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セサミ ストリート

すぐ目が覚めた。 腹痛。スマホ、アラーム鳴る5分前。バイトいかなきゃ、でもまだ二度寝できる。アラーム数個消して目をつむる。腹に手を乗せる。20分後に鳴る。寝れるはず。昨夜も寝れなかったから。二度寝なら。
まぶた裏の明滅。動悸がする。いつもこう。なんなんだ。寝させてくれ。目をつむったって寝れないのに。いらつく、天井を眺める。なにも考えない。動悸がする。眠れない。アラームが鳴る。止める。天井。アラーム。止める。一瞬意識が飛び、5個めのアラーム。意識がなくても勝手に止めてる、やんなる、これ以上は遅刻。いやだ。寝ていたい。ぎゅっと目を閉じ、10数えて、開き、昨日の服のまま、詰めっぱなしのリュックつかんで、鍵めんどい、そのまま出る。体おもい。外!眩しすぎる、いつも。目が痛み、ゆっくり頭まで響く。目を細め、なるべく暗いとこ、下を向いて歩く。なに見ても意味ない。考えないよにして歩く。体力つかいたくない。交互する靴先、かすんで、すでに疲れてる。もういやだ。なにが?考えない。うるせーし、くせーし、しらねー、疲れてる、交差点、信号を見ないと、顔をあげようとして、不意、顔前-羽ばたき-汚臭-まっくろ-ちらつき。
なさけない声でた。ハトが降りただけ。キモい声。声キモいからモテない。ウソ。中身がキモい。から友達いない。どーでもいー。ウソ、どうでもよくない、からぼやいてんだろ。破けたゴミ袋 つついてるハト。燃えるゴミの日か、今日。忘れてた。先客のハトと混じり、カラフル生ゴミ、みな無心でつっつく。うすよごれたハトたち、がまた翔んでくる。ゴミの手前で降り、ツテトト、歩いてゴミへ、散乱してる、ポリ袋の破片ごと、こびついたキャベツ屑を。
青信号で パッポー パッポー 補助音声が流れる。おれ、つっ立ってる。なにも考えないよにしている。ハト、ツテトト、周りをうろつき、ハト翔んできて、ツテトト。寄って、離れて、翔んで、もどって-ぐるぐる-ツテトト。ハトから目が離せない。群体、動いて、パッポーがやみ、エンジン音が消え、くっく鳴くハトたち、急停止、首だけをこちらへ向ける。黒いビーズの瞳、全開で、なにも映さない。黒。太陽は、背。の気がする。曇り、だからしらない。気にしてない、そんなの。でも、背。瞳に映らない、いろんなこと。ハトたちが次に動きだしたら、なにかよくないことが起きるような気がする、のに、見ちゃいけない気がするのに、目を離せない。
パ────ッ  クラクション  ハトが飛び去る。通勤の男女 通学の男女 その他の男女が信号を渡る。パッポー 会話 軋むダクト 雲間の陽射しでキラキラゴミ袋、散らかったティッシュはみじめに放置され。いつも通りのクソな日。いつも。いつも。バイトに行かなきゃいけない。金がない。クソ。くそが。なにがクソかわからない、しらねー、ボケ、クソクソつぶやき、うつむいたまま歩きだす。  事務所に着。ハンバーガーの匂いと油脂が染み込んだくっせえエプロンを着る。洗濯は各自。知ったこっちゃない。バンズを素手でバンズのビニルを破ってバンズを焼く機械にバンズを突っ込む。ゴマが飛ぶ-散る。焼く機械の裏に放置されたゴマの山。チャバネたちの城。しらねえよ。バンズを突っ込む。ゴマが突っ込む。焼けバンズが降ってきて次の工程エリアへ横に滑らす。バンズ突っ込む。Gが横切る。バンズに突っ込む。バンズで弾く。ゴマが散らばり、金属板で跳ね、ゴマを滑らす、バンズを突っ込む。ゴマが跳ね、先に落ちたゴマたちの周縁を廻り、
ハトだ。今朝のハトと同じ動きだ。ゴマが。跳ねて、踊って、カタカタ震え、止まり、投げこまれるハンバーガーに撥ねられて散り、集まる。しらねえよ。ツテトト。何も考えないようにして、バンズを突っ込み続ける。視界の隅に堆積するゴマ山にゴキがにじり寄る。ツテトトト。触角が揺れている、羽ばたきと同期している、じゃばらの腹部が拍動している。しらねーよ。しらねえ。わからない。バンズ。

時間を浪費するのだけ、ずっと得意だ。

閉店で、脱いだエプロン振ってゴマが散り、今日はミスオーダーのアップルパイもなく、空腹のまま帰る。もう暗い。遅くまでやってる定食屋。疲れた。せむしの老婆に注文。厨房で丸椅子に座っていた老爺が立ち上がる。天井ぎわのテレビがパペット人形を写している。ぼーっと眺め、人形が声を出そうとふわふわの両手を振りあげ、レジの老婆がリモコンで画面を消した。包丁の音。スマホ出して、しまう。見たいことなんか、ないな。テレビは液晶で、反射がない、首がつかれるから、木の机、木目、見てもしょうがない、目をつむり、もう寝ちゃいたいのに。息をして、待つ。盆に乗った定食。米の湯気。えづいて、食えない、べちょついた米、箸からこぼれて、机の上、左手でひろって、口に入れ、噛み、サバ味噌、おいしいんだけど、でも、義務よな、こんなん。一口ずつ、米と交互に入れて、のみこんで、気持ち悪い。
店、出て、小雨ふってた。傘ない。どーでもいい。満腹んなるとよけいに疲れる。よね? とか、キモ笑 わざとらしくふらついたフリして、実際ふらついたりして、いつもの交差点。なにやってんだか、いつも。
赤信号、待つ。車もないのに。ばーか。誰もみてねーよ。
足元で、みずたまり、弾けた雨粒たち-融けることなく液面-滑る。浮いた小粒の水球たち-震えてうろつき-不意に融ける。ツツテテ。痩せた老婆が二階の窓からこちらを見ている-みてねーよ。ビニール袋を殴る雨粒の音、跳ねて、でも揺れない。ガードレール脇の草むらに目を滑らす。ポピーの蕾がゆっくり潰れていく。割れ-乾いた粒がこぼれ-トトト-すぐ濡れ-凝集する。老婆が後ろで見ている。?眼球-微細動.繰り返し-焦点-ぼやけ-見たものすべて勝手に沁みこんでくる、勝手に!ずっとそうだった。揺れ、傾いて、誰もいないだろ、ハトだ!ハトか?折れた茎から黄色い液が垂れ、マーブル模様、排水溝。
信号みなきゃ、顔あげようとして 全身 ぬるい
風。顔をあげたくない。目をつむる。視界にハトはいない。瞼の表と裏でフラクタルが踊る。ツツツ。内と外に とよめく ‐ よどみ‐静止‐散逸‐運動。
夜が続いていく。
クソがよ
目をつむる。それで?w
息なんて。
動悸-吐きそう-泣きそう-拍動  それで?
夜が続いていく。













( 2023 文学フリマ東京37 造鳩會 鳩アンソロジー「鳩のおとむらい」 寄稿作を改題 / 改稿 )

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