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自分が読んだ本についての、感想、コメント、連想を、気ままに書いています。
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2021年4月の記事一覧

#78:伊藤亜紗編『「利他」とは何か』

 伊藤亜紗編『「利他」とは何か』(集英社新書, 2021年)を読んだ。執筆者は、編者の他に、中島岳志、若松英輔、國分功一郎、磯崎﨑憲一郎の5名。共同研究プロジェクトから生まれた本とのこと。  それぞれの論者で領域もアプローチも異なるが、執筆者たちに通底しているのは、他者との関係の持ち方、自分自身との向き合い方において、不確実さに委ねる覚悟ということではないかと思う。  私自身の関心領域で言えば、それは心理療法におけるクライエントとセラピストの関係のあり方に通じる問題である

#77:池見陽、エディ・ダスワニ著『バンヤンの木の下で 不良外人と心理療法家のストーリー』

 池見陽、エディ・ダスワニ著『バンヤンの木の下で 不良外人と心理療法家のストーリー』(木立の文庫, 2020年)を読んだ。著者の二人は、著名な心理療法家とその幼なじみ。幼なじみの実体験に基づく話を心理療法家が聴くことを通じて小説の形にまとめ上げられた作品。どうして、どのようにして二人がこのような作品を二人で共同で作り上げることになったのかについては、本書を読んでみてほしい。少し風変わりな、けれどもとても読み応えのある”小説”である。  本作品において重要なテーマの一つは、著