元同僚「本当の自分に戻りたくないから帰省しない」
「今年の年末年始に親に会う予定がある」別居親子の68%
これは、PGF生命という保険会社が行った「おとなの親子調査」というアンケート結果の一部。
子どもが生まれてから、こういった「親子〇〇」というものに自然と目が行くようになった。
これを見ていて、かつての同僚のことを思い出した。
彼女はよく言っていた。
「本当の自分に戻るのがイヤだから、帰省しない」
理由を尋ねると、実家に帰ると素の自分に戻ってしまう。
そうすると、休みが明けて東京に戻ったときに「戦闘モード」にするのが大変で疲れるから。
東京で暮らして、働くのは戦闘モードという別の自分を生きる必要があるという風に受け取れた。
でもその頃の私には、正直それが理解できなかった。
私は年に1回は実家に帰るタイプだったし、なにより当時は仕事がうまくいっていた。
日曜の夕方になると翌日の仕事のことなんかで憂うつになる「サザエさん症候群」にもなったことがなかったから。
働くってそんなもの。
自分の気持ちに蓋をして、無理してがんばるのが仕事。
生活するためには、おカネを稼ぐためには仕方がない。
割り切るしかない。
結婚もしない、興味ない。
彼女は前髪をさわりながらそんなことを言っていた。
元同僚は、答えづらい質問をされたり、詰められたりして困ると前髪をさわるくせがあった。しょっちゅうやっていたので、仲間にマネされていた。
私より先に前職を辞めた彼女は、その後職を転々とした。
お笑いが好きだったので、吉本に入って新宿のルミネの前で劇場のビラ配りをしているところに出くわしたこともあったが、その頃もしんどそうだった。
しばらくたって、いきなり結婚した。
その頃から、変わり始めた。
SNSに映え写真を投稿するようになった。
スイーツ、行列のできる店、海外旅行。
キラキラしだした。
タガが外れた感じだった。
もはや別人だった。
そして、40歳を過ぎて子どもを産んだ。
私が前職を辞めて九州に引っ越す前、久しぶりに飲みにいった。
夫婦関係のこと
新居のこと
子育てのこと
仕事のこと
たくさん話をした。
否定していた結婚生活や子どもとの生活が楽しそうで、充実している感じが言葉の端々から伝わってきた。
仕事もうまくいってそうな雰囲気だった。
とにかく、納得している感じだった
変わったよねーと伝えると、うっすら笑って、そうかなぁと言った。
前髪はさわっていなかった。
年末年始にSNSを覗くと彼女のつぶやきがあがってくる。
実家には毎年帰省するようになったらしい。