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町田|酒とおばんざい いそいそ|町田に灯すつながりの明かり


大勢のお客さんでにぎわっている、町田の居酒屋「酒とおばんざい いそいそ」。活気あふれる店内には、どこかあたたかさが漂っています。代表の小林優樹さんにお話を伺って見えてきたのは、人とのつながりを大切にする新しいリーダー像でした。

■「酒とおばんざい いそいそ」誕生

「酒とおばんざい いそいそ」は、2024年9月に町田にオープンした居酒屋です。

小林さんは元々は消防士だったという異色の経歴。消防士をやめた後に、三軒茶屋の居酒屋で4年半ほど働き、日本橋店、名古屋店を経て、幼なじみの影山廉さん、浅利真紀さんと共に地元である町田に店を構えました。

(小林さん)
「町田の飲食店で働いていた浅利と、いつか地元でお店をやりたいねと話していました」

「酒とおばんざい いそいそ」代表の小林優樹さん

ビールの醸造所であるブルワリーで働いていた影山さんとの再会も、大きなきっかけになったようです。

(小林さん)
「僕が名古屋にいた頃、岐阜のブルワリーで働いていた影山に醸造したてのビールを飲ませてもらいました。そのおいしさに衝撃を受け、できたてのビールを町田の人にも飲んでもらいたいと思いました」

3人で始めた「酒とおばんざい いそいそ」は、店名も印象的です。

(小林さん)
「店名は最後まで迷いました。ワクワクという名前も考えたのですが、なんか違うなと思っていたところ、いそいそという言葉に出会いました」

ロゴマークもかわいく、浮き足だったイラストが楽しげです。

「酒とおばんざい いそいそ」のロゴマークをあしらった名刺

■定年退職のない働き方を

小林さんが居酒屋を始めた経緯には、もう一つ大きな転機がありました。

(小林さん)
「祖父が定年退職をした後にうつ病になってしまいました。お金だけ持っていてもダメで、生きがいや人とのつながりが大切だと気がつきました。定年退職のない仕事をしようと思い、居酒屋を始めました」

そもそも消防士だった小林さんですが、飲食に転向したのにも切実な思いがありました。

(小林さん)
「消防士は命に関わる仕事です。その前の段階である飲食で、人に貢献したいと思いました。僕がいることで周りの人にとっても、働きがいのある環境になればうれしいです」

■確かな腕でつくる創作和食

三軒茶屋、名古屋と腕を磨いてきた小林さんが作る創作和食はどれも絶品です。
お通しの厚揚げは、豆腐の旨みがジューシーにあふれる極上のおいしさ。

(小林さん)
「厚揚げは、名古屋の「くすむら」さんの豆腐を取り寄せて作っています。いろんな豆腐を試しましたが、「くすむら」さんの豆腐が一番ですね。豆腐の甘さと旨みが凝縮されています。密度が高いので、揚げても崩れません」

「おばんざい盛り合わせ 2人前」は看板メニューのひとつです。

「おばんざい盛り合わせ 2人前」(1,200円)

お盆の上の小鉢に盛られた6種類のおばんざいは、1つ残らず間違いなしのおいしさ。個性的な組み合わせなのに素朴で、毎日でも食べたいくらいです。

〆の名物は「カツサンド」です。

「カツサンド」(1,300円)

(小林さん)
「名古屋で働いていた頃から人気だったカツサンドを改良しました。高座豚に予熱で火入れをすることで、柔らかく仕上げています。お肉をメインにするため、パンは薄い8枚切りを使っています」

