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#403:京都市交響楽団第677回定期演奏会(2023/4/14)

 京都市交響楽団第677回定期演奏会(2023/4/14)を聴いてきた。会場はいつもの京都コンサートホール。今回の定期演奏会は、第14代常任指揮者に就任した、沖澤のどか氏の就任披露コンサートでもある。

 私が聴いてきたのは、2回ある公演のうちの、フライデー・ナイト・スペシャルと銘打たれた1日目の公演。プログラムは、モーツァルトの「魔笛」序曲、メンデルスゾーンの序曲「ルイ・ブラス」、そしてメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」である。フライデー・ナイト・スペシャルは、公演開始が19時半と少し遅く、休憩なしの一時間程度のプログラムで構成されている。ちなみに、2日目は、前半がメンデルスゾーンの1日目と同じ2曲、後半がブラームスの交響曲3番というプログラムである。

 詳しくは知らないのだが、確か今回の公演が、沖澤氏と京響の2回目の顔合わせということになるのではないか。そもそも2年前の定期公演に登場したのも大抜擢だったろうし、それをきっかけに常任指揮者に指名されたのは更なる驚きの大抜擢と言えるだろう。それだけ、沖澤氏に対する期待が大きいということだろう。私も大いに期待して、このコンサートに足を運んだ。

 まずコンサート全体の印象から言えば、まずは無難な船出(いい意味で)というのが私の感想である。オーケストラと指揮者の関係は、これから演奏を積み重ねて育まれ、築き上げられていくことになるのだろうと思う。本格的な関係がスタートしたばかりということもあるだろうし、若い沖澤氏は常任指揮者の経験は初めてだろうから、今回の演奏会の指揮者は、オーケストラをドライブするというよりは、楽員の自発性に委ねつつ、感興の高まりを引き出そうとするアプローチであるように、私には思われた。

 小柄だがスッと背が伸びた沖澤氏の指揮姿は、柔らかくエレガント。メンデルスゾーンの交響曲では、両端楽章よりも、中間楽章の方に、沖澤氏の(少なくとも現時点での)資質が発揮されているように感じられた。ゆったりとした楽想での、繊細で柔らかく歌う、陰影に満ちた表現をオーケストラから引き出す力には、ハッとさせられる場面が多々あった。

 京響は、沖澤氏を盛り立てようと奮闘する様子だった。京響の強みの一つは、弦楽器群のシルキーな響きの美しさにあると私は思うが、今日の公演でも、弦楽器群は美しく歌うばかりでなく、「イタリア」の終楽章では、ここぞというところで迫力ある合奏を聴かせてくれた。

 前シェフの広上淳一氏と京響の名コンビぶりを何度も聴いてきた私としては(15年前の広上氏の常任指揮者就任披露コンサートで初めてこのコンビを聴いて、私は心底度肝を抜かれたものだ。そして、その後さらにその上をいく演奏会に何度も出くわしたものだ。なんと幸せなことだったろう)、今日の新シェフと京響の演奏は、いや、まだまだ、これから時間をかけて関係を深めていけばもっと高みを目指せるはずだという期待を抱かせてくれるのに十分なものがあった。今日は、まずは無事の出発を祝いたい。このコンビは、演奏会を積み重ねるごとに、目を見張るような変化をきっと見せてくれる。私は、心からそう期待している。