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50代からのグレーゾーン(第22回)

隙だらけの私に、彼氏ができた。
ストーカー事件の時に、私を救出してくれた先輩だった。
見た目はともかく優しかったので、最初の頃は特に問題を感じなかったが、知れば知るほど私はその人を恐れるようになった。
後輩への年功序列で高圧的な態度や、
DVな父親から守ってくれた母親を慕っているのに、結局父親のようになってしまうのではないかと思う言動が時折垣間見られた。

そして、案の定、私の男友達の家に乗り込み賃貸アパートの壁に穴を開けるという事件が起きた。
本当にただの友達でしかないのに、勘違して怒り、私の静止を聞かず、友達の部屋の薄い壁を素手で殴りつけた。壁にはぽっかりと穴が空いてしまった。
いつか私も殴られると確信し、私はその人から離れた。

その後、別の人と付き合い始めるのだが、その始まりはとても美談とは言えないものだった。

最初彼は、私の美人なクラスメイトと付き合っていたが、ある日、彼女の浮気現場を思い切っきり目撃してしまったらしく、半べそかきながら私に電話してきた。
結局彼は、美人なクラスメイトと別れ、壁に穴を空けられた男友達と私との3人で遊ぶようになった。
そのうち、私たちは自然に付き合うようになったが「私のどこが好き?」と問うと「マメなところ。洗濯物畳んでくれるところ」という答えが帰ってきた。
そして、極めつけは「女の子は顔じゃないんだね」という一言だった。
美人の元カノの写真やプレゼントを大切に持っている彼に、内心気が気ではなかった。

それでも、彼と同じサークルだったこともあり、人生で1番華やかで和らいだ時間を過ごしているはずだった。

それなのに、私は時折、酷い不安や被害妄想に取りつかれた。
大渋滞にハマった合宿の帰り道、どうしてもトイレに行きたくなった私は車から降りて、ガソリンスタンドのトイレを借りた。
車はちっとも進まないし、進んだとしても車を停めて待っていてくれるに決まっている。
なのに私は、「置いていかれる」という妄想に取りつかれ、大泣きしてしまったのである。
酒癖も悪かった。結構な確率で泣き酒になるのだ。普段無意識に抱いている「棄てられる」という妄想が、お酒によって顕になるらしかった。

それでも私は若さ故に無知だった。
普段は、自分の努力のおかげで、高校までの私より強く逞しく、そして”普通”の女性になったと自負していたのである。

恐らく周囲に女性が少なく、大学という自由な場所だったのが勘違いの原因だろう。
社会に出てしまえば、また狭苦しい世界に逆戻りし、自身と闘うことになるのである。

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