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SixTONES「Imitation Rain」、転調がすごすぎる

平熱、もがき、切なる願い、大きな決意が込められた曲

遅ればせながら、SixTONESのデビュー曲「Imitation Rain」の話。X JapanのYOSHIKIさんが楽曲提供したこともあり、2020年に大きく話題になりました。語るべきことはたくさんあるけれど、この曲の構造と転調がすごいということに今更気付いたので、ぜひ言いたい。

この曲、2番サビ以降に何度も転調しては元のキーに戻ってくる。しかも、構造的にはブリッジ(Cメロ)とサビだけで進む。この2パターンのゾーンを繰り返すけれど上げ下げの転調をしているので、同じメロディーがもがき、切実、決意を伝えてきます。

後半部分の転調ラッシュ

この曲を貫通するキーはCm。ピアノの音が切なく鳴り始めて、キックとギターがダークでぎらつくヘヴィーなイントロ。この時点で静と動の対比で心を鷲掴みにされてしまう。イントロ→ヴァース(Aメロ)→サビ→イントロ2→ヴァース(Aメロ)→サビと、Cmのまま曲は進む。そして、サビの余韻を引き継いだブリッジ(Cメロ的存在)「Dancin in the rain ……」へ。ちょっとハスキーな声が魅力的。

その後、イントロのヘヴィなギターのフレーズにのせて、独白系のウィスパーなラップ。田中樹さんのラップはすごく好きです(ここでは割愛しますが…)。ワードやセンテンスがぽつりぽつりと漏らされるので、聴き手も想像力を働かせ、物語に余白が生まれます。サウンド的には、ずっとCm。これでもかと見せつけています。

その後!
直前のブリッジ(Cメロ的存在)を2つキーを上げて展開!さっきのと同じメロディーなのにこのさりげない転調が、これから起こる変化を予兆させます。意味深なぞの高揚感。そして、このセクション最後のコードB♭から自然に2つキーをあげて、ピアノソロへ。

ピアノソロは、もとの調Cmで高音のピアノがサビのフレーズを演奏。アルペジオを1音1音丁寧に粒立たせ、まるで雨粒が心に少しずつ染みていくような感覚。
前のセクションからキー的には下げ転調しているので、「だが、現実はうまくはいかなかった…」とでも言いたげな切なさ。「Shall we play this game…」からコーラスが入り、切々と訴えられる。
「雨に打たれて……」。

そして一番の見せ場!
サビの最後の音B♭から一拍でクリシェのようにA A♭と下がり、根音はF# へ。これは、6つキーをあげてサビが始まるということ。ミュージカルで歌に定評のある京本大我さんの「戻れない時を振り返る 流れる時間を止めて…」。声を張り上げるからこその生の息遣い、裏声を混ぜた高音ボイス。後半の、ジェシーさん松村さんとのハモりも胸に迫ります。E調の三度の音G# でロングトーン。「いつかはたどり着くよ 夢の世界に」……。

そして最後のサビへ。直前のE調の2つ下のDで入り、見事にCmの長に6つ下転調で戻ってくる。意外と自然で強烈に違和感があるわけではないけど、いかんせん6度離れた転調なのでキーが変わったということだけは確実にわかる。ラストのサビなのに、もとのキーに下がってくる!という強い印象。6人の低音の厚いハーモニー。「色々あった。願いはまだ叶わない。夢はまだまだだ。でも、このゲームは続けていく。雨に打たれながら……」という現実への回帰、平熱感がより切ない。染みる……

転調によって同じメロディーが奥行きを増す

何度でも言いますが、これはサビとブリッジというモチーフだけを転調させて繰り返したからこそ生まれた効果だと思ってます。隣り合う各セクションを比較したときに、少しの歌詞の違いに加えて音のニュアンスが追加され、壮大な物語になったのです。サウンド面の、ピアノの静を噛み締めるようなセクションと、ヘヴィーなギターの激情のセクションの対比が魅力であるこの曲。転調による対比もあったからこそ、大勢の心を揺さぶる名曲になったのではないでしょうか。

※音楽的には素人ですので間違いありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。勉強になります。

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