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【虎に翼 感想】 第20週 まとめ

今週は、1週間分まとめてお伝えします。



昭和30年、春

寅子は、新潟地家裁三条支部から東京地方裁判所へ異動となった。3年間の三条生活ともお別れである。
初めは胡散くさいと思っていた杉田タロージロー兄弟をはじめとして、三条の皆と親交を深められたところでの別れは名残惜しい。
だが、これも癒着を防ぐためゆえ致し方ないことである。

涼子と玉ともしばしのお別れ。稲は大切な人たちに見守られ、穏やかにこの世を去っていた。
入倉ともお別れ。まだまだ新潟の人々のために尽力していただきたい。

新キャストとなった優未を連れ、寅子は東京へ戻っていった。

久々の猪爪家

猪爪家もいつの間にかリフォームされている。寅子が買ってあげた洗濯機が鎮座し、お勝手は室内に新しく作られて、花江の家事の負担が大幅に軽減されているもよう。
そのおかげで花江も髪のスタイリングにかける時間を増やせているようである。

直人と直治も新キャストだ。直人は先代の直人を、直治は直道をそれぞれ踏襲していて、またもやキャスティングの妙を感じたところである。
直治は高校3年生だが、サックスに夢中で進路を考える暇はなさそう。
直人は大学3年生で法律を学んでいる……同級生に新潟から進学してきた女子学生がいるのかな……。


トリオ・ザ・裁判所との再会

多岐川は東京家庭裁判所の所長、久藤は司法研修所の所長、桂場は東京地方裁判所の所長にそれぞれ栄転している。

久藤が司法研修所所長なのが適任だ。修習生それぞれにニックネームをつけて近づき、特に検察官と裁判官を希望する者たちの適性を見極めることに長けていそう。

土台を作った寅子の “法” の解釈も変化しているようだ。
“水” という抽象的なものから、“人権や人の尊厳” と具体性を帯びてきている。
変わることは悪いことではない。

寅子、東京地方裁判所民事第24部へ配属

現代では51部まであるけど、当時は新しめの部だったのだろうか。
汐見が裁判長として配属されていたのはうれしい知らせだ。もう一人、漆間という若い裁判官もいる。
小橋と稲垣の姿は見えない。寅子が新潟に行って戻ってきたくらいだから、二人も今頃は別の裁判所で頑張っていることだろう。


女子部の現在

寅子が、後輩の漆間がいる前で汐見に対して「ヒャンちゃん」呼びしていて焦ったが、これは香子の心境の変化を表しているのかもしれない。
香子は少しずつ法律の勉強を始めている。司法試験に合格して弁護士になれば、彼女のような境遇の者たちの受け皿になることができる。外国人の地位向上に一役買うことを期待したい。

梅子は、高齢になった店主ご夫婦の後を継ぐべく、味を覚えている最中だ。団子の味の判定人は……桂場である。
桂場にとっても、竹もとの団子を食べられなくなることは死活問題だ。だから厳しめの判定になる。
梅子は自分で自分の道を決めている。まだまだ長い道のりになりそうだ。

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よねが司法試験に合格した。結果的に寅子の後押しが効いたのだ。
寅子が新潟にいた3年間で、司法試験に合格し、司法修習も終えているスピードからしても、あの後すぐに合格したことが分かる。

よねの合格がさらっと扱われたことには意味があると思った。戦前ずっと合格できなかったよねが、戦後、受験したらすぐに受かることの意味。戦前の高等試験が恣意的なものだったことの表れでしかない。
恣意的な試験に迎合するよねではない。自分を曲げなかったことを寅子が喜んでくれている……よねが救われた瞬間だった。

久藤はよねにどんなニックネームをつけようとしたのかな……ヤマディ……カバディみたいだな……サディと似た感じだとマディか……ヨネィってことはないかな……。

事務所名、どちらの名前を先にするか問題を、憲法第14条の前でのジャンケンで解決したのが言い得て妙といったところか。
轟のほうが修習期が上なのだから、「轟山田法律事務所」に収まりそうなところだが、そもそもの事務所の成り立ちが、よねが働いていたカフェー燈台から始まっている。轟としても、事務所のオーナーからジャンケンを求められれば、それに応じざるを得ない。いや、彼は自分から言い出す人間ではあるのだが。


原爆裁判

広島と長崎の被爆者5名を原告、国を被告とした損害賠償請求等の訴えが起こされた。
1951年(昭和26年)のサンフランシスコ平和条約により、被爆者はアメリカへ賠償請求できる権利を失っていた。その権利を放棄した日本政府へ補償、賠償を求めた裁判だ。
その裁判が、桂場の意向もあってか民事第24部に回ってきた。

原告ら代理人の欄に懐かしい名前がある……。

その原告ら代理人、雲野弁護士と岩居弁護士は、山田轟法律事務所を訪れていた。
雲野弁護士は、今すぐにではないが自分にもしものことがあったら、岩居を助け、裁判を引き継いでもらいたいと頼みに来たのだ。
雲野弁護士の薫陶を受けたよねが断らないわけがない。

戦時中、よねに辞めてもらったことを雲野弁護士は詫びていたが、よねはそんなことを根に持つ人間ではない。根に持つとしたら、もっと人間の本質に関わることではないだろうか。

