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【虎に翼 感想】 7/16 寅子は流されてしまうのか

寅子の “スン” 度が高まっている。度合いで言えば、司法省に働き始めた頃と東京家庭裁判所でイケイケだった頃の真ん中あたりか。
杉田兄弟が勝手に夕食の手配をしても、善意かもしれないと断り切れないでいる。献立を考えなくてもよいし、優未も喜んでいる。楽なほうに流されてはいけない。
それだったら自分で注文して、ツケではなくてその場で支払わないと、どんどん癒着の構図が出来上がってしまう。

同様に航一も杉田兄弟に懐柔工作を仕掛けられるが、航一は、にべもなく断っている。前最高裁長官の息子でエリート裁判官だから、わけもないことだ。

法曹家である杉田兄弟も、寅子と航一が改稿作業をした『日常生活と民法』は目にしていなかったようだ。今と違って出版部数も少ないだろうし、流通ルートも網羅されていないだろうから。だから二人が知り合いだと初めて知った。知っていてとぼけている可能性も捨てきれないが。
杉田兄弟が、東京の大学ではなく地元の大学で学んで高等試験(戦後の司法試験)に臨んだのだとしたら、地方ならではの情報弱者の立場での努力は相当なものだったのではないだろうかと、考えてしまった。東京で勉強して早い段階で合格して今は裁判官になっている二人と、地方で勉強して何年もかかって合格したかもしれない二人。同じ法曹資格を持つといっても、その経歴は人それぞれだ。

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猪爪家の面々はしばらく登場しないのかな~と思っていたら、本作にはイマジナリー手法があった。これからも度々登場していただきたい。


森口氏と原氏が争う山林の境界確定事件。田舎だからありがちな案件だけど、寅子的にはいきなりハードな案件がやってきた。これはさすがに杉田兄弟が両方の代理人というわけにもいくまい。地元の名士である森口が杉田兄弟に依頼した以上は、もう片方の原は、しがらみのないよその弁護士に依頼するのが得策だ。
“持ちつ持たれつ” を信条とする杉田(兄)は、裁判よりも、なあなあで終わらせられる調停を得意としていそうだ。
調停期日終了後、森口が書記官の高瀬に話しかける。

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田舎の人間関係は本当に狭い。私も北関東の小さな町の出身だからよく分かる。全員が知り合いといっても過言ではない。
町に1つしか中学校がなく、3代にわたって同じ小学校・中学校出身ということはよくある。
父が中学生のときに新任で入った先生が、私のときには校長先生になっていた。
父が役場の職員だったから、私はずっと「役場んとこの子」と呼ばれていた。
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そして高瀬は、「高瀬んとこのせがれか」と呼ばれている。

この調停の件は、寅子の判断で、現地調停期日を入れることになった。庶務課の小野(こちらも “ともこ” さん)が心配そうに高瀬を見るわけは、すぐに判明した。二人は幼なじみなのだろうか。

現地調停当日。高瀬は昔から体が弱かったようだ。だから戦争にも行っていない。そのことを、戦後7年経っても森口に言われてしまう。だが、7年で驚いているようではいけない。このような人は、10年20年経っても言うし、死ぬまで言ってくる。それが田舎だ。
“男らしくない” と責められ続けている高瀬が内向的になるのは、自然な流れでしかない。
寅子も体調が悪い日じゃなくてよかったと思った。

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現地に到着して川沿いで休憩中。
杉田(兄)は、寅子の家族構成はすぐに把握したはずだ。だから、夕食のメニューから何から、すべてが筒抜けとなっている。

森口が高瀬に何か話しかけて、すぐに高瀬が森口につかみ掛かっている。それを寅子が止める流れ……その後の展開を期待、いや、想像することは簡単だった。女学生時代にはよく泳いでいた寅子だ。浅瀬だったけど、泳げる人でよかった。
兄二人を戦争にとられ、下の兄は戦死。深田庶務課長の畑を手伝いながら勉強し、採用試験に受かりようやく得た裁判所書記官の職。奨学金もまだ残っている。そんな高瀬が激高するくらいの出来事が起こった。「ほっといて」ほしいこととは一体、何なのだろうか。

依頼者である地元の名士が激怒している。杉田(兄)にとっては形勢有利な展開だ。
法に則ることが基本ではあるが、これは調停だから、双方が合意すればよい。工作においては杉田側が何枚も上手だ。
佐田家の夕食の手配の件も、じわりじわりと効いてきている。寅子は踏ん張れるか。

いろんな意味で、“流されてはいけない” と思った今日の火曜日であった。


「虎に翼」 7/16 より

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