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単身赴任の夫の部屋で見つけたもの

単身赴任中の夫の寝室に、精力剤とコンドームが置いてあった。開封済みだった。

わたしたち夫婦は20年以上セックスしていない。

だから、この2つのものが、何を意味するかは明確だ。少なくともわたしはそう思った。

リビングでテレビを見ていた夫に聞いた。
「なぜ、あんなものが、ここにあるの?」
「ん?何の話?」
「精力剤とコンドーム。引き出しに入ってた」

状況を察した夫は、寝室へ行き、少したってから、わたしを呼んだ。

「君が悲しむことはしない」

夫は、ベッドのそばに立っていた。
引き出しは中身が全部見えるように開けてあった。

「あんなものって、何のことかな?見てごらん、君が言ったようなもの、ここには無いよ」
「隠したの?」
「隠す?何を?何かの勘違いか見間違いだよ。ほら、だって、どこにも無いでしょ?」
夫は、普段と同じ、とても爽やかな笑顔でそう言った。
「俺は君が悲しむようなことしないから。安心して」
と言いながら、わたしの頭をポンポンした。

「俺のじゃない」

嘘が分かったのは数日後だった。
この目で確かに見た、見間違いでも幻覚でもない、と思ったわたしは、夫に聞いた。

「一度しか聞かないから、正直に答えて。引き出しに精力剤とコンドームが入っていたよね」

夫の答えは、わたしの豊かな想像力をもってしても、到底考えつかないものだった。

「その通りだよ。でも俺のじゃない」

全く意味が分からなかった。
なぜ、他人の精力剤とコンドームが、わたしの夫の寝室にあるのか。

夫の説明によると、風俗にはまっている同僚Oさんが海外製のを試したいというので、だいぶ前にアメリカ出張に行った時に買ってきた、でもOさんが急に転勤になり、渡す機会が無かった、らしい。

人に渡すものを開封したのかと聞いたら「いつかOさんに会えたら渡そうと思って、カバンに入れて持ち歩いている間に忘れてしまった。ずっと入れっぱなしにしている間に、パッケージが破れた」そうだ。

許せなかった、忘れられなかった

この説明を聞いて信じる妻がいたら、尊敬に値する。わたしには到底できなかった。
許すことも、忘れることも、できなかった。

その後も、何度か、同じような裏切りがあった。
それでもまだ結婚を続けている。
何度も何度も関係修復を試みては、失敗しながら、続けている。

長年、そういう結婚を続ける間に、わたしは完全に精神を病み、自殺未遂を起こし、強制入院もさせられた。

レベルの差はあれ、同じように苦しんでいる人がいるのではないかと、ふと思った。
だから、わたしたち夫婦のことを書いてみようと思う。




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