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FTR250プロジェクト1

割引あり

 当店はハーレーダビッドソン専門店だが数年前から一台のFTR250を手掛けている。通常は引き受けない案件だが通ってくれているお客さんの切なる思いに応える形で引き受けた。しかし引き受けたはいいがこれがかなりハードな依頼だということに気づいたのはずっと後のことだった。

 HONDA FTR250 1986年2月にリリースされたこのマシンはその名の通りフラットトラックレーサーをイメージして開発された画期的なモデルである。画期的とは日本でのことで、アメリカでは広く行われているフラットトラックレースは人気がありHONDAはその波に乗ろうとした形であった。しかし日本では馴染みのないフラットトラックレース、そしてそのレーサーをイメージしたそれは思惑に反して浸透せず人気がないまま数年で生産終了してしまう。そんな言わば残念なモデルであるFTR250なのだが、その実内容は非常に良いものらしい。これは実際に乗ってみないと分からないが方々からの評価が高いというのは現実だ。当時こそ人気はなかったが本場アメリカや現代の日本においてはFTR250の価値は高い。それは2000年に販売された焼き直しのFTR223の存在が大きいだろう。

 2000年のその頃はヤマハ TW200が某TVドラマの影響で爆発的な人気になっていた頃だ。いわゆるトラッカーカスタムがトレンドでHONDAはそれに乗っかりFTR223をリリースする。赤いフレームにトリコロールカラーのFTRと言えば多くの人がイメージするのはFTR223の方だろう。2000年から2016年まで製造された223は名こそFTRだがフラットトラックレーサー感は薄く、競技をやる上ではやはり250の方が本気度が違うようである。

 そんな不人気絶版車の再生がこのプロジェクトである。お客さん曰く、「大切な人の遺品であるFTR250を乗れるように復活させてほしい」これが依頼内容であった。つまりレストアである。

 絶版車の一番のネックは部品の調達である。これが出来るか否かで作業の難易度は激変する。私は引き受ける前にエンジンのガスケットを数個ピックアップしHONDAの在庫状況を調べてみた。すると現在でも生産されていたため全てではないにしろ全く手に入らないことはないだろうと、むしろガスケットなどの消耗品は手に入りそうだと判断しこのレストアを引き受けた。しかし今となっては何と浅はかな判断だったことか…。

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