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【虎に翼 感想】 7/18 白と黒とグレー

うっかりした。航一はどこで髪の毛を切ってるんだろうか、前髪切らないのかな、などと考えていたら、せっかく大事なことを言ってくれていたのに、まったく頭に入ってこなかった。巻き戻してもう一度観るべし。


航一、おしゃれ

「死を知るのと、受け入れるのは違う。事実にフタをしなければ、生きていけない人もいる」
航一が高瀬の気持ちを代弁すれば、
「皆、戦争で誰かしら大事な人を亡くしている。いい大人だし、そこは乗り越えていかないと」
と、杉田(弟)のように考えて生きている人もきっといる。生きる上で前向きになれるなら問題ない。だが、人それぞれなのだ。決めつけられて、知ったように話されては、心の奥底をえぐられるようなものだ。
航一にも怒りの表情が見てとれた。彼も妻を亡くしているから、どう感じだのだろうか。子どもとの関わり方も、今のところ見えてこない。

ここは杉田(弟)が、航一におしゃれ判定をして引き上げることとした。寅子に恩に着せようとして持ち出した話だったが、やぶ蛇だったな。

”溝を作りがちな自分と、溝を埋めようと必死にもがいて、あきらめの悪いあなた”。航一は褒めかたもおしゃれだ。
”自分の話をされているようだった” と、話すごとに気づきを与えてくれる航一の存在が、寅子の中で少しずつ大きくなってきている。

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一昨日、寅子が質問したときは答えなかったが、背表紙のシールからして、高瀬が普段読んでいる本は、図書館で借りているようだ。だが、日ごろから図書館に行っていることが、調停においてヒントになったようである。


境界確定調停、成立

森口氏と原氏の境界確定の民事調停は、申立人、相手方、双方当事者が合意し、無事終了した。

裏で話をつけていたなんて、グレーだ!となりそうな展開だが、このこと自体は、“裁判外和解” として、よくあることだ。
裁判(調停)期日と期日の間は、1~2か月空く。その間に当事者同士で話し合い、合意書を取り交わしたら、「和解した」旨の書面を裁判所に提出し、原告(申立人)が訴えを取り下げたら終わる。または、今回のように話を詰めておいて、期日の際に和解内容を申し出て、裁判所に和解調書として記載してもらう。裁判所の調書の形で残したい、逆に内容を知られたくない、などを考慮して決めればよい。

この件はそもそも、“訴訟” ではなくて “調停” だったのがポイントだ。最終的に双方が合意すればよいのだから。杉田(兄)としては、境界を白黒はっきりさせるというよりは、争っている状況をなくすこと(もちろん、依頼者の意向に沿う形で)に重きを置いていたことが伝わる。

ネット上では、森口家の蔵の奥から見つかった地境協定文書が偽造だという説もあるが、もし偽造であれば、完全に裁判外で和解して、内容を知られないようにして調停を取り下げていたと思うから、文書自体は本物だとは思っている。

高瀬は、「民事調停なんかしなきゃいいのに」と話していたが、弁護士が就いて裁判所のお世話になったからこそ、物事が動いたのだ。調停になったから、高瀬が図書館に行って明和8年の古文書を見つけ、そのタイミングで杉田(兄)が文書を出したことで、一気に和解に動いた。だから高瀬は功労者だ。

双方が合意して調停が終了した以上は、寅子は、文書の存在をいつから知っていたのかと尋ねても仕方のないことだった。
証拠は、最初から全部提出すればいいものではない。手持ちのカードは、出すタイミングによって、その意味合いや効力がまったく異なってくるのだ。
高瀬が図書館で古文書を見つけたくらいだから、杉田(兄)はとっくにその存在を知っていたと思われる。そこに書かれている境界図の話を持ち出されると(おそらく不利な内容で)白黒つけなければならないから、杉田(兄)はすかさずカードを切っただけだ。弁護士としての仕事をしたまでの話である。
ただ、依頼者が弁護士にその存在を隠してはいけない。「それ、もっと早く教えてほしかったな」というのは、あるあるだから、そこは間違えてはいけない。

裁判所や弁護士に縁がないと、”関わった時点でダークだ” というイメージがあるのかもしれない。
私もパラリーガル時代、弁護士が関係先の年配の方に書面を送ったら電話がかかってきて、「こんなことが私の人生に起こるとは思いませんでしたっ!」とキレられて、長々と話をされたことがある。
だが、人生の汚点などと思わないで欲しい。裁判所や弁護士のお世話になるということは、人生を先に進めるための、”急がば回れ” の精神なのだとお伝えしたい。

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寅子が文書の存在に言及してはいけなかったのと同様に、杉田(兄)も、高瀬の処分に口を出すことは許されない。これは裁判所の問題だ。何よりも杉田兄弟に借りを作ってはいけない。
高瀬は、何かを変えたいと思っていた。きっと寅子に、これまでの支部長にはないものを感じ取っているだろうし、どのような処分でも受ける覚悟はできているはずだ。そのことによって、自分は変われると、きっと考えている。

そして高瀬との関わりの中に、寅子と優未の関係構築のヒントがあると、そう思えた木曜日だった。


「虎に翼」 7/18 より

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