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扇子ナンセンス。

小田扇子。
最初は小田センス。だったけど
「和」なものが好きだし
漢字が良かったし文字ってみた。

名前をつけて思い出した。
私と扇子のお話。

着物を着ていた頃のこと。

着物を着ると背筋がしゅんとする感じや
身振りをきちんとする感じが
いつもの猫背のだらしのない自分と違って
とても好きだった。

好きになったらとことんな私は
衝撃の出会いを果たす。

京都の職人さんが手描きで仕上げた
一点ものの扇子。

骨も扇面も普通のものより細く繊細で
その細い扇面には、はっとするほど見事な
一本桜が描かれていた。

手に取るとその繊細さとは逆に
強いしなやかさがあって
もう手放せないと購入を決意したのだ。

お値段ももちろんそこそこした。

けれど、その価値はあると
私の気持ちは完全に鷲掴み。
ぐわし!

大切に使っていたある日
扇子がないことに気がついた。

そう。
紛失したのである。

探しに探し、着付けの時かと思い
着付けをして下さった方に
見かけたらお願いしますと伝え
家もひっくり返して探しまくった。

しばらくして
着付けして下さった方のLINEだった。

「Aちゃんが持っていたので
 それ、扇子ちゃんのよね?と聞いたら
 私のです。と言われて
 強く言えませんでした。ごめんなさい」



……?



一点ものなんです。
ええ。私、自慢げにパタパタしてました。
それはそれは気に入ってました。

どうか…お返し下さい。


Aちゃんが盗んだのか拾ったのか
着付けの方の嘘か誠か
真実は闇の中。


ただ、ひとつ光が見えると言えるのは
私も一点ものの扇子であるということ。

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