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台所作文

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31文字以上の日常と空想と想像がごちゃごちゃと
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2021年2月の記事一覧

まつ毛の上に

言葉が音にのらない夜は まつ毛の上にお月さんのせて 口をすぼめていればいい 胸に両手をのせ…

苧環
3年前
14

ボクはここ

楽しみ方は人それぞれ 受け取り方も人それぞれ ボクはここ ボクはここ 影を見るか 日向を…

苧環
3年前
10

まっさらな曲

キミが好きだと言っていた曲 何気なく聴いてみた タイトルもアーティストも 知らないわけじゃ…

苧環
3年前
12

キミのまち

キミの嫌いなあの街には 今頃強い潮風が吹いているだろう 板塀続く舟宿や ペンキの剥げた釣り…

苧環
3年前
7

神様なんて

ここにかけてもいいかと尋ねたのはキミ そんなことは忘れたと頬を軽く膨らませ いや そんなこ…

苧環
3年前
9

悪魔の子

悪魔に好かれた少女は悪魔ですか 悪魔に嫌われた少年は天使ですか 誰も少女を見ようとしない …

苧環
3年前
16

ふれもみで

置いて行かれている気がするって いったい誰に、どんな風に 置いて行くも行かないも いったい誰と歩いて来たの? 置いて行かれている気がするって 世間って誰、どこにいるの? 世の中ってなに、なにをしてるの? 触れたことも見たこともない だから オバケみたいな、怪獣みたいな 怖いものに思えてくる? 手の届かないお月さまだって 目にはしっかり見えているし 歩いても歩いても ずっとついてきてくれる そうあまりにも大きいから 世間って、世の中って お月さまより大きなものなの?

熱の余韻

今の気分に名前を付けてともし頼んだら どんな名前をつけてくれる? 穴が空いたトートバッグ…

苧環
3年前
6

言葉にはならない想い抱えてた確かにここにそう昨日まで 終わったと気づいてしまう悲しみと痛…

苧環
3年前
9

桜の葉陰で

桜はいいな と君が言う 生を受けた場所でそのまま生を終えられるからと 風は見えないのかな …

苧環
3年前
8

記憶の底からこんにちは

高村智恵子が好きだった。かなり昔。 父の本棚に並んでいた本の中で一際目立っていたのが「道…

苧環
3年前
8

街から花屋が消えた日に

木目の家具が好きだと言った 温もりを感じられるからと 並んだ椅子の座り心地確かめるように …

苧環
3年前
9

サヨナラアナタ

瞬間湯沸かし器なんて言って、どれぐらいの人がわかるんだろう、今。 キッチン、洗面所、お風…

苧環
3年前
11

何もいらない

空気を孕んだまましなやかに動く指先をただただ眺める 視線を落とした睫毛の先のその影に気づく 欲なんて知らないふりをした横顔と すべての光を仕舞い込むような目と そこに掛かる前髪と すっと口角をあげゆっくり繰り出される音の中に潜む地熱のような温かみと 何を見 何を思い 何を見据え 語り合おうなんて思わない 微かに上下する喉元や 三本の指でくられる本の頁や そのひとこまひとこまをただただ拾い集め、時折り瞼の裏で連続再生する。 それだけでいい。 いいえ それがいい。