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#98:アンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』

 アンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』(新潮新書, 2020年)を読んだ。個人的には邦題はちょっといかがなものかと思うが、原題からそうかけ離れているわけでもないみたい。

 内容は至極真っ当で、面白く、読みやすく、わかりやすい。これぞポピュラーサイエンス本のお手本。進化生物学と脳科学の枠組みから、ざっくりと大づかみに、くっきりとした輪郭で話を進めながら、気の利いた小ネタを適度に配置する手際の良さ。見事である。

 「デジタルネイティブ世代」がこの本を読んだら、どのような受け取り方をするのだろうか。興味がある。最近、若い世代の学生さんたちに、伊藤亜紗氏の『利他とは何か』の一節や、磯野真穂氏の『医療者が語る答えなき世界』の一章を読んでもらって、感想や意見を出してもらう機会があったのだが、私の予想からかけ離れた感想、意見の続出に頭がクラクラしたものだ。30年という生きてきた時代のギャップは、その基本的な感性や価値観にまで、想像以上に根本的な部分にまで届いているようだと、思い知らされる経験であった。

 だから、若い世代の読者は、私には想像もつかない感想を、この本に対しても持つのかもしれない、と、ちょっと怖いような気もしてきた。