指揮者でヴァイオリニストで発掘オタク。ヤン=ヴィレム・デ・フリーントとは
2023年12月、ベートーヴェンの交響曲第9番の指揮で読売日本交響楽団に初登場となったヤン=ヴィレム・デ・フリーント(以下 デ・フリーント)。指揮棒を持たず、手の動きや全身で表現する指揮スタイルは、まるで楽器を持って演奏しながらリードしているようです。そんなスタイルにも関係ある、デ・フリーントのこれまでとこれからを紹介します。
プロフィール
Jan Willem de Vriend
ヤン=ヴィレム・デ・フリーント(フリエンド)
オランダ出身の指揮者・ヴァイオリニストで世界中のオーケストラに客演。ベートーヴェンの録音などで高い評価を得ています。母国では音楽番組などに出演し高い知名度があります。
バロック音楽の研究者であり、コンバッティメント・コンソート・アムステルダムではピリオド奏法をモダン楽器に適用することで有名曲のみならず17、18世紀の隠れた作品にも新たな生命を与えています。また、オペラの研究者でもあり、モンテヴェルディ、ハイドン、ヘンデル、テレマン、および、J.S. バッハの作品や、モーツァルト、ヴェルディ、ケルビーニ、ロッシーニなど欧米各地で指揮をしています。
ヤン=ヴィレム・デ・フリーントとオクタヴィア・レコード
ヤン=ヴィレム・デ・フリーント(以下 デ・フリーント)とオクタヴィア・レコードスタッフとの出会いは1995年10月。アムステルダムの繁華街、かの有名な飾り窓地区にあるシンプルなプロテスタント教会でのコンバッティメント・コンソート・アムステルダムの録音でした。因みに教会は1400年代初期に起源があるヴァルス教会(デ・ヴァルシェ教会 De Waalse Kerk)という、録音や演奏会でよく使われる非常に音響の良い教会です。
約1週間でバッハのブランデンブルグ協奏曲を録音。ソリストにはフルートのジャック・ズーン(Jacques Zoon コンバッティメントのメンバーでもあった)やリコーダーのマリオン・フェアブリュッヘン(Marion Verbruggen)などの名手揃い。
爽快なリズム感と躍動感あるアクセントやフレージングに心奪われた覚えがあります。でもそれは決して感性だけでやっているのではなく、自筆譜や現存された資料を研究した結果の表現なのです。このブランデンブルグは世にあるものの中でも傑出したアルバムになっています。
コンバッティメント・コンソート・アムステルダム
コンバッティメント・コンソート・アムステルダム(Combattimento Consort Amsterdam)はヴァイオリニストのデ・フリーントを中心に同級生や仲間たちによって1982年に結成されたアンサンブル(現在は活動休止)。トン・コープマンやフランツ・ブリュッヘンなどを輩出したバロック音楽研究の先進国であるオランダにはたくさんのバロック・アンサンブルがあります。
コンバッティメントの演奏スタイルは、解釈や奏法は作曲家の意図やその時代に忠実に、使用楽器やピッチは現代の方法を用いるというもの。現代の人が心地よく聴くには、現代のピッチのほうが自然であり、広い空間でも音が十分に届く楽器のほうが良いからです。
頭が音楽のことでいっぱい
デ・フリーントの頭の中は音楽や作曲家のことでいっぱいで、まぁ作曲家の話が出てくる出てくる。彼の家を訪ねると、彼の部屋は楽譜や資料の山で足の踏み場もないくらい。頭の中もこれでいっぱいなんだなぁ、と納得でした。秘曲や隠れた作曲家の発掘にも余念がなく、やりたいこと、再現したいことがたくさんあっていつでもアイディアが湧き出ています。オランダの「オ・タ・ク」だぁ、と確信しました。もちろん良い意味での話です。才能はこういうところに現れるのです。「夢中」に勝るものなし。
そんなデ・フリーントが指揮者としてもヨーロッパで引っ張りだこになるのは自然の流れです。日本でもようやく脚光を浴びつつあり2024年は京都市交響楽団 首席客演指揮者に就任します。
「日本にもやっとデ・フリーントの時代が来た」と、これからも演奏記録をどんどん残していきたいと思います。是非彼の来日の際は演奏会に足を運んでお楽しみください。数々の録音はEXTONの江崎サウンドでこれからもお楽しみいただけます。
オクタヴィア・レコードDiscography
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コンバッティメント・コンソート・アムステルダムとしては、ブランデンブルク協奏曲の他6種のアルバムをオクタヴィア・レコードから発売しています。(一部キャニオンクラシック原盤)
その他、母国オランダのレーベルからも多数のアルバムを発売しています。
CHALLENGE CLASSICS(キングインターナショナルWEBサイト)https://www.kinginternational.co.jp/artist/kana-ya/jan-willem-de-vriend/
2024年来日コンサート情報
京都市交響楽団 第689回定期演奏会
2024年5月24日・25日
京都コンサートホール
ヤン・ヴィレム・デ・フリーント(首席客演指揮者)
デヤン・ラツィック(ピアノ)★