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詩集

151
詩、ポエム、詞のタグが付いた投稿を一つにまとめたものです。
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#詞

善良

雨 ガレキ 壊れた蝶番

青いはずの空は
よくわからない色に変わり
感覚を失った体には
天と地の区別もつかない

善良
ああ善良
人には決して宿らぬ善良

傷 ケムリ 破れた防護網

暗いだけの海は
ようやく訪れた安息に変わり
感情を失った心には
水と血の区別もつかない

善良
ああ善良
人には決して宿らぬ善良

全てはあなたに出会うために

瞬き

空が白けてく
気持ちも冷めてく

風が生温く
気分は最悪

決めた
見ないよ
何も
見ないよ

光が瞬く
心が変わってく

瞼の裏焼き付く
過去は薄れてく

消えた
いないよ
誰も
いないよ

目を閉じている間だけ
世界は私のもの

遅く
速く
長く
短く

瞬く

みんな笑っている

爆笑
微笑
嘲笑
冷笑
愛想笑い
薄ら笑い
高笑い
苦笑い

笑う動機や意味合い
その奥にある感情は様々

ところで笑うことは健康に良いのだそう

笑いがそうなら
暴力
暴言
悪口
陰口
誹謗
中傷
それらも健康に良いのかもしれない

たいした理由もなく
人の底に何がいるかなんて
考えることもなく

楽しげに
寂しげに
悲しげに

みんな笑っている

そこで

何かと何かを比べて
順番に並べても
右にも左にも
終わりがない

誰かと誰かを比べて
順番に並べても
上にも下にも
終わりがない

そこにいるずっと

夢から覚めても
悪夢の最中

そこにいつまでも

夢から覚めたら
そこから見上げる

そこでただただ待つ

右も左も
上も下も
顔も名前も
目と目があっても
わからないような暗渠で

生きてる気がしない


目が覚めて
昼まで
天井見てる
動き出す午後
財布見当たらない


食事とって
夜更けに
携帯見てる
乾かない服
明日着る服がない

生きてる気がしない
明日生きてる気がしない
生きてる気がしない
すでに生きてる気がしない

あんな風になりたい
憧れてたっけ
こんな風な現在
夢見てたっけ
どうでもよくはないけど
いいよ
もういいよ

生きてる気がしない
ずっと生きてる気がしない
生きてる気が

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眠る再誕者

曖昧な記憶を掘り返して
何も持ってないことを知る
定かでない朧げな過去を
俯瞰で見る妄想

望んだように書き換えればいい
誰も過去には戻れない

生まれ変わっても
眠り続ける

最低な思考を垂れ流して
何も意味がないことを知る
抗えない明瞭な悲喜を
無心で狩る生業

望んでないなら捨て去ればいい
誰も捨てても拾わない

生まれ変わっても
眠り続ける

眠り疲れたら
生まれ直せばいい

ちかくで

きっと今までだって
何かの弾みで
全部ひっくり返って
終わるなんてこともあったかも

悔やむことも
祈ることも
ないまま
一瞬で消え去るような

お別れはまだ先
地殻で会いましょう
実存も曖昧な深みで

きっと今までどうり
何かの力で
全部ひょっこり元に
戻るなんてことがあってもね

悼むことも
変わることも
ないまま
一斉に飛び込む奈落

お別れはもうすぐ
知覚で会いましょう
実像もあやふやな彼

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隔世厭世

いつの時代にもきっと
世の中に背を向けて歩む人がいて

いつの時代にもずっと
下を向いて影だけを見つめる人がいて

うなだれて何も出来ず
涙なんて流れることもなく
ただただ虚空を見つめたまま
風に飛ばされる砂のように
静かに消えることを望む

いつかはきっと
この世を厭わずに

いまは無理でも
世代を隔てて

きっといつの日か
世を儚む誰かが

この世は美しいと
言えるように

蟻飼い

蟻を飼う
雀の涙ほどの心許ない報酬で
特別な個のために
ひたすらに働け

蟻を飼う
鼠の欠伸ほどのささやかな休息で
特別な生のために
ひたすらに奪え

蟻の身には余るほどの報酬と休息

飼っている者は蟻なのか
飼われている者は蟻同然なのか

特別な誰かのための世界では
飼う者も飼われる者も蟻でしかない

気づいた者から蟻であることをやめていく

やめた後で生き残るための処世術など
あるはずもないこ

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続きの街から

通り過ぎてきた街の景色はよく覚えてる

活気のある商店街も
風情のある昔ながらの喫茶店も
改装前の古びた駅の改札口も
地下のライブハウスに向かう細い階段も
安くて美味い中華料理屋の赤い暖簾も

ただその街での暮らしぶりだけは
あまり思い出せない
良かったことも悪かったことも
きっとあったはずなのに
何も思い出せない

街を離れる時
住んでた部屋を引き払う時に
全て置いてきたんだろうか

たしかに関

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被写体

写す価値のある
あなたになってみたい

あなたの視点
あなたの振る舞い

あなたのような肢体で
存在してみたい

写す意味のある
わたしになってみたい

わたしの思考
わたしの不充足

わたしのようにしがらみ
埋没した裸体

価値や意味を超えて
色濃く不気味に横たわる悲しみ

ペシミスティックで
あまりに眩しい被写体たち

あなたとわたし
幻と実存

曖昧になる境界

半分の世界

絵に描いたような人生
絵に描いたような花
何を手にしても
虚しいだけ

片目をつむれば
世界は半分になるわけでもないし

それなりに聞いて見た
それなりに得た経験
何もない方が
まだマシだね

火の粉を払えど
炎は勢いを増して世界を燃やす

君が言った
何度も「無駄だ」って

白けないように
癒そう

君が言った
何度も「無理だ」って

白けないような
居場所を

夜凪

何も変わらないまま
気付けば時間だけがすぎて
もう取り返せないことも多い
くたびれた顔が
いびつに深海と笑う

静かに時が止まる砂浜
安物のスニーカーに踏まれて
混ざった砂と木片がかすかに呻く
プラスチックの破片が
闇夜の水面に浮かぶ

唐突に終われ
いま思うこと

何をしてもひとり
どこにいてもひとり
私が透明でないと誰が証明できる
私が私だと誰が証明できる

いつまでたっても


わたし

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終わる頃にまた来る

去る者追わず
来る者拒まず

出入り自由
お好きにどうぞ

乗り遅れた人
駆け込んだ人

出入り禁止
隣りに同乗

逃げ切った顔
逃げ疲れた顔

悪い足場
滑る足元

叫び声は遠のく
人影はもうなく

終わる頃にまた来る
終わる頃にまた来る
終わる頃にまた来る
終わる頃にまた来る