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兼近大樹著 むき出し※ネタバレ含む※【読書感想文】

大好きな人の小説がようやく出版された。

ずっと兼近大樹さんご本人が出したいと言っていた本。

発売日当日のYouTubeライブも観た。

昔から「作者の心情を答えなさい」系の設問が苦手なので兼近さんの意図も汲めていないし正解もいただくことはできないのでただただ感想を書き留めておこうと思う。


【むき出し】兼近大樹 著

エピローグ、これは本当に小説なのか、自伝本ではないのか、なんて野暮なことを考えて読みはじめてみる。この本は兼近さんをよく知ってる熱烈なファンの方から見たらこの時の話かあと想像出来る時系列になっているのかもしれないし、兼近さんのことを全く知らない人が読んだらどういった感想になるのかわからない内容だったように思う。


幼少期の描写は、子を持つ人なら大半の人が「お母さん苦労しただろうな」だろう。正直ここまでのやんちゃ坊主を育てる自信はない。主人公石山くんの特性がそうだったのか、家庭環境によるものなのかはわからないけれど。

この「ママ」は、私の中で本作を通して唯一の良心だった。無償の愛だと思った。

無償の愛って、なんでも与えるわけでは決してなくて。何をされてもずっとずっと愛し続けられることだと思っている。この人は自分を絶対に見捨てない。こんな安心感をくれる人が周りに1人でもいれば決して最悪の道には進まないのかもしれない。

無償の愛ってきっと親が子供から貰うもので、酷いことをしても子供はママを愛してくれている。それがまた親としては切ないのだ。貧困の幼少期、ママはとても苦労しただろうな。

幼少期の描写が読んでいてとても違和感があった。

石山くん視点で語られる本作の前編は「え?ほんとに?そんなに理不尽なことある?」という流れが多い。

その私の違和感の正体を後編で石山くんが描いている。

【自分の都合の良いように事実を捻じ曲げて記憶していたのかもしれない。】(意訳)

なるほどだからか。

被害者や加害者片一方の意見が全てではないのだと知っている人は少ない。

主観を混じえない報告ができる人のほうが少ない。

それに気づいた石山くんはすごいと思う。


私が最もエモいと思ったのは、この本を文藝春秋から出版したということだ。

あの記事から始まって。この小説まで続いている。この伏線回収のような書き方が兼近さんらしいなあと思うのだ。

この小説は若い子に読んで欲しいなと思った。他人に厳しい大人にも呼んで欲しいけれど、若い子にこそ、人を許す優しさを知って欲しい。自分の価値観で決める正義が絶対正しいと思わないで生きて欲しい。その人個人の背景があることを知って欲しい。人に迷惑をかけることがいけないことだと思い詰めないでほしい。きっと助けてくれる人はいる。みんなが他人を想って許せる気持ちをもっていたならきっと日本の未来は明るいから。



ちなみに、私は教会で結婚式を挙げている。

その時教会の個室で面談をするのだけど、神父様のお話で「結婚生活で大切なのは相手を許すこと」というのが印象的だった。

実際その通りで、他人との生活は相手を許せないと維持できない。絶対に許せない何かはあるとして、愛し合ったもの同士歩み寄りが大切なのだということだった。

結婚しても、もとは育った環境も違う人間だものね。

兼近さんのいつも言っている「近くの人を大切にする」ということはとても重要なのだ。


最後に。

未来ちゃんが今幸せだよと連絡をくれた部分。とても嬉しかったし笑った。一番好きな登場人物かもしれない。

未来ちゃん、いつまでもお幸せに。

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