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#0148 「何をするか」よりも「なぜするか」~公民連携フォーラムでの様々な学び~

こんにちは。釧路出身の小田原です。
昨日は「公民連携フォーラム~公民連携の四半世紀の解雇と今後の展望~」という催しに参加してました。

公民連携で活躍する産官学のスターたちが登壇する大変貴重な機会でしたので、仕事を上手く調整し(電話・メールは絶えませんでしたが…)、参加してきました。

こうしたフォーマルな催しだと、当たり障りない教科書的なことを話して「シャンシャン」で終了することが多いのですが、昨日は現場で活躍する方々が集まった催しということもあり、解像度の高いリアルな話と、心に残る言葉が沢山聞けた、大変有意義な時間でした。

公民連携でよくありがちな、いつのまにか手段が目的化してしまうことや、公民連携に限らず、ビジネスパーソンとして、また一人の大人としても日頃の振る舞いに対する教訓のようなものも得られたので、突貫工事ですが、記憶が新鮮な内に書き留めておこうと思います。

○進化する公民連携

1999年のPFI法施行から25年が経っているわけですが、この四半世紀の歴史を振り返ると、変わらないと言われる日本社会においても着実に進化を遂げているなと実感しました。

最初の誕生こそ、いわゆる「ハコモノ」から始まったわけですが、サービス購入型から混合型へ、震災復興・インフラPPP、課題解決型から課題突破型へと、その時代の要請に応じながら変化を遂げてきた歴史を振り返りました。

現在もとっかかりとしてハコモノPFIから着手する例が多いのは確かですが、最も初歩的な案件ともいわれる公営住宅PFIも侮るなかれ。

徳島県の12団地・600戸を3団地・300戸に集約する大規模再編においては、高層化→津波避難場所指定(防災強化)、再編で生じた余剰地に定借で福祉施設(サ高住・デイケア施設)を誘致して自治体が地代収入を得て稼ぐまちづくりに転換。

佐賀県三養基町の定住促進住宅も小規模ながら集合住宅と児童遊園や多目的広場を併設することで若い世代を呼び込み、とくにUターンが増加。佐賀県内で唯一人口が増加した町になったそうです。

純粋公共事業では単なるハコモノ整備で終わっていた事業でも、公民連携の手法を導入し、一つの事業で複数の課題を解決し、より公的サービスの質を高め、マチの価値を高めていくことができる。

これこそが公民連携の基礎なのではないのかと思いました。

また、香川県善通寺市をはじめとする1市2町学校給食センターPFIの事例も、定番分野と言われる学校給食センターでも、「一つの市町村に一つずつ学校給食センターを整備・運営するのは非効率」という発想から生まれた楽器的事業だと思います。

これからの時代は人口が減少し、財政も縮小していきますし、先般、話題になったような消滅可能性自治体も出てくるでしょう。そうした未来を想定すると、基礎自治体単体で公的サービスを行うことに非効率を飛び越えて限界がくると思います。まさにそれを見越した複数自治体による広域連携による公民連携であると思います。

広域連携というと、これまではゴミ処理や火葬場が主な領域でしたが、今後はもっと裾野が広がってくるのではないでしょうか。

岩手県紫波町のオガールプロジェクトや、大阪府大東市のmorinekiプロジェクト、岡山県津山市の地域密着型ローカルスモールコンセッションなど、公民連携の教科書に載る素晴らしい事業も生まれてきました。

昨今でも、トップダウンで公民連携が目的化してしまって、公民連携と言う衣を着た公共事業が存在するのも事実ですが、より良い地域社会づくりのために有効な手法であることは確かであり、また、この手法の活用には、定型・定式はありません。

その為には、官民はじめ、関係者の知恵と熱意を集積させ、事業特性や地域ニーズに応じてオーダーメイドのスキームを創造して磨きあい使っていくことが求められると思います。

そして、その積み重ねで公民連携は進化をし続けるものですが、それを支えていくのは人と人との繋がりであり、信頼関係であるなとつくづく思います。仕事の良し悪しは人事で決まるとも言いますが、官民でどれだけ深い信頼関係を作り、それを基礎としてどれだけ本気で向き合えるかが鍵になってくるのではないでしょうか。

○オガールから始まった”まちの”再編集

公民連携に世界に限らず、全国的に有名な岩手県紫波町のオガールプロジェクト。いつもこのプロジェクトのお話を聞くと胸が熱くなるのですが、昨日も釘付けになってお話を聴いていました。

