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【虎に翼 感想】第86話 寅子のように言えるのか

先週の麻雀大会。杉田太郎の涙、航一の「秘密です」、寅子の「はて」には続きがあった。
航一に深入りしたことを優未に注意されている。“スン” がなくなって花江化していることに安どしたのもつかの間、近所で火事が起き、騒ぎになっている。

翌日、その件で三条支部に警官が逮捕状を貰いに来る。
「これだから朝鮮の連中は……」との会話が普通になされる日常である。

田舎は情報が筒抜けだ。特に深田は噂話が大好きのようである。杉田太郎が泣いたこと(が、寅子が泣かせたことに歪曲されていた)、小野知子が婚約破棄をしていることを嬉々として話している。
高瀬が知子を心配そうに見ている。以前、高瀬が森口と揉めていた頃は、知子が高瀬を心配そうにしていた。

火事は、とあるスマートボール場の倉庫で発生した。放火事件の犯人として、経営者の金顕洙(通名:金子顕秀)が逮捕される。

坂町事件と新聞社の襲撃は、昭和21年に実際に起きた事件のようだ。これをきっかけに、一般の朝鮮人も悪人のごとくの扱いを受けていることも背景にありそうだ。


裁判は、新潟地裁本庁にて合議制で開かれることになった。
裁判長が星航一、右陪席が佐田寅子、左陪席が入倉始の3人である(右陪席には左陪席より経験のある先輩が座る)。

傍聴席にいる知子の口から(たぶん)流ちょうな朝鮮語が発せられ、寅子も、弁護人である杉田兄弟も驚いている。しかしここは、公開とはいえ法廷での出来事だ。秘密保持を旨とする法曹者である彼らは、決して軽はずみに話したりはしないはずである。

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先日の傷害事件のときの「ガキ」発言もそうだが、入倉の発言は許容されるものではない。裁判官として予断を持って裁判に臨んでしまうおそれがある。しかし、当時の状況として、寅子の考えは少数派だったのかもしれない。
寅子は寅子で、香子の姿を思い出し、“差別してはいけない”、“平等に見なければいけない” と思いすぎることは危険だ。それも予断となり、事実を見誤りそうで心配ではある。

二人が今一緒に仕事をしていることは、悪いことではない。経験不足がゆえにあらゆる角度からものを見ることのできない入倉、さまざまな角度からものを見ようとし、抱え込みすぎる寅子。二人とも、相手の良い面、悪い面を認識することで、自分本位にならずに済んでいる。
そして裁判長である航一は、端的に必要事項を述べ、二人をナビゲートしてくれている。よい配置だ。

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この時代に生まれていたら、寅子のようにはっきり言えるのだろうかと、問いかけられたような気がしてしまった。


“赤いミサンガの女”
なんだか片平なぎささんが出てきそうな勢いだが、このミステリーはまだ解決していない。
何ごともなかったかのように話しかける美佐江に、どれだけの鬱屈があるのか。寅子が大人の対応をしてくれていることを忘れるな。
「息抜き」との言葉が引っかかる。息抜きのために、また権謀術数をめぐらせるつもりなのか。


高瀬とは交流が深まっているもよう。兄が使っていた麻雀牌を譲ってくれ、寅子は牌を覚えるために持ち歩いている。

「ごめんなさい」からの「秘密です」からの、寅子の「(牌を持ち上げて)これですか」の後の航一のうなずき。週またぎで一気にいろんな面を見せ始めている。

そして寅子は、彼の「なるほど」を訳せるようにまでなっているのだ。


「虎に翼」 7/29 より

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