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#509:坂本拓弥著『体育がきらい』

 坂本拓弥著『体育がきらい』(ちくまプリマー新書, 2023年)を読んだ。まずは、タイトルが秀逸! 学校の体育の授業が大嫌いだった私は、書店の店頭で見かけたとき、手に取らずにはいられなかった(苦笑)

 内容としては、学校体育の歴史と実態を概観しつつ、本来の体育が持つ意義とその可能性を論じるもの。内容には注文はないのだが、私には、著者の文体と論の運び方が自分の感覚に合わないところがあったのが、少し残念。まあ、私の感覚の問題なので。

 学校体育が大嫌いだった私には、著者が挙げていく「体育がきらいになる理由」が、どれも「そうそう!」と思い当たるものであり、そういう点では痛快(?)ではあった(嫌な思い出も蘇らないではなかったが)。

 著者の立場にも通じると思うが、特定の運動課題ができるようになることではなく、自分の体の動き方と動かし方を知ること、他者の体についても知ること、他者との動きの合わせ方を知ること、そしてそれらすべてに多様なあり方を知ること、それがまず学校体育の目的であってほしいと、私は願う。そのうえで、体の動きと動かし方が変わると、身の回りの世界に対する感じ方と受け止め方、そして身の回りの世界に対する働きかけ方の可能性が広がり、変化することを体験的に学ぶことであってほしい。

 そういう授業であったなら、私はもう少し自分や他者の身体に肯定的な関心を持つことができたのではないかと思う。身体的に虚弱で、運動を苦手としていて、自分はダメな身体とダメな運動能力しか持っていないのだという感覚を学校生活を通じて嫌になる程味わわされた身としては、とりわけ、そう思う。