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音楽でメシを食った話

「写真でメシを食う」と同じくらい、軽音やってると「音楽でメシを食う」にも憧れる。今回は水道筋商店街で流れる店舗紹介ソング制作に作詞・作曲・演奏で参加してきた。ご縁にも恵まれて刺激的な経験ができたので、製作記録として書き下す。

商店街で流す店舗紹介ソング

ご相談を受けたのは、商店街に流す店舗紹介ソングを作る件だった。商店街では朝から晩まで有線放送、商店街からのお知らせ、店舗紹介などが放送されている。お店の紹介には2通りあって、原稿を渡してナレーターに読んでもらうパターンと、音源で入稿するパターンに分かれる。

前者のナレーターも集中して聞けば上手いのだけど、いかんせん生活音と同化して印象に残りにくい。周囲の人に聞いても、印象に残る店舗紹介は「な也」「不動産コンサルティング」のテーマソングだったり、「宮内不動産」のミルクボーイのオマージュネタだったりする。

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そういう訳で、持ち時間1分で「スタンディングバル和in」のことを知ってもらうような、店舗紹介ソング制作のご相談を受けた。腐ってもバンドマンなので何かしら作ることはできるけれど、自力で店舗紹介ソングとして成立させられるのか躊躇もあった。そこに、もう1人の専属カメラマンであるツグジンさんが二つ返事で引き受けたと聞き「凄い!一緒につくりたい!」と思った。

ツグジンさんと私

ツグジンさんの写真は↓こちら。ちゃんとライティングを作り込んで、モデルさんに指示出して、作品として完成されている。ほぼ毎月、撮るために来られる。

私が撮った写真は↓こちら。隣に居合わせたオネーサンの「スナップ写真」というか隠し撮りに近い。ほぼ毎週、飲みに来たついでに撮る。

お店でツグジンさんと初対面&企画会議して「やろうぜ!」と言う話になったのが2021年3月18日だった。

毎月25日くらいまでに提出すれば次の月初から放送できるところ、流石に1週間では難しいので、4月中旬の完成を目指してゆるりと制作に着手した。

デモ音源を4通りを作って選定

それなりに日本酒好きを自負する私でも、日本酒の味を言葉で表現するのは苦手だったりする。だから、普通の人に「どんな曲が良い?」と聞いて言葉で答えるのは難しいと思う。

生業としてプロトタイピングやっているので、まずは具現化してから話をする。叩き台として4通りのデモ音源を引っさげて企画会議に臨んだ。けっこうワクワク案件だったこともあり、我ながらモチベーション高い。

・DEMO1:しっとり歌いつつ連呼するタイプ
・DEMO2:しっとり歌い上げるタイプ
・DEMO3:勢いで店名を連呼するタイプ
・DEMO4:楽しげにハネつつ連呼するタイプ

この時点では、コードとメロディだけの荒い音源である。どうやってメロディが浮かんでくるのかは、自分が歩く手順を説明できないが如く説明できない。たぶんインプットが大事。

普段やってるバンドBlue Mondayの場合は、コードやメロディーの断片が飛び交いながら、混沌としたデモ音源から固まってく。それはそれで面白い。今回は〆切もあってスルッとDEMO1がそのまま決まって最終形にも反映いただいた。

感情に刺さるポエムは書けないけれど、動画制作におけるテロップのおかげで、シンプルな言葉選びの熟練度は上がったと思う。

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制約とバランス

上記DEMO1に決めて作り込むのに、様々な判断があった。依頼者がいて、再生される環境の考慮があって、その世界のセオリーがあって、様々な制約に折り合いを付けながら落とし込む意味では、けっこうデザインっぽいなと思ったりもする。

プロモーションとブランディングのバランスがある。プロモーション観点では、とにかく店舗の名前を連呼するキダタロー先生方式が印象には残るけれど、それが店舗らしさを反映しているのか?みたいな観点もあって、選曲された。

再生される環境の考慮に関して。生活音に埋もれずに聞こえることが大事になってくるので、環境音を録音して周波数分析かけてみた。(そうしなくても分かるけど)高音の方が埋もれず抜けそうとわかる。

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ただ、むやみにキーを高くしても声に無理が出るし、勢いで扇動する印象になる。自分たちの表現したいお店のイメージと合っているか?に立ち戻りつつ、バランス取りながら決めることの連続だった。

情報量とテンポにもトレードオフがある。例えばしっとりしたイメージを出すにはテンポを遅くしたいけれど、1分に乗せられる情報は減る。逆に急いで詰めると早すぎて伝わりにくかったりもする。ツグジンさんが追加した歌詞も含めて「どこも削るところがない」という判断から逆算してアップテンポになった。

もはやデザインではなく自己表現として、「クライアントの要求や効果で言えばコチラだけど、俺たちが表現したいのはコッチだ!」という判断もあった。

大蔵海岸でアレンジ

上記の事は熟考したと言うよりも、大蔵海岸に集まってほぼ1日で決まった。特に「俺たちはこれを表現したい!」の部分がアレンジに詰まっている。商店街に流す曲としたら、DEMO1のままの方がストレートで伝わりやすく、単調な繰り返しによって「刷り込み」も効いている。そうでなく、「もっと曲としてカッコよくしたい」気持ちを、コード進行やキメに盛り込んだ。

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私の希望「ツグジンが撮ったデモの食い気味アレンジが良かった」と、ツグジンさんの希望「ちょっとジャズっぽいようなオシャレテイストを入れたい」を取り入れて、助っ人の徳永さんがAメロとBメロに対比を付けてコードを付けてくださった。

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Aメロは代理コードのセブンスをふんだんに取り込んで、「お気軽」の斜め上を行くオシャレ雰囲気になっている。カタルシス崩壊するかのように、Bメロがストレート路線でノリで押す。両者が不自然にならないコードで繋いで仕事が丁寧。もともと単調な同じコード進行だったのに、メリハリが付いた。

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いろいろ決まって良かったところ、海岸でアンプを鳴らしていると注意されてしまった。徳永さんのお宅に場所を移して、そのままの流れで宅録することになった。

普通の宅録と言えば、MTRやDAWを使ってパートごとに録って重ね合わせるところ、楽器と歌で2本のマイクを立てて一発撮りをミキシングするIron Maiden方式をとった。突然の展開で、コンプを通さないとベーシストは心許ない。

コーラスこそ後付けしたものの、流行りのFirst Takeのような粗削りで勢いある仕上がりに満足している。5月から水道筋商店街で1日に50回くらい流れるのが今から楽しみ。

作詞:オダテツ + ツグジンさん追加
作曲:オダテツ + 徳永さんアレンジ
歌:ツグジンさん
ギター:徳永さん
ベース&コーラス:オダテツ

なかなか良いチームワークだったので、世の中が良くなれば和inさんで打ち上げたい。そして、その時には「音楽でメシを食う」と言いたいのでよろしく(以下は写真でメシを食った時の写真)。

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追記:音源はオーディオ再生できるCD形式だったので、44.1kHz、16ビット、ステレオでこんがり焼きあげて納品したら、カレーいただきました。音楽でメシを食った!

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