう、そんなふうに考えるんだ。
Eさん:そういうんで、湧き出て来るんですけど。わーってなるんですけど。
おでん:すごい!
Eさん:…大概、次の日になったら忘れてますよね。
おでん:ああ…。
Eさん:……。
おでん:もったいないですよー…。
Eさん:そうなんすよ。
おでん:かきとめたりとか、しといてくださいよー…。
Eさん:ねぇ…。………。
おでん:………。とりあえず、バンドはぜひやってください。せっかくやし!

<おわり>