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自分の答えを持っている人は、優しくて、そしてとても強い

※伊坂幸太郎さんの著書、重力ピエロの内容に触れていますので、読んでいない方はご注意ください※


「俺はピカソが死んだ日に生まれた」

これは、伊坂幸太郎さんの重力ピエロに出てくる、春という男の子のセリフの一節です。

春は、この本に出てくる兄弟の弟です。
特殊な事情で生まれた子供で、父親が別にいます。

様々な才能に溢れ、中でも絵がとても上手だった彼は、小学生の時分に賞を獲ったことで特殊な事情について他人から中傷を受け、傷ついて絵を描くのをやめてしまいます。
※春自身はこの時点では父親が違うことを知りませんが、特殊な事情のため周りはそれを知っており、要は血が繋がってないから一人だけ才能があるといったとんでもない嫌味を言われた、というものです。

事情を知ってからはさらに、自分の特殊な絵の才能がどこから来ているものか恐怖し、さらに絵から遠ざかっていきます。

しかし、高校生の時に育ての父親が、「ピカソが死んだ日に春は生まれた。」と教えてくれたことをきっかけに、「俺はピカソの生まれ変わり」としてまた絵を描き始めるようになったのです。

本ではさらっとした記述なのですが、悩んで苦しんでいる息子に対して、この答えを教えてあげられるお父さんって最強だなと思いました。

このお父さんは、普通の人なら答えに窮するその他の場面でも、穏やかに優しく、とても強い答えを相手に伝えます。

春は実は、母親が強姦にあって生まれた子供です。なので、春の父親は強姦魔です。

そのことを知っている女性に「みんななんで産んだりしたのか不思議で仕方ないといってますよ」と言われた時も、彼はとても優しく穏やかにこう答えます。

「親が生まれてくる子供に対面するのに理由なんてないですよ。」

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本を読んだのは10年以上前ですが、
自分で悩んで考えて、自分の答えを持っている、確信がある人は、穏やかで優しくて、そしてとても強いんだなと思ったのを覚えています。

以前に下記の記事でも書いたのですが、伊坂さんの本には、確信を持っている人が多く出てくるような気がします。

私は10年以上前に重力ピエロという本に出会い、今なお、この本に出てくる父親のような人間になりたいと思っています。

一貫して、確信があって穏やかで優しく、そしてとても強い人です。

この父親の優しさは、全てのことに対して自分で考えて自分なりの確信を持っていてるからこそ出てくるもの。

この父親の強さは、自分で考えて自分で決めた答えだからこそ、際立つもの。

不安なことがある時、何か答えをもらいたい時、こんな強くて優しい答えがかえってきたら、多くの人が救われることだろうと思う。

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働く上でも、自分なりの答えを全てに対して持つことってとても大切だなと、社会人になってから特に思うようになりました。

全ての物事に対して確固たる確信や答えを持つことは難しいけれど、自分が関わっている領域において、自分が少しでもあれ?と思ったことに関しては必ず「なんでだろう?」を最後まで考えるようにしています。

それは別に、絶対的に正しい答えでないといけないわけではないと個人的には思っていて、

ある種、これは自分の仕事だという責任感を持つための作業でもあります。

自分が少しでも関わっていることにおいて、「なんでこうなの?」と聞かれた時に「わかりません」と答えるのはちょっとダサいな、という私の小さなこだわりのようなものです。

例えば昔からの慣習で、AでもBでも本当にどっちの方法でも良さそうだけど、Aってやり方が決まってるものがあったとして、
どんなに調べても正解はどこにも書いてないんですが、妄想を想像を張り巡らせて、きっとこうゆう事情があってこうしたんじゃないかな、確かにBだと昔は大変だったのかも?なんて考えてみたりする。

後輩ができて、なんでこれってAなんですか?って聞かれた時に、

「昔からAでやってるから」

「多分こうゆう事情があってきっとAになったんだと思うけど、Bでも問題はなさそうだからBの方が今後やりやすいなら変えてもいいと思っている」

こう答える先輩が二人いたら、私は間違いなく後者の人についていきたい。

なんでこうしたの?と聞いた時に、どんな理由であれ、確信を持っている後輩と働きたいとも思う。

自分の頭で考えろ!とかそこまで過激な話ではなくて、どんな仕事であれ、自分がやりたい仕事でなくてもなんでも、
仕事として自分がやる以上は、自分なりの答えを見つけながら進んでいった方が、楽しいしきっと周りにいる人も幸せなんじゃないかなって思うのです。

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仕事においても、人生においても、些細なことでもなんでもいいから自分なりの答えを見つけるようにしておくと、ちょっとずつ確信の強い人間になれる気がします。

私の考えが正しい!!!とかでは決してなく、
私はこう思うんだよなっていう道しるべみたいなものが、できていく感じがするんです。

そうゆうのがあると、自分の軸がブレないから、逆に人の意見をすんなり受け入れられるようになる。

そうゆうのがあると、自分が迷わないから、人を導いてあげる人間にもなれる。

なので私は、自分の答えを見つけることをとても大切にしています。

そのためには教養も必要だし、いろんな人と出会うことも大切だし、季節を慈しんだり、毎日の生活を大切にしたりすることもきっと大切だと思う。

そもそもピカソのこと知ってる教養がないと、「ピカソが死んだ日に生まれた」なんていうとんでもなくおしゃれな答え、導き出せないですしね。

自分の答えを見つけるために、またいろんなことをやってみようと思う。
すごくいい循環なんじゃないかな、と思ったりします。

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強い人は、とても穏やかで優しい。
優しい人は、とても強い。

だから、私は強くなりたいし、そして優しくありたい。

強くて優しい答えを、誰かにあげられるような人間でありたい。


それではまた。


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