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意外と似ている「ターミネーター:ニューフェイト」と「T3」

映画「ターミネーター:ニュー・フェイト」が「ターミネーター2」の正統な続編ということで「T3」「T4 」「T5」はなかったことになってしまった。そこで「ターミネーターシリーズ」T3、4、5をあらためて見てみたら、「ターミネーター:ニュー・フェイト」と「ターミネーター3」って結構似ている。でもどういうわけか、T3の評価は低い。なぜだろう。(以下、ネタバレあり

長らくT2の続編と思われていたT3。 評価が低いそうだが、あらためてT3を観て、私にはなぜ低いのかさっぱり分からない。シリーズの中でもアクション、ハラハラ感、ドラマ性、前作までとの整合性、どれをとっても良いできだったと思う。

なんだか、T3と関わらなかったターミネーターの生みの親ジェームズ・キャメロンやサラ役のリンダ・ハミルトンが低い評価をしていることが、T3の評価を落としているなのではないかと思えてしまう。自分が関わらなかった作品の訳だから、キャメロンらが感情的に低い評価をするのは理解できる。でも「ターミネーター:ニューフェイト」もT3もストーリーの前提となる設定はどちらも似通っている。ストーリー展開もそうだ。こうした点からもT3の評価がなぜ低いのか、ホント、よく分からない。

T3と正統な続編の共通点

T2では、スカイネットが破壊され「審判の日」は回避されたはずだった。その続編として、どちらの作品にも「審判の日」は避けられない未来であり、延長されただけだったという設定となっている。そして機械軍と残された人類による抵抗軍の戦いの中で、抵抗軍のリーダーを抹殺するために、新型ターミネーターが未来から送り込まれるというのも同じだ。

未来のリーダーが時代遅れ(obsolete)のT-800やT-850とともに新型ターミネーターと戦い、人類の未来に希望を繋ぐというストーリーも共通している。正統な続編も異端の続編も全体的なストーリーは酷似しているのである。

T3では、ジョンとともに未来の妻ケイトと、女性にスポットが当てられている。2人を抹殺に来た新型ターミネーターも女性型だ。正統な続編においても未来の救世主ダニー、ダニーを守るために未来から来た強化人間グレース、そしてサラと、女性たちがキーパースンとなっている。つまりどちらの作品も女性の活躍を中心に描かれているという共通点がある。

そして未来のリーダーを守ろうとする旧型ターミネーターが新型ターミネーターを倒すために相死にする場面は両作品とも似ている。

T3と正統な続編の相違点

違いはというと、未来の救世主がジョンからダニーに変わったこと。これは審判の日がずっと後の時代にずれたことで、未来の抵抗軍のリーダーもジョンから別の人物に移行したと考えることができる。

そして、T3の結末は、避けられない審判の日を未来の救世主ジョンとケイトがシェルターの中で迎え、人類と機械軍との戦いが始まろうとする中、生き延びたジョンがリーダーとなるようなところで映画は終わる。

一方、正統な続編は新型ターミネーターをやっつけた後、ダニーとともに戦って命を失った未来(2042年)から来た強化人間グレースの現在(2020年)の姿である幼いグレースを見て、ダニーが「彼女を2度と死なせない」とつぶやいて幕を閉じる。

未来へのつながりという点で私はT3の終わり方は好きだ。

人間とロボットの違いを描いたヒューマンドラマ

そしてターミネーターシリーズにある人間とロボットの違いから来るヒューマンドラマ。これはどちらの作品おいても感動的に描かれている。T3ではジョンとサラを守るという使命を持ったT-850が、新型ターミネーターによって操作されたことで、本人の"意志"に反し、ジョンを殺そうと動いてしまう"心"の葛藤が描かれている。これは人間によくあるどちらを選択すべかという葛藤、悪いと分かっていても悪事をしてしまう心の葛藤などを彷彿させる。

正統な続編では、「ターミネーターに良心が育つ」という人間性に感動させられる。これについては、『ターミネーターの良心』で書いている。

T3の評価が低いのは先進的すぎたから?

T3を低く評価している人の中には、ターミネーターが女性だということを理由にしている意見を見た。女性の活躍が当時はまだ不自然だったのだろうか。しかしそれから20年以上経った今、アメリカでも日本でも女性の社会進出や活躍がずっと顕著になっている。今の時代であれば、T3における女性の描き方に違和感はないだろう。

そしてT3ではAIが自ら意思を持つかのような活動を始める。これも当時より今の方が現実的に感じられる世界だ。

T3ではターミネーターが冗談を言ったり、ジョンをからかったりするのが変だという声も見かけたが、ターミネーターの人間性はターミネーターシリーズにある観客への問いかけとなっている。しかし、この表現の仕方が、これまたT3では先進的過ぎたのかもしれない。

T3の評価が低い理由、それは、あまりにも先を行きすぎたストーリーだったからなのかもしれない。今、あらためて見ても、決して悪くない。とても良い映画だ。

時々、放映後数年してから人気が出るテレビドラマ、アニメなどある。私が子供の頃見た「宇宙戦艦ヤマト」がそうだった。「ガンダム」もそうだ。テレビで初回が放送された当時、ほとんど視聴率を稼げないアニメだった。その理由は、あまりにも先進的過ぎたからだと今では言われているようだ。

ジェームズ・キャメロンやリンダ・ハミルトンの評価を抜きに、T3を今、もう一度見たらどうだろうか。結構、良い映画だと思えるかもしれない。

もちろん、個人の好み違いはあるだろうが、私にはT3の評価がなぜ低いのかよく分からないし、T3はターミネーターシリーズの中でも良い出来だったと思う。前作との整合性もしっかりしているし、未来に繋がるストーリーで、私はとても好きな映画だ。


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