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【虎に翼 感想】第81話 涼子、玉、稲との再会



涼子、玉との14年ぶりの再会

涼子と玉は新潟に流れ着いていた。どのような事情があったのかはまだ分からないが、まずは、生きていてよかったと言いたい。だが、車いすの玉を見たときに、寅子は何も言えなくなってしまった。
空襲で玉があれだけの傷を負ったのであれば、桜川家のあった一帯は、相当な被害を受けたのではないか。あの酒浸りの母や、家のために結婚した夫はどうなったのだろうか。

寅子!香子のことは話したらあかんぜよ!と思っていたら、涼子が感極まり始めたから、たぶん聞こえていなかった……ことにしよう。

第14条2項
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

日本国憲法

これまで日本国憲法第14条は何度も取り上げられてきたが、それは1項(「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」)に限ってのことだった。女子部のうち、香子、よね、梅子、寅子がここに当てはまる人物として描かれてきたといえる。
そして、涼子を直接的に反映させる文言として、いよいよ2項がクローズアップされたのだ。

涼子は、玉と手を取り合って元気に生きている、だからご安心をと、寅子に伝えた。東京を旅立つ前には、「幸せだから」と、寅子を安心させようとする香子の言葉もあった。
涼子と香子のそれが同じベクトルで発せられているのかは、まだ判然としない。ところどころに映る玉の表情に、いつも陰りが見えるからだ。
そして、仲間の思いを勝手に背負いがちな寅子は、周りの者たちにこう言わせてしまう帰来がある。

涼子は、桜川家から解放されたいと思っていた。だから、日本国憲法は彼女が望んでいたものでなくてはならない。だが日本国憲法上、平等になった後の生き方までを想定できていただろうか。涼子は、これまでが恵まれていただけだと、第14条2項を自分に言い聞かせているようにも思えてしまった。

ハヤシライスは、はじっこからでも真ん中からでも、どの場所から食べ始めても美味しい。きっと、食後のコーヒーもかなりの美味と思われる。
いわゆる平民となっても、華族として良質のものを食してきた涼子の味覚は信頼性が高く、強みとなっているはずだ。お店の立地もとても良い。
7/19の記事で書いたが、お店のある場所は、地方にありがちな裁判所や法務局などの官公庁が並んでいる一帯と思われる。この一帯で働く人たちの舌を良質な味で満足させ、上質な会話で楽しませ、ランチタイムを充実したものにさせているであろう涼子の根本は、何ら変わっていないのである。


裁判官、入倉の人となり

忘れていたが、昼食の後、裁判所に戻って担当する刑事事件の説明をしてもらう予定になっていた。起訴状を読み込む寅子。
19才の少年が被害者の傷害事件を受け持つ。家庭裁判所で少年事件に関わっていた寅子のために、航一が考えて割り振ってくれたか。

入倉がうるさい。「ガキ」と言うほうがガキだ。寅子もちゃんと諫めてくれたのはよかった。今後も直言の娘とたかしの息子として、兄弟げんかを繰り広げるのやも知れぬ。寅子は小橋に前髪の固め方を聞いて、教えてあげるといいよ。

入倉がルッキズム主義なのは、物事を表面的に見てしまう性格、ひいては裁判官としての彼の力量を示すために描かれているように思えてならなかった。先入観を持たずに裁判に当たり、当事者の事情や背景をくみ取って判決を起案できる裁判官であってほしい。
しかし入倉の発言には、寅子に応援を頼むほど事件が多く、忙しくて(の割には手を止めているが)余裕がないことが背景にありそうだ。
昭和27年。終戦時の子どもたちの多くが、大人から手をかけてもらえないまま成長していることがうかがえる。


森口氏の娘

『Light house』は、昼は喫茶店、夜は、玉が先生となって英語塾を開いていた。
記憶からかなり遠くなっていたが、玉も竹もとなどで熱心に勉強した結果、今では教えられるくらいになっていたのだ。
見学に来ていた寅子に話しかける女学生がいた。聞き覚えのある名字の彼女は、あの境界確定調停の件の森口氏の娘だった。
森口美佐江は、東京の大学、しかも法学部への進学を希望している。

森口(父)は、女が学ぶことには特段反対しているようには見えなかった。調停の件で現地視察をした日の会話を思い出す。娘のことを嬉しそうに語り、「人のためになる職業に就けさせたい」と、寅子にも会わせたがっている様子だった。
美佐江が寅子に「佐田先生」と声をかけたことからすると、森口(父)は、高瀬の一件はあったが、自宅で寅子のことは特段悪く言っていなかったのではないだろうか。
本作では、“理解ある男性” たちが多く登場している。森口(父)も、娘の夢、希望を応援しているのだとすると、こちらも本作でありがちな “壁” となっているのは母親の側なのかもしれない。森口家の事情も今後、教えていただきたい。


稲との再会

優未の口が悪くなっている。寅子も “スン” から “はて” の振り幅が大きい人間だが、優未も振り幅大きい人間になりそうだぞ。こりゃ。
優未は東京にいた頃から友達の存在が描かれていなかったから、一人のほうが落ち着く子なのだろう。“東京の子” としていじめられていないか心配していたが、そうではないなら、ひとまず様子見にしたい。
寅子は子どもの頃から友達が多いリア充タイプっぽいけど、それが正しいわけじゃないからね。
新潟に来ても、犬の遠吠えが寅子の気持ちを代弁してくれる朝であった。

「寂しいのです」
稲さんとは10年ぶりくらいの再会だろうか。花江は、寅子の問題と稲さんの問題を一気に解決する秘策を打ち出した。これからは、毎週水曜日は稲さんDayである。

月曜日から、障害を持つ者の問題、独居高齢者の問題、子どもの心のまま成長する者たちの問題と、一気に抱え込みそうな寅子であった。


「虎に翼」 7/22 より

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