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雑記:高円寺の情景〜現実世界のワンダーランド〜

「でも、狂ったひとのとこへなんて行きたくないわ」とアリス。
「いや、そういうわけにはいかんね。このへんじゃ、だれでも狂ってるんだ。おれも狂ってるし、あんたも狂ってる」
「あたしが狂ってるなんて、どうしてわかる?」
「狂ってるさ。でなけりゃ、ここまでこられるわけがない」

『不思議の国のアリス』
(ルイス・キャロル 矢川澄子訳)

去る4月30日、高円寺に引っ越してきた。
20代の半ばから30代の半ばである現在に至るまで、自分が普段遊びに行く街といえば、いつでも高円寺か神保町のどちらか。年中遊びに行くならいっそのこと住んでしまおうということで、10年近くに渡る憧れをついに実現させた次第。

それまで自分自身が抱いていた高円寺に対する印象といえば、個性的で変わった街だなあというものだったが、自分がこの街の住人になってみて、高円寺という街は「個性的で変わっている」どころでは無いことに気がついた。


駅前の高架下。朝方、酔漢たちがここで管を巻いていたり歌っていたりする。


住民の視点から見た高円寺の印象を一言で表現してしまえば、この街は正に「現実世界のワンダーランド」である。
冒頭で引用した「不思議の国のアリス」のチェシャ猫のセリフの通り、狂っていなければここにたどり着くことはできない。
高円寺に足繁く通う人は狂っているしそこに住む人はもっと狂っている。
道行く人は皆サーカスかチンドン屋の様な奇抜な格好をしている。因みにロン毛率が極めて高い。つい最近も、駅前で劇団四季のキャッツみたいな格好をしている人(念の入ったことに顔に猫のメイクキャップまでしていた)を見たし、駅のホームではタワシを散歩させている人を見た。
警察官が職質したくなるような、愉快で怪しげな人物が至るところでうろうろしているのである。


駅前バス停の柱。この柱だけではなく、高円寺駅前バス停の全ての柱があたかもクラブかライブハウスの壁の様にステッカーで覆われている。

この街では奇抜な服装・思想を身に着けていても後ろ指を指されることが無い。なぜなら高円寺は、他の街や一般社会にいたら絶対に浮いてしまうような奇人たちの吹き溜まりであるから、どんなに過激な生き方をしていても誰も咎めないし何も言わない。私の様にモノの考え方や感じ方が人様よりズレている人間でも、ここではありのままでいることができる。

ステッカーで彩られた柱。左上の中国語のステッカーが一際目を引く。「?重啓是誰?(再起動するのは誰だ)」

20代の時から憧れていた高円寺だけれど、今にして思えば若い時に高円寺に引っ越さなくて本当に良かったと思う。レコード屋に古本屋、古着屋に骨董屋、毎日通いたくなる台湾料理屋、東南アジアの品物を扱う雑貨屋等等…高円寺には、人生を楽しく彩るのに必要な店ならなんでもある。そんな街に金銭感覚が未熟な若者が住んでしまえば大変だ。あっという間に破産してしまう。
高円寺への引っ越しを検討している人には声を大にして言いたい。もしこの街に住むなら、分別の備わる年頃になってからの方が良いと。

ステッカーと絵で彩られた街の壁。ここにも中国語のステッカーが貼ってある。

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