訴状を読み合わせする漆間が涙を流す……特に年の近い、当時14才の女性のところで言葉が詰まっていた。

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第1回、弁論準備手続期日が行われた。
被告である国側の代理人弁護士は、「国は請求棄却を求める方針。答弁を準備したく、準備手続の続行を依頼する」とだけ伝えて、3か月後の次回期日の前までに答弁書を出すことを決め、期日は終了した。

裁判は、特に準備手続期日だと5分10分で終わることはよくある。コロナ禍になってから民事訴訟法が改正されて裁判のオンライン化が進んだが、以前は5分10分のために弁護士は裁判所へ行っていたものだ。

雲野弁護士らがよねたちに頼みに行ったのも、弁論準備手続期日だけでも相当な時間を費やすことを見越してのことだったと思われる。


星家の家族と初対面

寅子と優未は、星家を訪問した。
星長官の妻、百合も長男朋一(祖父と父から一文字取っていて、なんとプレッシャーのかかること)も長女のどかもやさしそうだ。笑顔で接してくれている。

だが相変わらず優未は察しがいい。この家も虚構の家族であることに気づいている。さすがは元虚構の家族の一員だっただけのことはあるな。

金魚すくいの話、二人とも話を盛り上げようと頑張っちゃったんだよね、きっと……。
結果的には、星家の皆の知らない一面を教えてしまっただけ。

星家の皆にも思うことはあるはずだ。それを教えてくれる日を待ちたい。


家族裁判

直明は、大学の同級生でもある交際相手の田沼玲美との結婚を決めていた。その絶対条件が “猪爪家での同居” である。
直明は戦争末期に家族と離れていた経験から、離れたくなかったのだ。嫁に辛い思いをさせたくない花江と意見が合わず、寅子が東京に戻った頃は、既に1か月ほど冷戦状態となっていた。

寅子は強引ではあったが、航一を猪爪家に招待するタイミングでひそかに玲美も呼び、航一を裁判長とした “家族裁判” を開廷することにしたのだった。

東京家庭裁判所登戸支部
事件番号:昭和30年(家)第53号
原告:猪爪直明、田沼玲美
被告:猪爪花江
利害関係人:猪爪直人、猪爪直治、島田道男
裁判官(裁判長):星航一
裁判官(右陪席):佐田寅子
裁判官(左陪席):佐田優未

設定はすべて架空のものです

【当事者の主張】
玲美を嫁姑問題に巻き込みたくない花江
→そもそもあなたは直明の母ではないという玲美
→大学に進学させてくれた母代わりの花江(と寅子)に恩返しをしたい直明
→その役目は自分だ、お父さんに託されていると主張する直人
→直明はずっと頑張ってきたのだから、もういいんじゃないかと言う直治
→私は誰かに世話をしてもらうことをアテにする人生だと嘆く花江
→アテではない、当然の権利だと主張する直人

当事者の主張より

裁判長は当事者の主張を聞き終え、「花江が心配するお嫁さんの苦しみは起こらない。同居したら気を遣うのは花江だ」と、素早く論点整理をした。

結果、
①原告田沼玲美が “お試し同居” の和解案を提示し、被告猪爪花江がそれを受け入れる。
②原告猪爪直明、被告猪爪花江が双方謝罪する。

ことで和解が成立し、猪爪家の家族裁判は無事閉廷したのであった。

この家族裁判が和解で終わったのがよかったと思った。
原爆裁判は和解で終わらないこととの対比のようでもあるのだけど。

ここにきて直道の回想が効いてきているのがほんとにズルいよ……


航一からの正式なプロポーズ

道男の「ともこ」呼びに過剰に反応するなど、航一がこんな風に家族の前でも寅子スキを出す人だとは思わなかった。
だけどプロポーズの裏には、航一が “あの家を出たい” という気持ちが1ミリも入っていないとも思えない。
家族裁判は、家を出たくない直明と、家を出たい航一の対比のようでもあった。


轟のカミングアウト

轟が大切な人にめぐり合えていてよかった。花岡への感情は、本人にも自覚のないまま終わってしまったことだ。その感情を揺り起こしてくれたのは、間違いなくよねである。
寅子への信頼も厚いからこそ、交際していることをきちんと伝えた。

……「信頼も厚い」と書いて、それはどういうことなのかと考えた。
寅子は決して揶揄する人ではない。
勝手に言いふらす人でもない……そもそも隠しているのか、隠さねばならないことなのか。根本の問題から逸れた書き方だったかもしれない。


桂場の権力者ぶり

梅子の団子を桂場が判定する。その攻防は今後の楽しみの一つになりそうだ。
だが、そもそも桂場に決めてもらわねばいけないことなのか、とも考えてしまった。梅子の味ではいけないのかと。

竹もとでの寅子と航一に対する「いい年をして、大っぴらにすることではない」などの言いぶりからしても、桂場が “司法の独立” から少しずつ権力を持ち始めていることがうかがえる。
変化することを認めない、自分の価値観だけで物事を決定しようとする姿。
団子はその象徴ではないかと……。


次週予告

結婚の意義を見いだせない寅子と、籍を入れたくても入れられない轟。
夫婦別姓と同性婚の問題。

あぁ……竹もとに女子部の皆が集まっている……
そこに香子がいるのかがとっても大事!

今週で第20週、100話を超えました。
残り6週と思うと寂しいですね……

つづく

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