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自分が読んだ本についての、感想、コメント、連想を、気ままに書いています。
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#ミステリ

#294:日本推理作家協会編『マイ・ベスト・ミステリー Ⅰ』

 日本推理作家協会編『マイ・ベスト・ミステリー Ⅰ』(文春文庫, 2007年)を読んだ。本書は近所の中古書店で見かけて購入したもの。本書は、逢坂剛氏による「序」によれば、「このアンソロジーは・・・中略・・・ミステリー作家が、「もっとも好きな他人の作品」と「もっとも好きな自分の作品」を一本ずつ選び、そのよってきたるゆえんを解説するという趣向で、できあがった」(p.9)というユニークな企画本である。  実際に読んでみると、収録されている作家が、自作にしても、他作家の作品にしても

#290:小森収編『短編ミステリの二百年 4』

 小森収編『短編ミステリの二百年4』(創元推理文庫, 2020年)を読んだ。本書は全6巻のシリーズの第4巻にあたる。13編の作品に加えて、第1巻から連載されている、解説を兼ねた編者による大長編評論(本書では約300ページ分)が収録されている。  これまで読んできた第3巻まででは、個人的には感銘を受けなかった作品も少なくなかったのだが、本巻に収められている作品は、私にとっていずれ劣らぬ魅力的な作品であり、個人的には満足度が大変高い巻である。編者による連載評論も、これまでと同様

#286:米澤穂信著『ボトルネック』

 米澤穂信著『ボトルネック』(新潮文庫, 2009年)を読んだ。単行本は、2006年に新潮社から刊行されたとのこと。私が読んだ本は、発行から約1年後の第16刷ということで、かなり売れた本のようだ。私が著者の本を読むのは、少し前に読んだ『インシテミル』に続いて本書が2冊目。『インシテミル』が長編第9作で、本書が第8作にあたるとのこと。  本書はSF的な設定の青春ミステリということになるだろうか。著者が20代後半の頃の作品にあたり、いい意味でも、そうでない意味でも、「若さ」が前

#284:アンドリュウ・ガーヴ著『カックー線事件』

 アンドリュウ・ガーヴ著『カックー線事件』(ハヤカワ・ミステリ文庫, 1980年)を読んだ。本書は近所の中古書店で入手。著者の作品は、これまで、『ヒルダよ眠れ』『遠い砂』の2作品をかなり前に読んでいるはずだが、どちらの作品も、内容をはっきりとは思い出せない・・・。確か本書は未読だったなと思い、出会ってラッキーとばかりに購入した。  読み始めてみると、「ん?」、ところどころ読んだことがあるような気がする。でも記憶は甦らない。ストーリーの進行につれて現れるいくつかのシーンに断片

#279:阿刀田高著『ミステリーのおきて102条』

 阿刀田高著『ミステリーのおきて102条』(角川文庫, 2001年)を読んだ。読売新聞社から1998年に刊行されたものを文庫化したものとのこと。著者の短編作品は、いくつかのアンソロジーで読んだことがあるはずだが、本としてまとまったものを読むのは今回が初めてではないかと思う。とはいえ、本書は作品集ではなくエッセイ集であって、新聞に2年間にわたって連載されたエッセイ102本がまとめられたものとのことである。  本書で取り上げられ、扱われている話題は、主としてミステリー本、時にミ

#276:ミステリー文学資料館篇『鉄道ミステリー傑作選 名探偵と鉄旅』

 ミステリー文学資料館篇『鉄道ミステリー傑作選 名探偵と鉄旅』(光文社文庫, 2016年)を読んだ。本書は、タイトル通り、シリーズ探偵役が登場する、鉄道絡みの短編作品のアンソロジーである。収録されている作家は、収録順に、赤川次郎、天城一、鮎川哲也、内田康夫、加賀美雅之、辻真先、津村秀介、山村美紗の8名(五十音順であることに今気づいた)。  収録作品中、個人的に抜きん出ていると思うのは、やはり鮎川哲也作の『緋紋谷事件』。巻末の山前譲氏による解説によれば、本書に収められているの

#251:雨の会編『やっぱりミステリーが好き』

 雨の会編『やっぱりミステリーが好き』(講談社文庫, 1995年)を読んだ。基になった単行本は新潮社から1990年に刊行されたとのこと。再録作品と書き下ろし作品が入り混じったアンソロジーで、収録されている作品の作家は、収録順に、井上夢人、大沢在昌、折原一、坂本光一、高橋克彦、新津きよみ、東野圭吾、矢島誠。大沢氏による「あとがき」によれば、「雨の会」は当時若手の新進作家が集まった会だったようだ。本書が編まれたのは、その大沢氏自身や東野氏が大ブレイクを果たす前ということになる。

