三体の第2部(黒暗森林)を読んだ感想

はじめに

こんにちは、おちうおです。
三体の第2部を読んだので感想を書きます。
巻数でいうと、2巻と3巻です。
ネタバレ気にせず書いていくので、ご注意ください

読む前、読み始めに感じたこと

智子の壁と第二部の展開に期待が膨らむ

第一部のラストで、人類の発展はやがて限界を迎えることが提示され、
打倒すべき「三体文明の科学技術」に並び立つ機会が失われてしまった。
こんな状況から、どうやって人類は三体文明による侵略を退けるのだろう?
読む前は、そんなことばかりを考えていた。
物理の基礎研究が進まないこともそうだけど、智子というスパイが世界のどこにでもいて、リアルタイムに情報を発信している状況も、打開の難しさに拍車をかけていた。
どうやって、このように困難な状況を打破するのだろうか。
そんな期待をもって読み始めた。

面壁者というアイディア

第二部は面壁者の物語だった。
面壁者はとても面白いアイディアだと思った。
三体で描かれる打破するべき危機は、全人類が負うべき課題だった。
かといって、全人類にフォーカスを当てて物語を紡ぐことはできない。
物語である以上、物語として描写できる範囲には限界があるので、誰にフォーカスを当てて、危機を描写するのかという問題がある。
それを解決したのが、面壁者という役割だと思う。
課題の大きさと、文学としての描写の限界をうまく折り合いつけてあると思った。
事実、第二部では一人の面壁者を主軸においた(他数名の)群像劇として構成されている。(特に二巻はその色が強かった)
また、人類の存続という大きすぎる責任をたった4人に押し付けるというのは、物語としてかなり魅力的に見えたし、魅力的だった。

羅輯とほかの面壁者の対比

面壁者が選出されるシーンで、読者はだれが主人公かすでに知っていた。
物語としてのお約束で、羅輯が面壁者に選ばれるだろうということも知っていた
そして、その通りになった。気持ちいい。
こういう、気持ちよさをちゃんと外さず摂取できるのが、三体のいいところなんだよなぁ。
お約束を外さないというか、エンターテイメントとして不快感がない
他の面壁者は、なんらかの実績があり、なぜ選出されたかの納得感がある。(そして、そのように描写されている)
一方、羅輯はそうでないように描写される。
本人でさえ、選ばれるとは思っていなかった事が強調されていた。
ここで発生した、「なぜ、羅輯だったのか?」という疑問は、第二部が終盤になるまで伏線として保存される。
こういう対立(ここでは、権威vs素人)とか伏線とかがちゃんとしてるから、ストレスなく読めるのかもしれない。
かといって、他の面壁者に魅力がないか?というとそうでもない。
過剰に共感を得ないように描写されてはいる(と思った)けど、
「みんな頑張れ!」って応援したくなる程度には描写されている。
ここらへんのバランス感覚は素晴らしいと思う。
結局みんな死んでしまうのだけど、生きてほしかったし、死ぬとしても称賛と祝福の中で死んでほしかった。(でもそうはならなかった)
後で書くけど、たぶんあえてそう描写されている。

読み進めるうちに思ったこと

智子の壁と読者の想像力の壁のはなし

この小説を読んでいてい、「うまいなー」って思ったことが一つあって、それが智子の壁と読者の想像力の限界が一致しているところだった。
前回、一部の感想で書いたけど、急に「元素を十一次元展開してスーパーAIにして光速動かそう!そんでそいつをスパイにしよう!」
とか言われても、割と想像しづらい。
第一部の中で苦痛だったのが、智子の生成部分だった。
今回、SF的描写で読んでて苦痛だったところが、全くなかった。
おそらく、智子の壁(作中の科学技術の壁)の手前側だけの描写がほとんどだったからだと思う。
近未来のSF描写はあるが、想像できる範囲内でしか科学技術の発展が描写されていない。
それは、智子の壁想像できる(しやすい)SF描写の壁になっているからだった。
このシステムのおかげで、近未来の描写がとても読みやすかったと思う。

SF描写がうれしかった

第一部は、意外とSF描写が少なかった。
どちらかというと、地球外の知生体との接触がメインだったと思う。
でも、第二部はめちゃくちゃSF描写にあふれていた。
核融合炉を動力源として備えた、宇宙戦艦の艦隊が出てくるし、
コールドスリープで2世紀描写がスキップする。
空飛ぶ車に、リアルタイムで柄が変わる服だって出てくる。
第一部で足りなかったSF分が完全に補給された。
やっぱり、近未来の描写ってこうじゃないとね!

