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創作者の脳内ってどうなってるん?~認知と創作に関する研究~②脳内タイプが明らかに!

小説を書くとき、あるいはマンガを描くとき。頭の中に言葉が流れる? 映像が浮かぶ? 本を読むとき、映像が脳内で鮮明に再現できる? うまくできなくて文章のまま入ってくる? ぼーっとしてるとき、脳内は静か? おしゃべり? 

これ、人によってかなり違うらしい。

「じゃあ、同じ小説書いている人も脳内に浮かんでいるものって違うの!?」ということが気になってアンケートをしたところ、字書き・絵描き・演奏者等5,000人強の創作者さんたちのデータが集まってしまった。

ということで、責任をもって集計と考察を共有することにした。今回はその第二回目である。

第一回目はこちら↓

前回はGoogleフォームでの単純集計のみを共有したが、今回から本格的に分類しつつ集計を行ったところ、なかなか興味深い結果が現れた。
なお、筆者はアンケート集計に関しても素人なのでそこはご容赦いただきたい。(見切り発車もたいがいにしろよな!)

創作するとき何が浮かぶ?~創作物別の分析~

このアンケートの最終目的は前回の記事で記した通り、インプット→思考→アウトプットの脳タイプと創作表現との関連性を探ることである。それにあたって、まずこちらの質問について詳しく見ていきたい。

「創作をされる方に質問です。創作物に落とし込む前に、頭の中に浮かぶのは何ですか?最も近いものを教えてください。」

これ、文字媒体かそうでないかなど、創作物ごとに違いがあるのだろうか……?ということで、ざっと比較してみた。

複数選択アウトプットグラフ

い、意外と、どれも似てる……?
小説を書いてる人は「言葉・文章が浮かぶ」人の割合が多く、マンガを描いている人は「マンガのコマのようなものが浮かぶ」人が多いなど、ちょっとした違いはある。が、何を作っている人も「映像が浮かぶ」人が多いようだ。

と、ここで気づいた。複数選択している人がかなりいることに。中には小説、絵、マンガ、演奏など4,5個選択している人もいる。どんな超人だろう……。

気を取り直して、「小説を書いている」のみ、「論文を書いている」のみなど、それだけを作っている人に絞って集計してみた。

のみアウトプットグラフ

なるほど、複数選択者を排除するとかなり差が出た。

小説・マンガ・絵をかいている人たちは、依然として「映像が浮かぶ」人が最も多いが、次点に大きく差が出ている。小説は「言葉・文章が浮かぶ」人が多く、マンガを描いている人は「映像が浮かぶ」とほぼ同数で「マンガのコマのようなものが浮かぶ」人がいる。また、絵を描いている人は「静止画が浮かぶ」人が他と比べてかなり多い。

続いて、詩や短歌・俳句を作っている人たちだが、小説を書いている人とも異なり、「言葉・文章が浮かぶ」人が圧倒的に多い。同じ「文字を書く人」でも、出力するにあたって浮かぶものに差があるようだ。

また、論文では「言葉・文章」の次に多いのが「完成図・写真・設計図が浮かぶ」で、さらに他と比べて「図・図式・方程式のようなものが浮かぶ」人も多い。これはまた別の機会に分析するが、論文が得意な人、もしかして本田式認知特性テストの「言語抽象タイプ」が多かったりするのだろうか。

出力形式は同じ「文字」でも、小説や詩の人たちとは違うらしい。論文を書くときは設計図を頭で描いてそれを言葉でつないでいく感じだろうか。そういえば私も考察本を出したことがあるが、図式化してすべて見える状態にした上で文章に落とし込んでいた。

完成形をイメージしながら作る、ハンドメイドの人が「完成図~」が多いのも納得だ。しかしそんな中で「映像が浮かぶ」や「マンガのコマが浮かぶ」と答えた人とはぜひお話がしてみたい。

さて、ここまでだらだらと集計結果を並べてみたが、上記のことをまとめると、創作物ごと――つまり出力方法に近い形で脳内に浮かびやすい傾向にあるということがわかる。


アウトプット・思考・インプットで脳内イメージに差はあるのか

先ほどはアウトプット時のみの脳内を見てみた。しかし、人間の脳はそれ以外の時間もずっと何かを映し出している。
今回行ったアンケートでは

「ぼーっとしているとき(特定の何かに集中していないとき)、あなたの頭の中には何が流れていますか?最も近いものを教えてください。」

という質問と、

「絵のない小説を読んだ時に、頭の中には何が思い浮かびますか?最も近いものを教えてください。」

という質問にも答えていただいた。

先程の「創作するときに何が浮かびますか」というのも合わせて、この3つの場面で、脳内に浮かぶイメージに関連性はあるのだろうか?

先ほどの「創作するとき何が浮かびますか」という質問の答えを「アウトプット○○タイプ」として、タイプ別に分類して集計してみた。例えば、創作するときに映像が浮かぶ人は「アウトプット映像タイプ」、言葉や文字が浮かぶ人は「アウトプット言葉タイプ」になる。

というわけで、さっそくグラフをドンッ!

