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大学教員8年目やってるとワナビーとモノづくり好きの区別がつくようになってくる→「へえ,〇〇がやりたくて大学に入ってきたんだ,でなんで今まではやってないの?」(次週)「え,どうして今週できなかったの?」

表題に全てが現れているんだけど,博士とって着任&研究室を独立したての頃(27歳)は,「人間若いうちは誰だって伸びるから大丈夫だ!」と思って研究したり作品作りを応援したりしてたんだけれど,結局人間はあまり変わらず,のべ百人くらいの学生をゼミで触れ合ってきた結論,8年くらい同じこと繰り返して大体わかってきたことをまとめておこうと思う(遅すぎ?).

極めてシンプルな話で,noteに書くよりはtwitterにまとまる程度のことなんだけれど,意外と人の伸びを信じてしまう性善説(どちらかというとお人好し)で環境に恵まれてきた落合陽一(未踏とか)なので人が成長していくところを見たくなってズルズルと期待してしまう.これは良くない.

「ピアノを弾いたことがない人」は「ピアノを弾きたいと思って(弾いたことのないまま)音大のピアノ科に進学するようなことはない」ように,コンピュータがありふれた現代において,「コンピュータの研究がしたい/メディアアートが作りたい」人は「研究したい/作りたい」と思ったらその時点で作っている.

例外はあって,今伸びてない「作ってない人」は「対象に出会ったことがない人」だけである(生まれて初めてやらせてみたらすげえ伸びた,ということはある).しかし「作りたいんですけど!」という人はすでに対象を知っているからこの前提には含まれない.(時代の巡り合わせもあるがあまり割合は大きくないと思う,上記は日常に対象物がある分野に限るかもしれないが,私がいる分野である計算機周辺のインタフェースに対する工学的アプローチやそれを用いた芸術表現というものの限界費用は下がり続けている)

もちろん環境はあるだろう.コンピュータ持ってない人もいるしピアノを持ってない人もいる.それはみんながそういうものに触れられるようにはしたいし,教育課程でそれに触れられるチャンスは増やしたい.ここではそういう問題を扱っているわけではない.

もし,作りたいと思って作ったことのない人や研究したいと思って研究したことのない人は「結果の評価や自己実現」に憧れているだけで実験結果や実装そのものそしてその過程に興味があるわけでも好きなわけでもない.

やりたいことがあるならやってるし,止められなければ作り続けているのだから,そうじゃない人はそもそもモノづくりをそんなに好きじゃない.寝ても起きてもやってしまうことが好きなことだろう.うっかりやっちゃうやつである.(査読が進まないのは他の制作/研究が楽しいからである… 査読が止まらねえ! という論文もたまにある)

そして,そもそも「1日のうち1時間も自分の自由にできる時間がない!」というような,「不可避なほど予定が詰まってる学生」を私はいまだに見たことがない.トイレに行けないくらい忙しかったり風呂入れない歯を磨けない,飯を食えないくらい忙しいなら予定の確保から始める必要があるが,そういう学生にはまだあったことがない.(私も1日の可処分時間が30分を切ることはあるがなんかうっかり作ったり書いたりしてしまう,止まらないからだ)

止まらないかどうか,漏れ出るほど作ってるかどうか,これは大切なことである.この世界を生きてることに興味があるか,一瞬一瞬を集中して楽しんで生きているか,寝るときには限界を迎えているか,その繰り返しを生きているかがとても重要だと思う.その中に研究やものづくりがある人なら,「すでにやっている」のである.逆にそれ以外の人々とはどうしても研究のずれが生まれる(そもそも目指しているところが違うのだと思う)

つまりは一度会ってみて一週間後に質問すればいいだけの話なのだ.

「へえ,〇〇がやりたくて大学に入ってきたんだ,でなんで今まではやってないの?」→「え,どうして今週できなかったの?」

これで大体わかる.

(私の経験値はコンピュータサイエンスの中でHCIとかCGとかAI系の近しい領域とメディアアートくらいのものだけれど)

追伸:ちなみにこういった特徴はリモートの面接のときはデスクトップを見せて貰えば大体わかる.論文をダウンロードしたことなくて開発ツールが入ってないパソコンで動画も作ってなくてイラレもフォトショも使わなくて基板も書かないし3DCGも書かないみたいなデスクトップはチラッと見ればわかるものだ.

というわけで,研究にもモノづくりにも興味がなかったとしても卑下する必要は全くない.自分が「好きで毎日やってしまっていること」をやってくれればそれがいいのだと思う.学生さんの成長を日々楽しみにしてみている.


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落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から4年以上経ち,購読すると読める過去記事も1200本を越え(1記事あたり3円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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