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心の調子が悪いときがある,しかし休むことはなかなかできない.そういったときにひたすら試すさまざまなこと.

落合陽一です.調子が上がらないときがたまにある.よくいう話で,休むと疲れるから休まない,というのは疲れを感じる機能もおかしくなっているため,一刻も早く休め,というやつだ.それはそれとして,そういう対応が取れないことも往々にしてあるだろう(特に自分が経営者とかアーティストとか).誰かが休養するニュースを聞くと調子が悪くなり,誰かが調子が悪いという事態を目の前にすると調子が良くなる.これは不思議だ.前者は休息を欲しがり,後者は生存本能が掻き立てられるのだと思う.

かれこれ調子が悪くなったと感じてからここ3年くらいを物理的な様々な手法で乗り切っている.できることがどんどん減っていく.今まで好きだったものも集中力が続かなくなる.一番困るのは長い文章に集中することができなくなるのがやばい.飛行機に乗れないことも相まってなかなか長い文章が進まない.ブログをまとめて本を書くくらいの方法論しかないのだとすると,毎日少しずつ書くしかない.そういう意味ではnoteは大変役立っているのだろうと思う.2000字から4000字くらいまでならまだ一息で書ける.頭の調子が悪くなるまでは12000字までは一息で書けていた.しかし,そうか,研究も作品も三等分してそんな感じに書き進めるのがいいのかもしれない,と思ってからヤバさが底を打ったような感じがある.

2019年くらいまではちょくちょく体調のいい時期と悪い時期を繰り返しながらやってきたのだけれど,2019年あたり,ちょうどnoteを書き始めた頃の調子の悪さはなかなかなもので,ギリギリアウトプットが出るか出ないかというくらい.ほとんどクリエイティブなことに頭を使えない時期が続いて,休養は取れないので服薬したりしながら走り続けていたものの,飛行機移動や学会出張などがあったおかげで,月に一回二回くらいは,休みではないが深い集中に入れるまとまった時間が取れていた.おかげで本を書いたり論文書いたり長い申請書を書いたりビジョンを作ったりする時間ができた.

しかしその後,2020年あたりのコロナリモートの世界でさらに忙しくなって,30分刻みで予定が入るようになってそこからさらに精魂尽き果てるまでに1年半.2021年頃には身動きが取れない日も続くが,なんとか朝7時から夜24時まで働いている.24時から先はいつ寝落ちするかわからなくなった.困ったことに締め切りを守るのが2019年ごろから難しいのだけれど,その身動きの取れなさがさらに高まってきている.できることができなくなっていく.それは休息を取るよりは心地良い.人間の感覚は少しの服薬で変わってしまうようなものだ.壊れるメディアアートが綺麗なように,それと同じような人間性の魅力というのもあると思う.

人生は積み減らしだと岡本太郎は言ったけれど,色々なものを積み減らしすぎて何が残っているのかよくわからない.今はお薬を飲んでも大して変わらない.生命への渇望がいる.デスソースは良い.直感でできる仕事はできる.記憶が長くは持続しない.写真を撮るのも失われつつある記憶への防衛本能みたいなものだろう.しかし,どんどん壊れていく精神と身体は心地が良い.昨日できたことができなくなることの心地よさは,何にも代え難い終わりへと近づいていっている証跡である.やがてアムロくんのお父さんみたいになって死ぬのではないかと思う直感がある.それもまた「ダサくない死に方をする」よりは「ダサくない」.老いは甘美であって完備でもある.ピントが合わない気難しいレンズを目指して社会的に孤立していくようなものだ.自己完結には近づいていく.遺作という響きは実に素晴らしい.毎日遺作をめざすだけで日々が過ぎていく,これは儲けものだと思う.

書き留めておかないと何をすると何が起こるのかを忘れてしまうから,今日は特に誰のためでもなくそんな健忘録的なnoteでも.

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落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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