このプロジェクトの中心でコミュニティデベロッパーとして活躍された岡崎正信さんが先般のテレビ番組でも仰っていましたが、官民共通の目標を「投資したいまちにしていく」こととし、「不動産価値の上昇」にKPIを設定したことで、「公共目的の達成」と「民間の経済開発」の両立が図られ、数えきれない紆余曲折がありながらも、官民ともブレずに事業を進めてこれたのだと思います。

そして民間に必要なのは「パブリックマインド」、行政に必要なのは「プライベートマインド」、両者が立場を互いに領空侵犯するようなマインドも必要です。公も民も境目はないのです。力を合わせて、目標に向かうのです。

まさに「ローマは一日にして成らず」

住民、議会、マスコミ、多方面から批判を受けてスタートをしたことは有名ですが、住民参加型のプロセスを地道に行っていくことで、住民がプロジェクトに関心を持ち、我が事にしていくことで「まち」に対しての愛着が醸成されていくことで、支持を得、まちに対しての諦めや閉塞感も打破していきました。

「だって紫波町だもの」「紫波町はなにもないから」と町民の方々はよく口にしていたそうです。

このセリフ、うちのまちでも聞くと思った方々も多いのではないでしょうか。我が故郷・釧路も同じです。

もの凄い熱量・カロリーと時間が必要かもしれませんが、官民のブレない目標設定(KPI)、誰が何をやれば良いかで手法を細かに決めていく、住民をプロセスに参加させて我が事にしていく、こうしたことで「うちの町には何もない」「行政が何もしないからダメ」といった閉塞感・他人任せの空気を変えられるのだと思います。

その為には、目に見える結果が必要です。紫波町の場合は、公民連携による賑わいの創出や地価向上が、住民を含めたマチのステークホルダーが実感する結果なのだと思います。

これをやり遂げるには、前章でも記載したように、人との繋がり・縁、そしてパッションが必要です。

見た目のマチが変わっただけでなく、住民の心も変わったという意味で、まさに”マチの再編集”ですよね。
書いている最中でも胸が熱くなります。

○混ざり合うことで生まれる新たな価値

大東市の市営住宅再編事業も、エリアの価値を高める(不動産価値を高める)ことを念頭に①市営住宅の戸数を減らしつつ②入居者の生活の質をあげ③誰も見向きもしないエリアを豊かにすることを目標にしています。

オガールプロジェクトも同様ですが、資金調達に大変苦労されていて、金融機関との千本ノックでリスクを極小化していったことが、筋肉質なプロジェクトに仕上げていったという印象が強いです。

それをお一人で入江さんが担われたというので感服しました。

このエリアは、近寄っちゃいけないと言う人がいるほど、暗いイメージのあるエリアだったそうですが、そこを変えたのは、境目をなくすということだと思います。

かつては市営住宅に隣接して公園がありましたが、完全に両者が分断されていました。

そこを敢えて境目をなくし、公園を広場化して、広場を囲むようにして市営住宅を配置しました。ベランダをあけると緑の広場がみえ、住民たちの顔と顔が向き合えるようなそんな雰囲気を写真から感じました。

周辺には企業誘致などにより、働く場所や店舗なども増え、エリアで生活が完結できるようになり、「ここに住みたい」という問い合わせが絶えないそうです。

これも金融機関との千本ノックにより、空室リスクを極小化するために様々な工夫を凝らした賜物ではないでしょうか。本当に素晴らしいと思います。

○最後に

真の公民連携を行うには、前例踏襲からはみ出る必要があります。
そうするとリスクが生じます。
リスクを恐れていては機会損失を招きます。
それもリスクです。

リスクは官と民、そして民の中でも業種や業態・規模に応じて適材適所でリスクテイクしていけば、十分対応できる道が見つけられます。

そのためには官民の信頼関係を基礎に知恵を出し合って、ぶつかり合って、混ざり合う必要があるのではないかと思うのです。

公民連携の衣を着た公共事業は、補助金ありきで議論を進めてハコモノを作る計画を策定し、申し訳程度に官民対話を入れてきたりしますが、重要なのは、補助金で何をするかではなく、なぜするか、なんのためにするかです。

それがないと、官民共通の目標を設定することができません。
それは互いにリスペクトしながら伴走していくうえで必要な信頼関係が構築できず、結局、発注者の行政と受注者の民と言った関係になり、従来の公共事業と何ら変わらなくなってきます。

重要なのは「何をするかではなく、なぜするか」ここが、出発点ではないかと強く感じました。

ふるさとでもこうした取り組みができると良いなと思います。



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