カツは柔らかくて、肉の旨みが格別のおいしさです。パンの薄さで肉の厚さがより際立ちます。絶対に食べて欲しい〆の一品です。

デザートに「母さんのティラミス」という気になるメニューがありました。

(小林さん)
「母が作っているティラミスです。一緒に働いています」

店内に花を飾っていた女性がいたのですが、なんとその方が小林さんのお母さんでした。

(小林さん)
「影山のお母さんも仕込みを手伝ってくれていますよ。本業は看護師さんなんですけど、手際がとても良いのです」

影山さんと向かい合って仕込みをしているのが、影山さんのお母さんと知りさらに仰天です。

左から影山廉さん、影山さんのお母さん

「高齢化社会に適したこともやっていきたい」と話す、小林さんの定年退職のない働き方は、日本の社会にとって希望の光です。

■天才調香師がつくる奇跡のお酒

カウンターに並べられためずらしいお酒

お酒を担当しているのは、影山さんです。大学院で生化学や食品化学を学んだあと、香料メーカーに勤務し、その後、ブルワリーなどを転々としていました。

(小林さん)
「影山は研究者です。ものづくりのパッションが他の人より100倍は強いです。誰も考えないようなことをします」

影山さんにおすすめのお酒を尋ねてみたところ、研究者ならではの話が飛び出します。

(影山さん)
「アサヒスーパードライに副原料を足して、アレンジビールを作っています。例えば白ビールタイプは、何種類ものスパイスや柑橘系のフレーバーに、秘密の原料も加えて濁らせています。この調合は僕しか知りませんし、こんな調合をしているのも僕だけだと思います」

お酒の説明をする影山廉さん

アレンジビールは、日本に一つだけの影山さんしか作れないビールです。将来的には、自分でビールを作ることも目指しているそうです。

(影山さん)
「最初はスタンダードなスタイルのビールをおいしく作りたいです。その後、自分にしかできないビールが作りたいですね」

現在、熟成中のお酒を見せてもらいました。

オーク樽で熟成中の焼酎

(影山さん)
「焼酎に削ったオーク樽を漬け込んでいます。元は透明だった焼酎も色が付いています」

焼酎にオーク樽を漬け込むという発想は、いったいどこから湧いてくるのでしょうか。蓋を開けて鼻を近づけると、美しい琥珀色の焼酎からウィスキーの香りがしました。

(影山さん)
「名前は山崎respect 角ハイボールです。山崎ウィスキーにリスペクトを込めて名付けました」

誰も思いつかないような発想で作られているお酒ばかりで、影山さんは調香師であり天才研究者です。

■個性派ぞろいの食のスリーピースバンド

「酒とおばんざい いそいそ」のメンバーはそれぞれ個性が際立っていて、さながらスリーピースバンドです。

小林さんがカリスマ的ギターボーカルだとしたら、影山さんはお酒でリズムを加える天才ドラマーでしょうか。そしてもう一人、おいしい音楽を奏でるのに必要なのが土台を作るベース、浅利さんです。

インタビュー中、黙々と仕込みをしていた浅利さんは、長年鮮魚を担当してきた料理人です。

仕込み中の浅利真紀さん

(小林さん)
「浅利はずっと魚料理店で働いていたので、魚の扱いがよく分かっています。それに毎日の営業も効率よく円滑に回してくれています」

3人の幼なじみで始めた「酒とおばんざい いそいそ」は、彼らのフランクな関係がお店の雰囲気を作り出しているようです。

左から浅利真紀さん、小林優樹さん、影山廉さん

■町田に灯すつながりの明かり

地元に根を下ろした小林さんにとって、町田はどんな街なのでしょうか?

(小林さん)
「町田は、人が多くてパワフルな街だと思います。町田駅で乗り降りする人は2位らしいですよ」

町田駅は1日に乗り降りする平均の人数が、2022年度の小田急小田原線の駅で第2位でした。人気の街であることが伺えます。

(小林さん)
「来てくれるお客さんは、みんな良い人です。若いお客さんはもちろん、会社帰りのサラリーマンやご夫婦も来てくれます。50代、60代の方も来てくれますよ」

最後にお客さんへのメッセージを尋ねたところ、小林さんは「ステキな時間を過ごせるように、誠心誠意がんばります」とはにかみながら答えてくれました。

町田にともる「酒とおばんざい いそいそ」のあたたかな明かりに、今宵も誰かがいそいそと向かっていることでしょう。


【酒とおばんざい いそいそ】
〒194-0013
東京都町田市原町田4-5-14 アムールTOMO101


いそいその皆様、貴重なお話しをありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

取材・文:CONOMACHI STORIES編集部