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葛西臨海公園,リキッドユニバース:向日葵の環世界のコペルニクス的転回

というわけで新作が展示されている.葛西臨海公園である.

平子の作品の向かい、観覧車とひまわり畑を背に設置された横長のスクリーンでは、落合陽一の作品《リキッドユニバース:向日葵の環世界のコペルニクス的転回》が展開されている。

横幅8メートルほどのスクリーンに映し出されているのは、AIが作り出したひまわりの映像。ひまわり畑という自然、人工物である観覧車、そしてデジタルが生み出すひまわりという3つの要素が対比され、また相互に関わり合うことで、見る者の知覚や認識に問いを投げかける。

デジタル革命によって新たなパラダイムが起きている現在において、「人間中心の世界を脱し、人間が自然の流れに従って無心で自由に生きることを目指す」という中国の荘子が説明した言葉「逍遥遊」を具現化した作品になっているという。

脱人間中心の思考において他生物のプリュリバーサルな環世界の転回を考えている。本作「リキッドユニバース:向日葵の環世界のコペルニクス的転回」は、存在論的な境界の流動性を探求し、計算機自然が織りなす新たな知覚の地平を開く試みである。自然と人工物と生成AIの交差点に立つ本インスタレーションは、向日葵畑と観覧車という具象と、デジタルが生み出す抽象との間に生起する認識の揺らぎを体現する。生成AIは、観客の存在をも包含した環世界のダイナミズムを、LEDの光の律動として具現化する。向日葵の光屈性は、生命の根源的な環世界との関わりを象徴する。同時に、その動きをデジタル的に再解釈することで、我々は生命とテクノロジーの境界、そして知覚の本質に対する問いを投げかける。本作は、計算機自然という新たなパラダイムにおいて、存在の多様性と相互連関性を探求する。それは、人間中心主義を脱し、万物の絶え間ない生成変化の中に逍遙遊を生きる花と光による具現化である。

機材提供・技術協力:株式会社セイビ堂(LED vision)

というわけでお待ちしております.おすすめは夕方くらい(暑いので)

Artist message

本展示では、花と光のムーブメントを通じて、物質と非物質の境界を曖昧にし、計算機自然における新たな美学を探求します。それは同時に、人間中心主義を超えた、万物の相互連関性への気づきを促す試みでもあります。葛西の海と空、そして公園の緑が織りなす風景にて観客の皆様と共に、未来の自然観を模索する機会となることを願っています。
葛西臨海公園という、都市と自然が交錯する空間で作品を展開することは、計算機自然の概念を体現する絶好の機会だと考えています。この場所は、人工的に作られた自然と、デジタルによる質量のない自然が融合するインスタレーションが展開できればと思います。また、葛西エリアは、東京湾の生態系と都市機能が共存する独特な環境を持っています。小学校の頃に遠足できたことを思い出しました。国破れて山河あり、質量のあるものは壊れる、質量のないものは忘れる。しかし自然は繰り返し、変わらないものは何もない。

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7,317字
落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から4年以上経ち,購読すると読める過去記事も1200本を越え(1記事あたり3円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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