見出し画像

貧者のヴァーチャルリアリティ:「本当かどうかなんてことはどうでも良くて,見たい現実を見せてほしいし,心地よい現実の方が真実よりも守るべき価値だ」,この考え方を否定するのは難しい.

「本当かどうかなんてことはどうでも良くて,見たい現実を見せてほしいし,心地よい現実の方が真実よりも守るべき価値だ」

昔書いた本に「貧者のバーチャルリアリティ」って話を書いたんだけど,その本が最近オーディブルで配信され始めたので思い出したトピック.

もともと2015年に書いた魔法の世紀を中学生くらいの読者にわかりやすいように描こうと思ったのが発端で,「魔術化(仕組みもわからないし真偽も不明)」になる世界の中で都合いい現実(VR的な現実のオルタナティブ)を望むことを我々はどう考えるかという話.

今日はそんな話を書いてみようと思っている.貧者のバーチャルリアリティを世に言う識者は馬鹿にしがちだけど,貧者のバーチャルリアリティの存在自体を否定するのは難しい.

僕の中にも貧者のバーチャルリアリティはきっとある.それは,ある領域や分野や観点や,他者との関係性などの,「何らかのパラメータ」で僕が「豊か」ではなく「貧しい」だけだ.

お金持ちだとか,尊敬を集めているとか,研究をやり遂げたとかスポーツで記録を作ったとかアートを作ったとか,知識が豊富だとか,そういうことによって自分の全てが「豊か」になるわけじゃないし,「貧しさ」はどの状態にも生じうる.そこで「豊か」が「貧者」と対立するかと言う面では,その対立はどちらかに軍配が上がるものでもないと思う.

例えば識者もある観点では真実を求めない程度には貧しいこともあるし(普段は統計や論理に強い人も自分の業界や待遇や政治的観点などについては客観的に見れないことが多々見られるように),識者もまたあるイデオロギーから見た貧者のヴァーチャルリアリティの中にいることが大半だ.

きっと皆できれば心地よい貧者のヴァーチャルリアリティの中で夢見ていたい,というのは本心なんじゃないか,とも思っている今日のnote.

画像1

ここから先は

1,883字
落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

落合陽一が日々見る景色と気になったトピックを写真付きの散文調で書きます.落合陽一が見てる景色や考えてることがわかるエッセイ系写真集(平均で…

いつも応援してくださる皆様に落合陽一は支えられています.本当にありがとうございます.