タイプ別グラフ1

タイプ別グラフ2

(グラフ見にくくてごめんなさい……)

まずは棒の順番と長さを比較してみてほしい。これだけでも違いがかなり現れている。例えば、「アウトプット映像タイプ」の人は、絵のない小説を読んだ時に「アニメや実写の映像が浮かぶ」人が圧倒的に多い。一方、「アウトプット言葉タイプ」は上記の際に「文字は文字のまま」「文字が音声で」入ってくる人がかなり多い。紙芝居タイプもなかなかおもしろく、「静止画が紙芝居のように切り替わって浮かぶ」人が「アニメや実写の映像が浮かぶ」人を上回っている。

さらに詳しく見てみよう。

グラフの色の違いに注目してみる。こちらは「ぼーっとしているときに浮かんでいるもの」だ。
「アウトプット映像タイプ」を例に挙げると、グレー、つまり「映像が流れている」人の割合が高いことがわかる。一方で「アウトプット言葉タイプ」はオレンジ、つまり「たくさんの言葉が流れている人」が多い。
紙芝居、静止画、マンガのコマタイプの人は他と比べると紺色「静止画が紙芝居のように切り替わる」人が多い。
また、特に面白いのが「アウトプット音タイプ」。この人たちは他と比べて黄色の「音が流れている」割合が圧倒的に高い。

上記のことを踏まえると、創作するとき、本を読むとき、ぼーっとしているときの3つの状況下で脳内に浮かぶものは似通っていることが多いと推測される。


見えてきた3つの特化型

それでは、その3つが全く同じ人はどのくらいいるのだろう? ということで、グラフの中に赤枠でしるしをつけてみた。

特化型グラフ

この赤枠が、アウトプットー思考ーインプットの脳内タイプが同じ人である。

例えば、創作をするとき映像が浮かび、ぼーっとしてるときも映像が流れてて、本を読んで映像が鮮明に再現できるという人は、グラフの一番上の赤い長方形に当てはまる人たちで、「映像-映像-映像タイプ」となる。2番目のグラフの赤い長方形は「言葉(文字)-言葉-言葉タイプ」、そして3,4番目のグラフの赤い長方形は「静止画(紙芝居)-静止画-静止画タイプ」だ。

これをここでは「映像特化型」「言葉・文字特化型」「紙芝居・静止画特化型」と呼ぶこにしよう。

特化型は全体に対する割合としてはそれほど多くなく、実際は複合的な人が多いようだ。図にするとこのような感じだろうか。

特化型イメージ

完成図・音・図式タイプに関しては他2つの質問で同様の回答を用意していなかったため、ご容赦願いたい。ただ、完成図タイプが比較的他のグラフと似ているのに対して、音タイプ、図式タイプの色合いが明らかに違うのは面白いポイントだ。

さて、ここで3つの「特化型」に分けたのは、それぞれの特化型で創作表現にどんな違いがあるのか? を分析するためだ。だから、特化型が優秀とかそういった話をしたいわけではない。対極にいるのだから、何か表現に違いが生まれるのではないか、という仮説を証明するために、ここまで、ここまで……!数日かけて集計をした。

ということで、次回のテーマは3つの特化型で創作表現に違いはあるのか、またその特徴とは何か、である。

余談:創作の種類と特化型の関連性はある?

冒頭で「創作物とアウトプット前のイメージは近いことが多い!」と結論付けたからには、それぞれの特化型の割合も出しておかないといけないだろう。
全部出しているとキリがないので、比較的多かった小説書き、マンガ描き、絵描きに絞ってみてみた。

小説を書く人: 映像特化16.3%、言葉特化5.8%、静止画特化1%

マンガを描く人: 映像特化16.4%、言葉特化2.6%、静止画特化2.2%

絵を描く人: 映像特化14.3%、言葉特化2.7%、静止画特化2%

うーん、あまり大きな違いは見られない。マンガ・絵描きの言葉特化が2%代なのに対して、小説書きは5.8%と比較的多いくらいだろうか。
ここから導き出せることは、「どの特化型であろうとつくりたいものはつくれるし、技術は特化型に関係ない!」ということだ。
私の周りにもちょうど3名、各特化型に当てはまる字書きがいるが、みんな唸るほど文章が上手い。ただ出力までの過程が異なるだけで、できあがったものは過程に関係なく評価されるのだ。

ということで、長くなったがこれで第二回のレポートを終わろうと思う。
次回はもうちょっと早めに投稿できるといいなぁ……。

気になること募集!

今回と次回は、格特化型と創作表現の関係性について大雑把に見ていく予定ですが、このアンケートではほかにも認知に関する様々な設問に答えていただいています。今回のレポートで自由回答欄に全然触れられなくて不甲斐ない……。

今後、コラム的に分析結果を出していく予定ではありますが、もし気になっていること、知りたいこと、「僕・私のような人はいますか?」といったことなどありましたら、コメントでいただけると嬉しいです! 皆さんの興味関心の高いものから分析してみることにします。(特にコメントなければ私の好奇心に沿って進めることにします!)

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!



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