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29小品目 ヘンテコ出産及びフジモトの話

妊娠後期には血圧が高いと言われていたが、予定日の1ヶ月前に検診に行くと、産院からもう入院と言われ、え?え?と思いながら入院した。その日の朝には畑仕事してたのに。まだ心の準備が……とあわあわしていたら、次の日に大きい病院に救急車で行って産むことになった。

と、言っても本人はなんともないので、昼ご飯を食べながら、

え?え?

とたじろぐばかりである。え?え?言ってる間に救急車が来て、タンカの人が駆け込んでくる。歩けるんですか?歩けるんです、みたいな間抜けなやり取りをする。なんだったら、運転して病院まで行けます。

そして、寝ることもないので、救急車の中で座って過ごす。バイタルチェックした後は隊員さんも手持無沙汰だし、わたしもやることがないのでへらへらして過ごす。もちろんピーポーいっているのでみなさんにも道を開けてもらって申し訳ない気持ち。

病院に着いてからは、とりあえず車椅子に乗ったりベッドに寝たりして、それらしく過ごす。前に子宮筋腫の手術をしたので、それと同じ感じだった。しかし出産てもっと感動的なものじゃないのかな?ハズバンドと母に電話したけど、

え?今日?

うん、今日……

みたいな。やっぱりえ?え?でしかない。こんな、感じでわたし今日おかあさんになっちゃうの?

そして問題がひとつ、高血圧でひどくむくんでいたので、指輪が外れない。電気メスを使うので、金属があるとそこが燃えるらしい。燃えたくない。看護師さんも他のスタッフさんも無理で、

アレしかないわな

と謎のワードにわたしは大変ビビる。アレってなに?まさか指を切り落とされたりしないよね。指輪切るとかだよね?嫌だけど、指よりマシよ。多分、この出産で一番ドキドキした瞬間だ。そして、現れたのは細身のおじさんフジモトだった。

おじさんは指輪外しのフジモトとして名を馳せていて、指輪関連のことがあると遠くの棟からでも来てくれるのだという。ありがとうフジモト、遠くの棟のフジモト。(借りぐらしのアリエッティ的に)

そしてフジモトはぬるぬるした液体と糸を駆使して、あっという間に指輪を抜いてくれた。周りの人大喝采。なんだったらギャラリーが増えていたので、フジモトファンが多いと見た。

わたしもありがたくて、ペコペコ。わたしったら、さっきからへらへらしてペコペコしてる。でも麻酔打ったら意識がなくなりかけて、あのよく志村けんのコントでピッピッ……ピー!てなる機械が大騒ぎになったから、さすがに出産は命がけだったんだと思う。

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