ゾンビにラップする人権を!

「ファーック…」
 私はタイピングを続けながら、再びこのFワードを呟いた。今日だけでもう5億回は言っている。

 日付が変わり、ようやく会社を後にする私。
 相変わらず、道はゾンビで溢れていた。
 彼らは市民権もある、日本の新しい労働階級。
「世も末だな…」と思うが、それは今では少数派だ。

 慣れた足取りで群れを避ける私。
 だが、その時だ。私はふと足を止める。
 ゾンビが集まっているのだ。そして、その中心。
 そこでは、一人のゾンビがゾンビを観客にラップを披露していたのだ!
 
「YO!何も言わねえ。この不安定!どうしたよ腐れ!虚無僧かこのコミュ障!」

 そのゾンビはヘッドホンにトレーナー姿、頭の食欲制御電極からは火花が散っていた。

 なんだこのゾンビは。だが、そう驚く私は彼と目があってしまう。
 すると、突然、彼は私に向かってダブルファックサインをした。

「YO!そこの嬢ちゃん。俺の名はイレヴン!ラップで人間性を取り戻すゾンビだ!」


【続く】

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