水滴は読者の味方だ

第二部を読んでて一番もやもやしたのが、コールドスリープから覚めた羅輯がぞんざいに扱われるところだった。
だって、この物語のヒーローは羅輯なのに、俺の羅輯を雑に扱いやがって。
この未来人どもめ!
コールドスリープから覚めた世界は、読者にとっても完全にアウェーだった。
未来の人々がなぜか平和ボケしているのにも、納得できるだけの物語が用意されていた。
大渓谷時代の描写が割と凄惨だったので、未来人の対応も、
なんとなくだけど納得感が得られた。
これが、ただ時間経過で危機感が薄れただけだったりしたら、納得感は得られていなかったと思う。
でも、大渓谷時代で直面した人類の危機って、よく考えたら三体危機に比べたらマジでしょぼい危機なんだよね。
だから、読者と未来人の間で誤謬がちゃんと発生して、もやもやはする。
読者は、この「もやもや」を抱えたまま、未来の世界を読み進めることになる。
そして、満を持して未来人の平和ボケの象徴たる宇宙艦隊が、たった一滴の探査機にボッコボコにされるのは読んでいて気持ちがよかった。
「ほら見たことか!」
作中では絶望的なシーンとされているが、明らかに爆発に次ぐ爆発で気持ちのいいシーンとして書かれていると思った。
読者のこと、よくわかっているよほんと。
水滴は、作中では敵だけど、読者にとっては味方。そう思った。

大史のことほんとに好き

もうね、好き。
史強が出てくるだけで、安心感が全く違う。
前回は精神的な支えとして、学者と警官の考え方の違いみたいなところが強調されていた。
けど、今回はマジのマジで命を守る正義の味方だった。
特に、コールドスリープの後に、病院で羅輯の前に現れた史強の心強さは半端ではなかった。
実際、即座に(何度も!)羅輯の命を救ってたし。
ホント好き。白血病治ってよかった。
今回は、第一部では描写されなかった息子も出てきた。私生活を感じられてうれしかったよ、俺は。
でも、その息子が.…。まあ、育児って難しいからね…。

もう一人の主人公「章北海」

第二部には何人か主人公的人物が出てくるけど、その中で一番印象的だったのが章北海だった。
なんといっても、死にざまが素晴らしい。
書くと長くなるけど、やっぱり軍人っぽく描かれて軍人っぽく死んだ。
良い…。

黒暗森林の意味とは

サブタイトル「黒暗森林」の意味は、ずっと明かされないまま進行していく。
ていうか、序章の墓前での文潔との会話の中で出てきた二つの重要なワード「猜疑連鎖」と「技術爆破」についてもクライマックスまで保留される。
こういうところに、構成の美しさを感じずにはいられない。

読み終わって思うこと

結局日本人の自分には理解できないところもあるだろな

作者が中国人だからというよりかは、異国の文学を読んだときに感じる感覚がある。
何か要素が抜けてる感覚。
この、「何か」は翻訳の過程で抜け落ちるわけではないと思う。
(もちろん、多少はあると思うが)
「風土」とか「吸ってきた空気」の差みたいなもの。
国民性による、何かしらの差異によって発生する感覚なんだと思っている。
それとは関係ないかもしれないけど、第二部通して「個人」っていうのに対する抑圧みたいなのをずっと感じてた。
面壁者計画自体もそうだし、面壁者たちの結末もそう。
あえて、個人が大衆によって打ちのめされる様が書かれている。
個人と大衆の対立がずーっと描写されているように感じた。
こういった描写がもたらす効果を、100%受け止められていないな~って思ってた。
共産主義社会で醸し出された空気感なのかなぁ?って思ったりもした。
結局、日本人の自分には理解できない領域なのかな?って思って読んでいた。
思い過ごしかもしれないし、外国文学に対する過剰反応なのかもしれない。

なんだかんだハッピーエンドでよかった

俺はね、ハッピーエンドの物語が好きなんですよ。
それでね、羅輯が家族と幸せに暮らしててほんとによかったよ。
家族団らんに智子が出てきて、雑談(雑談ではないが)するのとかもめっちゃよかった。
いや~、いいね。

第三部なにやるの?って思う

まあ、第三部買ったんですけど、これ以上何をやることがあるのか?
もうハッピーエンドで終わりでよくないですか?
気になるので読むんですが。

最後に

やっぱり感想書くの難しいな。
noteに書くほどのこと、書けない...。
まあ、自分用のメモみたいな感じだからOK。

以上、おちうおでした。

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