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#113:橋本幸士著『物理学者のすごい思考法』

 橋本幸士著『物理学者のすごい思考法』(集英社インターナショナル新書, 2021年)を読んだ。本書を知ったのは確か新聞の書評欄での紹介だったか。硬軟入り混じった(多くが軟)軽妙なエッセイが楽しめる。

 タイトルに偽りなく(「すごい」かどうかは置いておいて)、物理学者である著者の生態(?)の丁寧な描写を通じて、物理学者が日常をどのように過ごしているのか、その一端を覗き見ることができる。個人的には、比較的「硬」のテーマが集められている第2章が最も興味深かった。中でも、「科学は美しいのか?」は出色と思う。

 今では私は「文系人間」だが、かつて中学生の頃は講談社ブルーバックスの物理関係の本を読み漁る理系志望の少年だった。高校で自分は数学と相性が悪いことを自覚して、あっさりと文系に転身したのだ。そんな私にとっては、著者の姿は眩しく見える。本書で描かれている著者の思考スタイルの一部は、私自身にも同様に当てはまるところが結構あって、実は私は隠れ理系(?)なのではないかと、ちょっと妄想してみたり・・・。

 読みやすく、親しみやすく書かれ、作られている本でありつつ、そうした見かけ以上に中身もしっかりと詰まった、読み応えのある本であった。私はとても楽しんで、ところによっては(意外にも?)ちょっとホロリとさせられられたりしながら、読ませてもらった。