#239:東川篤哉著『交換殺人には向かない夜』

 東川篤哉著『交換殺人には向かない夜』(光文社文庫, 2010年)を読んだ。本書は2005年にカッパ・ノベルスとして刊行されたものを文庫化したものとのこと。先日読んだ著者の短編作品が気に入ったので、長編作品も試しに読んでみようと近所の中古書店で購入してきたのが本書。  基本は「ユーモア・ミステリ」とでも言うべきか。文章のスタイルも、登場人物の造形と動きも、相当にベタでお約束に満ちており、そのテイストが好みに合えば安心して作品世界に浸ることができるだろう。言葉遊びのセンスなど

#237:ヘンリイ・スレッサー著『快盗ルビー・マーチンスン』

 ヘンリイ・スレッサー著『快盗ルビー・マーチンスン』(ハヤカワ・ミステリ文庫, 1978年)を読んだ。本書は近所の中古書店で見かけて購入。楢喜八氏によるユニークな表紙カバーイラストが楽しい。  1950年代から60年代にかけてアメリカで活躍した短編の名手として名が知られる著者だが、その作品をまとめて読むのはたぶん今回が初めて。本書は、語り手の「ぼく」とその従兄弟のルビー・マーチンスンが主人公の連作短編集である。しかし、本国ではこのような形ではまとめられていないようで、本書は

#234:恩田陸著『中庭の出来事』

 恩田陸著『中庭の出来事』(新潮文庫, 2009年)を読んだ。2006年に新潮社から刊行された単行本が文庫化されたものとのこと。私は一時期、著者の作品を好んでよく読んだものだった。これまで読んだ作品は、覚えている限りでは、『六番目の小夜子』『不安な童話』『三月は深き紅の淵を』『光の帝国 常野物語』『象と耳鳴り』『木曜組曲』『月の裏側』『ネバーランド』『麦の海に沈む果実』『MAZE』『夜のピクニック』『ユージニア』といったところ。本書は、ずいぶん久しぶりに読んだ著者の作品である

#224:本格ミステリ作家クラブ編『深夜バス78回転の問題』

 本格ミステリ作家クラブ編『深夜バス78回転の問題』(講談社文庫, 2008年)を読んだ。本書は、2004年に講談社ノベルスから『本格ミステリ04』として刊行された本を改題したものとのこと。本書には、2003年に発表された11篇の短編小説と1篇の評論が再録されている。  収録されている作品はいずれも読み応えがある。「本格ミステリ」と銘打っているだけあって、いずれの作品もロジックに対するこだわりが感じられるのが、このジャンルのファンとしては嬉しい。愛好家なら十分に楽しめるアン

#220:マーティン・H・グリーンバーグ編『新エドガー賞全集』

 マーティン・H・グリーンバーグ編『新エドガー賞全集』(ハヤカワ・ミステリ文庫, 1992年)を読んだ。本書は近所の中古書店で入手したもの。1981年から1988年までの、アメリカ探偵作家クラブ(MWA:Mystery Writers of America)の年間賞(通称エドガー賞)の短編賞部門の受賞作、計8編が収録されている。本書は、ハヤカワ文庫から刊行された「アメリカ探偵作家クラブ傑作選」シリーズの14巻目にあたるとのこと。  収録作の中で私が好む作品は、収録順に、ジャ

#218:ミステリー文学資料館編『江戸川乱歩の推理試験』

 ミステリー文学資料館編『江戸川乱歩の推理試験』(光文社文庫, 2009年)を読んだ。ミステリー評論家の新保博久氏(氏自身、ミステリー文学資料館の運営に関わっているようであり、本書の編集委員を務めているとのこと)による本書の解題によれば、本書は「既刊『江戸川乱歩の推理教室』に続いて、同じく江戸川乱歩が出題・解答・編纂・監修と、何らかの形で関わった犯人当て小説のコレクション第二弾」(p.356)とのことである。  「犯人当て小説」と言っても、本書に収録されているのは、文庫にし

#206:山前譲編『判決 法廷ミステリー傑作集』

 山前譲編『判決 法廷ミステリー傑作集』(徳間文庫, 2010年)を読んだ。行きつけの近所の中古書店で入手した本である。本書は文庫オリジナルのアンソロジーで、収録されている作品は、それぞれ、松本清張、小杉健治、夏樹静子、中嶋博行、土屋隆夫、横山秀夫による、計6作品。「傑作集」というサブタイトルが適切かどうかはともかく、いずれも実力のある作家による作品であり、安心して(?)読むことができる作品が揃っている。  収録作品のうち、松本清張の「奇妙な被告」は過去に読んだ記憶がうっす